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『99.9』や『アンナチュラル』にみる、「チーム」で活躍の傾向 2018年1月期ドラマを振り返る

リアルサウンド

18/3/30(金) 12:00

 4月9日の『コンフィデンスマンJP』(21:00~/フジテレビ系)を皮切りに、4月‐6月期の地上波プライムタイム連続テレビドラマが続々とスタートする。その前に、ここでは1月‐3期の地上波プライムタイム連続テレビドラマを振り返りながら、その傾向や特徴、さらには特筆すべき点を、総括してみることにしたい。

参考:『もみ消して冬』から『anone』まで、家族ドラマを考察 求められるのは“ナチュラルエンド”か

 2018年1月‐3期の地上波プライムタイム連続テレビドラマ平均視聴率のトップ3は、『99.9‐刑事専門弁護士‐SEASON II』(TBS系/17.63%【ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同じ】)、『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系/15.24%)、『アンナチュラル』(TBS系/11.14%)の3作品となった。以下、『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~』(日本テレビ系)、『きみが心に棲みついた』(TBS系)と続くが、平均視聴率が2桁となったのは上位3作品のみだった。

 トップとなった松本潤主演の『99.9』は、2016年の4‐6月期に放送された同ドラマのシリーズ第2作。第1作の平均視聴率が17.15%だったのと比較しても上々の視聴率であり、シリーズものとして安定した人気を獲得したと言えるだろう。2位の『BG』に関しては、同じく木村拓哉が2017年の1‐3月期に主演した『A LIFE~愛しき人~』(TBS系)の平均視聴率14.55%を上回る数字を獲得。主演俳優として、変わらぬ人気の高さを証明した。3位の『アンナチュラル』は、同じく石原さとみが2016年10‐12月期主演した『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)の平均視聴率12.37%をやや下回るものの、最終回で13.3%という最高視聴率を記録するなど、ドラマとしての盛り上がりは非常に高かった。

 これらの結果から、松本潤、木村拓哉、石原さとみの3人は、連続ドラマの主役として、依然として高い人気と支持を獲得していると言えるものの、上記3作品の内容を見るにつけ、ある共通した傾向が窺えるのだった。それは、上記3作品のいずれもが、「個人」よりも「チーム」での活躍が目立つドラマだったという点だ。

 『99.9』は、香川照之、片桐仁、木村文乃など、「班目法律事務所」の面々、『BG』は上川隆也、斎藤工、菜々緒、間宮祥太朗など、「身辺警護課」の面々、そして『アンナチュラル』は、もうひとりの主人公とも言える井浦新をはじめ、市川実日子、窪田正孝、松重豊ら、「不自然死究明研究所」、通称「UDIラボ」の面々だ。いずれの主人公も、過去の「ある事件」が、その人格形成に大きな影響を与えてはいるものの、その事件が物語の中心に位置するのではなく、あくまでも全体におけるひとつの要素に収まっている点も、3作品に共通していた。メインは、主人公の過去ではなく、あくまでもチームとしての現在の活躍なのだ。これは非常に興味深い傾向であり、共通点だったと言えるだろう。

 それ以外の作品で気になったのは、『トドメの接吻』(日本テレビ系)と『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)の2本だった。平均視聴率は、それぞれ6.95%、6.26%と、必ずしも高視聴率とは言えない数字だったものの、主演の山崎賢人をはじめ、門脇麦、新田真剣佑、新木優子、志尊淳、そして菅田将暉など、今後ますます活躍していくであろう「アンダー25」の若手俳優たちの競演が非常に楽しかった『トドメの接吻』。それは、「各方面で活躍するフレッシュな役者たちを、一堂に集めて紹介する」という、地上波ドラマの「ショーケース」的な役割を、改めて実感させる仕上がりとなっていた。

 一方、『隣の家族は青く見える』は、通常の地上波ドラマでは、これまであまり直接的に描かれることのなかった「不妊治療」や「同性愛カップル」といった問題を、軽やかなタッチで描いていたことに好感を持った。現実に存在しながらも、普段あまり語られることのないテーマを、ドラマという虚構世界を通じて描き出しながら、それらに関する知識や経験を広く共有し、「他人事」ではなく「自分事」として考える、ひとつのきっかけとなること。そういった役割も、地上波ドラマにはあるのではないだろうか。ちなみに、両作品とも原作のないオリジナル脚本の作品であることから、「今、テレビドラマに求められているものとは何なのか?」という問いに対する、各局スタッフの意気込みを感じる作品でもあった。

 その意味で、少し気掛かりなのは、放送前の高い期待値や注目度とは裏腹に、平均視聴率6.16%と振るわなかった『anone』(日本テレビ系)の存在だ。ちょうど1年前に高評価を得た『カルテット』(TBS系)の脚本家・坂元裕二の最新作であり、人気若手女優・広瀬すず10代最後の主演ドラマであること、さらに坂元裕二×日テレの連続ドラマとしては、2010年の『Mother』、2013年の『Woman』の流れを汲む作品であることなどから、かなり注目度の高かった本作。

 しかし、結果的には『Woman』の13.58%、『Mother』の12.95%の約半分の数字、『カルテット』の8.90%にも及ばない平均視聴率に終わってしまった。広瀬すずをはじめとする出演者たちの好演や、「ホンモノよりも強いニセモノの絆」というテーマ性、周到に編まれた細やかな台詞や丁寧に演出された画面作りなど、評価すべき点も多い作品ではあったものの、「わかりやすさ」や「連続性」という意味では、やや難しいところがあったことは否めない。脚本家やテレビ局が描きたいことと多くの視聴者が求めることに、何かズレのようなものが生じていたのではなかったか。

 それ以上に気掛かりなのは、ドラマの放送直後、坂元裕二自身がInstagramで、しばらく連続ドラマの世界から離れることを発表したことだった。その真意の程は不明だが、『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)、『カルテット』、そして今回の『anone』と、4年連続して1月期の連続ドラマの脚本を手掛けてきた坂元裕二の新作が、しばらくのあいだ、連続ドラマという形で観ることができないのは、非常に寂しい限りである。

 20%を超えるドラマが続出した時代は、もはや遥か昔のこと。2桁をとることすら簡単ではないどころか、「テレビ離れ」「ドラマ離れ」といった声が、まことしやかに語られている昨今の状況にあって、地上波連続ドラマが描くべきこと、あるいはそこに求められているものとは、果たして何なのだろうか。引き続き、4月以降の連続ドラマに注目していきたい。

(麦倉正樹)

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