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杉咲花、『青くて痛くて脆い』の次はいよいよ朝ドラヒロイン! 『おちょやん』で“国民的女優”へ

リアルサウンド

20/9/8(火) 10:00

 現在公開中の映画『青くて痛くて脆い』でヒロインを演じ、今秋から放送のNHK連続テレビ小説『おちょやん』も控えるなど、杉咲花の活躍が止まらない。朝ドラヒロインといえば、これまでも錚々たる面々が演じてきたドラマ史に残る重要な役柄だ。名実ともにいよいよ杉咲が国民的女優になろうとしていると言える。

 バラエティ番組に出演する杉咲は、愛嬌がある少女のイメージだが、女優としては、感情むき出しで、気持ちを爆発させるように訴える役柄が多い。先月行われた『青くて痛くて脆い』のオンラインプレミアム試写会でも、主演の吉沢亮が「こんな明るい役やってるの珍しくない?」と言うと、杉咲も「初めてかもしれない」と語っていた。

 一見おしとやかな雰囲気ながら、その中に熱い感情を秘める演技と、ささやくような静かな声は、朝ドラ女優である宮崎あおいや高畑充希と同じラインを感じるものがある。ただ、杉咲が女優を目指すきっかけとなった人物は、志田未来。もともと子役として活動をしていたが、志田に憧れ、志田を追いかけ同じ事務所の門をたたき、2011年に研音に所属、同年のドラマ『ドン★キホーテ』(日本テレビ系)から女優としての新たなスタートをきる。

 ドラマ『夜行観覧車』(TBS系)で、学校でイジメを受け、家庭内で母親に暴力をふるう中学生役を、2015年の映画『トイレのピエタ』でも、家庭の問題により常に心が孤独な少女役、杉咲が女優としてブレイクした映画『湯を沸かすほどの熱い愛』では、学校でイジメにあう女子高生……と、思春期特有の心の苦しみを繊細に演じるのは、志田も『14才の母』(日本テレビ系)から得意としていたものでもあり、杉咲の演技のルーツが伝わってくる。

 そんな杉咲にも変化が訪れる。「仕事だけ楽しければいいやと想ってたけど、切り替えてもできるんだなっていうことに気づいた。私生活が楽しくなるにつれ、自身も明るくなってきたり、明るい役も増え、今はそっちの方が楽しい」と、2019年10月放送の『アナザースカイII』(日本テレビ系)で語っていた杉咲。実際に、2018年の『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系)では、これまでの重いキャラを断ち切るように長髪を切り、元社長令嬢で急に貧乏になった役でも、明るく可愛らしい演技を見せていた。

 2019年のNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』では、母・シマ/娘・りくの一人二役に挑戦。女中からマラソン競技に目覚め、教師として女子スポーツの未来を見据え切磋琢磨するシマの芯の強さ、父親と周りの人たちから愛情いっぱいに育てられたことが感じられるりくの可愛らしさ、その違いを見事に演じ分けた。それに呼応するように役の幅も広がっており、昨年、ドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)では、志田と念願の共演を果たす。そして、『青くて痛くて脆い』では、朝ドラ『なつぞら』でヒロイン・なつの永遠の同志とも言える“天陽くん”を演じた吉沢亮とタッグ。これは杉咲の女優人生の第1章の閉幕で、新たな時代に突入する区切りのようにも思わず感じてしまう。

 そんな新しい時代の幕開けとなるのは、やはり朝ドラ103作品目の『おちょやん』だ。本作で杉咲が演じる竹井千代は、女優の道にすべてを懸けるヒロイン。「大阪のお母さん」として親しまれてきた女優・浪花千栄子の人生がモデルとなっている。千代は、喜劇界のプリンスと結婚、昭和の激動の時代に、大家族のような劇団生活を経て、自分らしい生き方と居場所を見つけていく。

 昭和の時代を生き抜いた歴史的人物の一代記は、朝ドラの王道。2000年代の朝ドラは、芸能界の登竜門のように新人女優を起用することはあまりなく、演技派女優として名の知れた女優や、『ごちそうさん』の高畑充希や『あまちゃん』の有村架純のように、脇役として朝ドラに出演し、その確かな演技で主役級の評判を得た女優が、後にヒロインに抜擢されるパターンが多い。逆にそれは、結果が求められるという意味でもある。杉咲もそうしたパターンに則り、2016年の『とと姉ちゃん』で、高畑充希演じる小橋常子の妹・美子を演じた。ちゃっかりでひょうきんものな性格ながら、口論シーンとなると高畑をも勝る啖呵をきり、主役を食う演技で存在感を見せ話題を呼んだ。それから4年、『いだてん』で万人の視聴者に愛されるキャラを演じ、ドラマ・映画を牽引する主役となった今、満を持しての今回の抜擢となる。

 大阪を舞台にし、かつモデルがいる作品で、関西の人に愛される女優を演じることは、その世代の思い入れとの戦いにもなりそうな予感だ。また、一代記ものということで、必然的に実年齢を超えた役を演じることになる。『いだてん』を観る限り、心配はいらないだろうが、杉崎が10代から40代と時を経て成長するキャラクターをどのように演じるか注目が高まる。

 脚本は、『半沢直樹』などTBS日曜劇場の池井戸潤原作ドラマや、『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)などを手がけた八津弘幸。八津は「千代は、ご多分に漏れず苦難の人生を歩むわけですが、やがて昭和の喜劇界を支える名女優へと成長していきます。その背景には孤独や喪失といった重いテーマをはらんでいますが、そんなものは笑い飛ばす、千代の人生そのものが喜劇であり、この作品そのものが喜劇だと思っています」とコメントを寄せている。孤独や喪失を抱え込み、それを表では見せない明るい演技は、まさに杉咲のこれまでのキャリアが発揮できる役柄だ。千代は、道頓堀で芝居を見て女優に憧れ続け、女優の道へ飛び込む話だが、杉咲も志田未来に憧れ、本格的に女優の道へ飛び込んだ役者。女優として重なる部分もあり、女優を演じる杉咲がどんな喜劇役者ぶりで、視聴者を笑わせ、そして泣かせるのだろうか。期待して待ちたい。

■公開情報
『青くて痛くて脆い』
全国公開中
出演:吉沢亮、杉咲花、岡山天音、松本穂香、清水尋也、森七菜、茅島みずき、光石研、柄本佑
監督:狩山俊輔
脚本:杉原憲明
原作:住野よる『青くて痛くて脆い』(KADOKAWA)
制作プロダクション:ツインズジャパン
配給:東宝
製作幹事:日本テレビ放送網
(c)2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
公式サイト:http://aokuteitakutemoroi-movie.jp/

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