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竹内結子とも相思相愛 『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』は水川あさみの魅力が全開に

リアルサウンド

19/2/7(木) 6:00

 弁護士ものが多い今期のドラマの中でも、法廷シーンのない新しい弁護士ドラマとして話題の『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(フジテレビ系)で、水川あさみは初の弁護士役に挑戦している。これまでコメディからシリアスまで様々な役を演じ、名バイプレイヤーとして活躍してきた彼女。このドラマでも、6年ぶりの連続ドラマ主演となった竹内結子との絶妙な掛け合いは、もはや素なのでは? と思わせるほどで、水川の魅力がたくさん詰まったキャラクターを演じている。

【写真】第5話の氷見(竹内結子)&与田(水川あさみ)コンビ

 水川あさみと言えば、男っぽさと女らしさの絶妙なバランスが魅力的で、クールなルックスとサバサバした明るいキャラを演じることが多く、そのイメージが定着したのは『のだめカンタービレ』(2006年・フジテレビ)の三木清良役辺りではないだろうか。美しくプライドが高いのだが、一回その心に入り込むと人間らしい優しさがあり、クールな見た目とは裏腹にちょっとトボけた所もある頼れる女性キャラとして人気を博した。他にも『医龍』シリーズ(2006年~・フジテレビ)では天才看護師・里原ミキ役が当たり役となり、同世代の女優の中でも名バイプレイヤーとしての地位を確立。また『もしもツアーズ』(フジテレビ)などのバラエティ番組にも出演するようになり、ドラマのイメージとは違い、おしゃべり好きの明るい性格が世間に浸透し、『33分探偵』(2008年・フジテレビ)や初主演ドラマ『夢をかなえるゾウ』(2008年・日本テレビ)など、素を活かしたコミカルさや姉御肌な役が定着する。

 ただデビューの頃は、クールなビジュアルから心が読みづらいミステリアスな雰囲気を漂わせていた。印象的なのは『さよなら、小津先生』(2001年、フジテレビ)で、田村正和演じる小津先生の娘役で、離婚やイジメの原因ともなった父親を嫌い、怒りを通り越して能面のように冷めきった視線の彼女が、そこから心を取り戻していく思春期の複雑な心理描写を見事に表現していた。また、映画『イズ・エー[is A.]』(2003年)では、小栗旬演じる少年Aの無差別爆破事件の被害者として、後傷を背負って体を売る仕事をする女子高生を演じ、その儚い表情の演技に胸を打つものがあった。大の『エヴァンゲリヲン』好きが影響しているのか分からないが、その世代の若者の虚無感を演じるのが実に巧く、女優としてブレない演技を既に確立していたように思う。ただ、そのスタイルを敢えて崩したことで、演技の幅が広がりブレイクする結果に。

 やがて30代となり、与えられる仕事とやりたい仕事のギャップができ、それを打破しようと事務所から独立。サバサバした明るいイメージとは異なる新境地に挑んだ『ダブル・ファンタジー』(2018年・WOWOWプライム)では、女性としての自由を求め傷ついていく様を繊細に体現し、官能的なシーンが話題となった。その儚さは昔のミステリアスで妖艶な水川を彷彿とさせ、シリアス路線に変更かと思われたが、今回の『Queen』では水川の真骨頂と言えるサバサバした明るいキャラクターが全開。ただ、年齢を重ね、35歳女性としての大人の余裕とかっこよさが色濃く出ている役柄にもなっている。

 『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』は、危機管理が専門の弁護士ながら、情報を操作し影で社会を動かす“スピン・ドクター”と呼ばれる人間を日本で初めて題材にしたオリジナル・ストーリー。アイドルグループのスキャンダルや、会社のハラスメント問題、ママ友のご近所トラブルや子育て改革など、普段ワイドショーで取り上げられるようなタイムリーな社会問題を題材にし、事件の真相より、クライアントをいかにして窮地から救い出していくのかを重点に置いている。勧善懲悪ではないところがリアルで、スッキリしない部分もあるが、それを上回るサッパリとした鈴木法律事務所チームの軽妙なやりとりがこのドラマの面白さを引き立てている。

 水川あさみが演じるのは、竹内演じる主人公・氷見江を支える同僚の弁護士・与田知恵。氷見は「正義のためならば嘘すらも正当化させてしまう」という戦略家で、あらゆるジャンルや社会的トラブルの裏側を専門に扱う天才トラブルシューター。そんな氷見の右腕的存在が与田だ。

 アイドルの虚像についての会話では、氷見が与田に例えて「口が悪くて上司に楯突いて、可愛げがなくて、20代に嫉妬して、仕事を鼻にかけて美人なのに愛されない」とからかい、与田が「は? 愛されキャラだし」と答える。それに対して氷見から「知ってる。本当の与田ちゃんは、優しくて、可愛くて、賢くて、最高にいい女だよ」と言われると与田は嬉しそうにうなずく。この可愛いやり取りが、2人の関係性と与田のキャラを分かりやすく表現している。

 女性弁護士がタッグを組むとなると、意見が食い違って対立したり、性格が異なることで物語が作られていくというのが定番であるが、現段階では、この2人はサバサバとした明るい性格で、事件に対し同じ方向を向き、同じような感覚で問題に対峙していくので関係性が実にスマート。「仕事したくな~いと」とダラダラとしたり、事件に関わるワイドショーを見て一般視聴者のように毒舌を吐いたりするやり取りが、友達と喋っているようなリアルさで面白い。

 また、後輩の藤枝(中川大志)と姉弟のようなヤンチャなやり取りや、情報収集のために合コンに参加した際には「24歳です。ハフッ」とあひる口や萌え袖をする過剰なぶりっ子を演じたと思いきや、依頼人には心に寄り添うような優しい言葉をかける大人の対応を見せるなど、表と裏のギャップを使い分ける演技が絶妙で、その自分に自信を持った“デキる女”の仕事ぶりが、女優としての今の水川と重なる。

 氷見と与田の相思相愛なバディぶりや、オシャレなところ、振り切ったコミカルさと大人の魅力を自然に発揮する水川の演技は、どこか『あぶない刑事』(日本テレビ系)の柴田恭兵が演じたユージの立ち位置を思い出させる(ちなみに映画『まだまだあぶない刑事』に水川は出演)。竹内という先輩を立てつつ、脇役に回るのではなく、水川をもう一人の主人公として物語を成立させているのは、水川の演技力に他ならない。まさにそれがバディものの真骨頂と言え、名コンビ誕生の予感をさせる。

 「変わらないことは変わり続けること」という言葉があるが、20代の頃のキャラを保ちつつ、随所で大人の落ち着きを見せ、年齢を重ねていくことで更に美しくなっていく水川は、まさにそれを体現している女優ではないかと感じる。その格好良さが女性にウケる由縁であり、それは竹内結子にも同じことが言えるのかも知れない。

(本 手)

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