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荻野由佳、大森靖子、阿部かれん、Negicco……胸に焼きついた“TIFでしか見られない景色”

リアルサウンド

18/8/29(水) 8:00

 なぜ、あんなにも暑い夏の真っ只中、命の危険が叫ばれる酷暑の炎天下に、足を運んでしまうのでしょう。

 それはきっと、そこでしか見られない景色を見るため、そこでしか出来ない体験を心に刻むため。アイドルと一緒に居られる時間は限られています。一度しかない夏、永遠に終わらない夏が、青空と白い雲のコントラストとともに体験した者の胸に焼きつけられる『TOKYO IDOL FESTIVAL』(TIF)。

 今年のTIFで観た、忘れられない風景の数々。

(関連:NGT48 荻野由佳&小熊倫実&本間日陽が語る、3rdシングルでの挑戦と“きたりえイズムの継承”

■ハコイリ♡ムスメ(SKY STAGE)

 SKY STAGEの青空に、もくもく浮かぶ白い入道雲と、その雲よりも真っ白に輝くハコイリ♡ムスメたち。

 真夏の日差しに焼かれ朦朧としてくる意識の中で見た「水平線でつかまえて」のクロールするようなダンス。その瞬間、幸福度が頂点に達して意識がパーンと飛び、自分は一度死に天国で踊る天女さまを観ているのではないか……とまで思いました。

 とにもかくにも、阿部かれんさんのおヘソの眩しさ。初日のSKY STAGEに続き、2日目SKY STAGEでの柳♡箱(レーベルメイトのRYUTistとの合同ユニット)でも、阿部さんはTシャツの裾を結びヘソ出しスタイル。阿部さんの中で、夏といえばヘソ出しなのでしょうか。有り難いことです。

 2週間後のハコムス定期公演での「夏の思い出」を語るコーナーで、吉田万葉さんが『TIFのSKY STAGE』を絵日記に書いて発表し、このステージが大好きだと話していて、同じ思い出を分かち合えたこちらも幸せな気持ちになりました。

 TIF出演の直後、阿部かれんさんが9月末でのグループ卒業を発表。この8人と過ごせる、最後の夏になりました。

■lyrical school、原田珠々華(SKY STAGE/FUJI YOKO STAGE/DOLL FACTORY)

 みんなで同じ動きをする楽しさ、アイドルの振付のマネをして踊るフリコピの楽しさもあるけれど、私が常に求めているのは、ただ好きなように踊ること。リズム感がないので手拍子がずれてしまう、同じタイミングで同じ振りは難しい、そんなことを気にするよりも、何も考えずに踊りたい。リリスクはそれを叶えてくれる存在です。遠くから何かオシャレな音が鳴ってる! この曲で踊りたいなーと思って近づいてみるとリリスクだった、という出来事が、今年のTIFで何度もありました。「音楽のお祭り」として、素敵な出会い方です。

 メンバーが決まった振付をがっつり踊る曲もあれば、特に決まった振りはなく好きなように動き回る曲もある。「◯◯しなくてはいけない」という決まり事に縛られない、肩の力を抜いて楽しめるライブでした。

 “ずーちゃん”こと原田珠々華さんは、今年2月に解散したアイドルネッサンスから一人立ちし、ソロシンガーとして初めてのステージ。出番直前にスタッフさんがマイクを設置しただけでざわめきが起きるくらい、会場の期待もピークに達していました。

 そんな中現れたずーちゃんは、抱えたアコースティックギターの弦のように張り詰めた凛々しい表情でした。緊張も伝わってきたけれど、伸びやかな歌声が会場を満たしていき、自然と手拍子が生まれ、固まっていた空気がほぐれていきました。

■AKBフレッシュ選抜、NGT48(SMILE GARDEN/HOT STAGE)

 初めて観るフレッシュ選抜は、このTIF限定の選抜メンバー。名前の通りに全員が生き生きとして、「この場に出られた喜び」に溢れているステージでした。ボブヘアの美少女が気になり、似顔絵を描いて「この子は誰だろう」とツイートしたら、AKB48ファンの方から「研究生の矢作萌夏さんではないでしょうか」と、すぐに教えていただけました。現代ってすごい……いや、48ファンの、層の厚さがすごい! と思った瞬間です。強すぎる真夏の光線を反射するような、セラミックホワイトの多彩なレース地の組み合わせ、クリア素材のベルトに、ブルーと蛍光イエローのアクセントで統一された、スポーツドリンクのパッケージのように爽やかな衣装。ディティールが凝っていて、さらに16人のメンバーそれぞれに少しずつ形が違い、見ていてうっとりする可愛さでした。

 8月5日のHOT STAGE(Zepp Divercity)でのNGT48は、空調のきいた屋内であっても、双眼鏡のレンズが曇ってしまうほどの熱い興奮で会場が満たされていました。「世界はどこまで青空なんだろう」のMVで「本当の青空って、どんな色なんだろう」とつぶやいた女の子たちが、青空の下で歌う姿も見たかったのですが、いつかの機会を楽しみにします。

 パステルカラーと長袖にレザーベルトで秋を先取りした衣装。こちらもまたメンバーそれぞれ違うデザインで、コルセット風ベルトや編上げ、サテンのリボンなど個人的に大好きなモチーフがふんだんに使われていて、一目見た瞬間その可愛さに「うわー!」と感嘆の声を上げてしまいました。”おぎゆか”こと荻野由佳さんの白い肌に光る汗が、眩しかったです。彼女はいつも前髪をピシッと完璧に固めている印象でしたが、激しいダンスでライブが進むにつれてその前髪が熱気とともに少しずつ崩れて行き、青春の証を残していました。

■大森靖子(SMILE GARDEN・TIF×SUMMER SONICコラボレーション企画)

 これまでTIFに何度も出演している大森靖子ちゃん(私は2014年にスクール水着姿の靖子ちゃんと2ショットチェキを撮りました)が、満場の期待を受けて一曲目に奏でた「IDOL SONG」。様々なアイドルの「自己紹介フレーズ」が並べられた歌詞を、この世界最大級のアイドルフェスティバルで轟かせる様に、冒頭から号泣。

 彼女と縁の深いアイドルたちが、ステージ横で振りコピしたり一緒に歌いながら見ている姿も可愛らしく、そのテンションのまま「ミッドナイト清純異性交遊」でアップアップガールズ(仮)の関根梓さん・古川小夏さん・佐保明梨さん3人が乱入するという、わちゃわちゃ楽しい光景も見られました。

 ライザップコーナーで観客にスクワットさせたり(これが膝に結構きました)、コールアンドレスポンスで「自分のことだ! と思ったら歌ってください」と言ってから「おっさん」「DD」「ピンチケ」と呼びかける靖子ちゃん。「ここのお客さんは絶対に打ち返してくれる」という、強い信頼を感じました。

 そして、初めてTIFでの靖子ちゃんのライブを目撃した時、それまでのコールやMIXの大騒ぎから、ライブが始まった瞬間に水を打ったような静けさになったこと、それは決して盛り下がったからではなく、いま鳴る音をすべて聴き取ろうとする真剣な態度が静けさを生み、胸の中では滅茶苦茶盛り上がっているということが伝わってきて、「最もその場にふさわしい盛り上がり方」が即座にできる、アイドルオタクの対応力の高さに、衝撃を受けたことを思い出しました。

 一曲目からラストの「死神」までずっと、こんなにもむき出しで、命そのものを掻き鳴らす姿に只々涙を流し、涙と汗でだいぶ水分が失われましたが、それが生きているということ。超生きている時間でした。

■amiinA(SKY STAGE)

 空の雲が段々と夕陽に染められてゆくマジックアワーのSKY STAGEに降り立ったamiとmiyuは、1年前にこの同じステージで見た姿から着実に成長し、風景を味方につける表現力が増していました。

 曲が進むにつれて刻々と変わってゆく雲の色と形に、音楽と、2人のパフォーマンスと、空の色と風の心地良さ。全てが完璧に溶け合い、観客を幻想の世界に連れて行きました。

 ラストの「I’m home」で歌われる「うちへ帰ろう」、そしてピアニカの切ない音色が、灼熱の3日間もいよいよ終わりに近づいていることを告げ、終わらないでほしいとどんなに願っても時間は残酷に過ぎてゆき、だからこそ空の色の美しさも音楽の素晴らしさも感じることができるのだと、amiinAのステージが教えてくれていました。

■Negicco(SKY STAGE)

 暑すぎた3日間、最終日のSKY STAGEのトリはNegicco。屋上ステージの背景は、いつの間にか陽が落ちて煌びやかな灯りが一面に広がる湾岸の夜景。ヒット曲や盛り上がる曲をあえてやらず、新しいアルバム『MY COLOR』からの曲を中心としたセットリストに。

 Negiccoの、このステージへの強い思いが感じられたMC「TIFに何度も出演していく内に、SKY STAGEのトリをつとめてみたいと思うようになりました」「本当に、夢の国に来ているみたい」。そして「この景色、みんな私たちのものですよ!」と、Naoちゃんから素敵な言葉が溢れ出しました。

 TIF3日間の締めくくり、SKY STAGEラストとなる「雫の輪」では、「この夜景と共にゆったりと楽しんで。座って、のんびりと聴いてください」と声をかける最高の計らい。それまでスタンディングだった観客は体育座りやあぐらをかいたり。ステージとそこに広がる夜景、冨田恵一氏の提供した穏やかで力強い、Negiccoなりの歩み方を示した愛と人生の曲、そして歌詞の一言一言を丁寧に届けるように歌われた3人の声。これまで何度も来ていたSKY STAGEで、あんなピースフルな空間は初めてでした。

 屋上のコンクリートは昼間の熱を吸って、夜の帳がすっかり下りたこの時間でもホカホカと温かく、それはまるでこの3日間の熱さがまだ身体に残っている私たち観客のようでした。

 スタッフの人までも笑顔になり、お客さんとスタッフがお疲れさまー! と声を掛け合う、Negiccoだからこそ作ることができた、あたたかい空気感でした。

 かつての「まだ広く知られていない全国各地のインディーズアイドルと、メジャーアイドルが一堂に会する見本市」としてのTIFは消え、既に知名度のあるグループが多数出演する夏のお祭りになりました。

 それでも、TIFでしか見られない景色、TIFでしか聴けない音を求めて、私たちはそこへ向かいます。

 普段は意識していないけれど、この世で過ごす時間の全ては、人生でたった一度きりしかない、二度と味わうことのできないもの。

 8月も終盤になり涼しい風が吹きはじめた最近。もう5分に1回は日焼け止めを塗り直したり、とめどなく溢れる汗が目にまでしみたり、タイムテーブルと自分の体力を秤にかけて悩む必要もない普通の日常の中で、ふとあのお祭り騒ぎの3日間を思い返すと、巻き戻せない時間の輝きがこの胸の中を照らします。(松村早希子)

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