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『僕のヒーローアカデミア』相澤消太はなぜ信頼されるのか? デクの才能を見出した、教育者としての姿勢

リアルサウンド

21/1/18(月) 8:00

 「週刊少年ジャンプ」で2014年より連載中の堀越耕平『僕のヒーローアカデミア(以下、ヒロアカ)』。アニメ化のほか、2019年に『僕のヒーローアカデミア The“Ultra”Stage』として舞台化もされている。

 主人公である緑谷出久、通称“デク”が通うヒーロー育成の名門校・雄英高校ヒーロー科。ヒーロー科には個性豊かな生徒が多くいるが、教師もまた然り。デクたち1年A組の担任、相澤消太もそのひとりだ。

デクたち新入生に厳しさを叩きこむ

 ヒーローネームはイレイザー・ヘッド。相手の個性を“消す”個性を持っている。合理性をモットーに動く男で、食事はゼリー飲料だし、世間体にもこだわらず、髭に長髪(オシャレな感じではない)と格好もどこかくたびれている。

 初登場時に「時間は有限 君たちは合理性に欠くね」と寝袋から登場しながら発言したことからも合理的であることが彼のポリシーであることがわかる。

 入学初日から個性把握テストを行い、「トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し除籍処分としよう」と言い、生徒たちを震え上がらせた。実際には除籍処分となった者はいなかったが、前年度は1クラス全員除籍にしているといい、「見込みゼロ」と判断すればすぐに切り捨てる。これもまた合理的な判断によるもので冷たさを感じるが、「半端に夢を追わせることほど残酷なものはない」と発言しており、これもまた、相澤の優しさの形、と思われていた。しかし、実は除籍は書類上だけのもの。

「自己犠牲と命を捨てる事は同義じゃない 履き違えた若者に望み通り一度“死”を与えます」

  除籍のあと、復籍をさせ、さらなる向上に努めさせた。この考えには、かつての友人・白雲朧の存在が関わっている。

相澤が背負う想い

 明るくムードメーカーなクラスメイトだった白雲。どちらかというと“陰”な相澤にも声をかけ、「引っ張ってくれる」存在だった。そして、相澤が自分の個性で一体何ができるのかを悩んでいるときにも「その個性でヴィランの足を引っ張ればいい」、「教師に向いている」など前向きなアドバイスをしていた。実際に、そんな彼の言葉通り、相澤は教師になった。しかし、白雲はインターン先で亡くなる。

「いつも明るくて前だけ見てた 後先なんて考えず…!」

 そう白雲を評する相澤は、白雲を反面教師として、生徒と接していたのだ。自分の体がどうなってもいい、と自暴自棄にも見える個性の使い方をしていたデクに最初はきつい言葉を投げかけていた。ヒーローである前に、命ある人間だ。その命を投げ出すような戦い方をするんじゃない、と相澤は伝えたかったのではないだろうか。

生徒を見る目は間違いない、教師としての相澤

 個性把握テストで、デクに「おまえの“力”じゃヒーローにはなれないよ」と言い放った相澤。そう言ってデクの出方を観察していた。本来なら、そこでデクは一度除籍になっていたかもしれない。玉砕覚悟の全力も、委縮して力を発揮しないのも“見込みなし”。だがデクは、玉砕覚悟の全力も、力を発揮しないということも選ばなかった。今の自分にできる全力、行動不能に陥らないように考えて力を発揮した。その一瞬に、相澤はデクのわずかな“見込み”を見出したのだ。

 また、初めての期末試験では、実技試験で推薦入学組の八百万と轟を組ませ、自身がヴィラン役として相手をしている。八百万が体育祭以降、自分の考えに自信が持てなくなり、轟より自分が格下だと決めつけていた。自信を取り戻させてやりたい相澤だが、「それは俺の役じゃない」とも言う。自信を取り戻させる役割は轟だった。良くも悪くも迷いがなく、言葉を真っ直ぐにぶつける轟は、八百万の本当の力を指摘し、実践させた。そして、見事に八百万の自信回復につなげたのであるこれは普段から生徒の細かなところまで見ているから相澤だからできた采配だ。

 教え子たちには、一人前のヒーローになってほしいと切に願っている。だからこそ、自身の戦いの中で思い出すのも教え子のことたちなのだ。

「見ててやらなきゃ あいつらを 卒業させてヒーローになるまで」

 だから、相澤は強い。唯一無二の友を失い、絶望を経験した相澤だからこそ抱える想い。教え子たちを生かすと同時に、相澤もまた、教え子たちに生かされているのかもしれない。

(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))

■書籍情報
『僕のヒーローアカデミア』(ジャンプコミックス)既刊29巻
著者:堀越耕平
出版社:集英社
出版社サイト

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