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濱津隆之が車中泊を駆使して小旅行 『絶メシロード』に詰まった“かわいいおじさん”像

リアルサウンド

20/2/28(金) 10:00

 Twitterに「#濱津かわいい」というハッシュタグがある。大ブームを巻き起こした映画『カメラを止めるな!』の主演俳優、濱津隆之のかわいさをみんなで愛でようという趣旨のもの。タイムラインには「かわいい!」という心の叫びやファンアートなどが並ぶ。

 ひげのおじさんなのにかわいい。笑顔だけじゃなく困り顔さえもかわいい。そんな濱津の魅力で隅々まで満ちているのが、彼の地上波連続ドラマ初主演作『絶メシロード』(テレビ東京系)だ。上記のハッシュタグがついたツイートは、このドラマとともにどんどん増殖している。

 「絶メシ」とは「絶滅してしまうかもしれない絶品メシ」のこと。主人の高齢化や後継者不足で閉店の危機にある個人店で提供される、安くてうまくて地元の人たちに愛されているメシのことを指す。

 ストーリーは、真面目で優しいけど会社でも家でも居場所がない、くたびれた中年サラリーマンの須田民生(濱津隆之)が、近年盛り上がりを見せる趣味「車中泊」を駆使して、週末1泊2日の小旅行で各地の絶メシとめぐりあうというもの。

 同じテレビ東京の深夜枠でヒットした『孤独のグルメ』などのグルメドラマの要素と、『サ道』や『ひとりキャンプで食って寝る』の趣味ドラマの要素、そして店への取材に基づいて語られる絶メシについての人情ドラマの要素が三位一体となってバランス良く配膳された、コスパ抜群の絶品定食のようなドラマである。

 綿密なリサーチもさることながら、森ハヤシ(ドラマ『チャンネルはそのまま!』脚本)、村上大樹(拙者ムニエル主宰。舞台『私のホストちゃん』シリーズ脚本・演出)、家城啓之(『山里亮太1204』構成・演出、「マンボウやしろ」名でDJとしても活躍)という3人の俊英脚本家の腕によるところも大いにあるのだろう。

【写真】かわいい濱津

「週末、私はちょっとした旅に出る。ひとりだけの時間を満喫できる、私の小さな大冒険」

 それにしても、須田民生を演じる濱津隆之は可愛い。OPとEDには愛車ホンダFREED+の中で膝を組んでいる姿が映し出される。これがまたかわいい。スタッフたちはわかってやっている。

 ひげのおじさんを手放しで「かわいい」と呼ぶことができるのは、むろん演者としての濱津の魅力が大きいのだが、同時に主人公・須田民生の行動にも裏づけされている。それが表れているのが、ドラマの中で繰り返し語られている彼の「小さな大冒険」の3つのルールだ。

その1 期間は金曜の帰宅後から翌日、妻たちが家に帰る土曜日の夕方まで。
その2 誰も誘わない。誰も巻き込まない。
その3 高速代、ガソリン代、食費、いろいろ含め、小遣いの範囲内に収める。

 家族に心配をかけないし、金銭的な負担もかけない。旅先での異性との出会いやときめきなどにも期待しない。今となっては信じられないが、かつて大人の男性が週末に不倫旅行をするためのガイドブックが刊行されていたことがあった。民生のルールはそこから100万光年離れている。妻に「やましいことしてるわけじゃないんでしょ?」と言われても、即座に心から否定できるし、妻もそれを信じてくれる。民生は気が弱くて優しいだけじゃない。ちゃんと自分を律しているのだ。

 まさに人畜無害。それに、なんといっても人柄がいい。部下が困っていたら助け、嫌なことがあっても恨まない。誰にも迷惑をかけず、ひとりで伸び伸びと趣味を楽しむ。自分の「好き」を追求しつつ、妻や娘の「好き」も尊重する。これが今の時代に求められている「かわいいおじさん」像だろう。セクハラ、パワハラ、不倫を繰り返しているような偉そうなおじさんは、いつか時代からも社会からも家族からも見放されて孤独のまま死ぬ。

 なお、演じている濱津も民生と共通点が多いようで、「基本的には自分が思った通りに演じていました」とインタビューで語っている(TV LIFE 2020年1月10日)。プライベートでも休日は誰かを誘うことなく、ひとりで過ごすことが多いらしい(kufura 2019年3月1日)。

 これからは須田民生、つまり濱津隆之のようなかわいいおじさんの時代だ。いや、もうそんな時代がもうそこまで来ている。

(大山くまお)

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