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「ダフト・パンクの新譜が出て、僕の人生がまた明るくなった」西寺郷太が語る“生の音楽”の魅力

リアルサウンド

14/3/27(木) 13:00

20140326-nishidera01.jpg音楽活動から文筆業まで、幅広く活躍する西寺郷太。

 各方面でマルチな才能を発揮し続けるNONA REEVESの西寺郷太が初のソロ・アルバム『TEMPLE ST.』の発売を記念して、同アルバムの制作に際してインスパイアされた楽曲を挙げつつ、じっくりと語るインタビュー。前編【「仏教と洋楽の“土着化”は似ている」お寺育ちの西寺郷太が初ソロで挑戦したこと】に続く後編では、4曲目の「I CAN LIVE WITHOUT U」から、8曲目の「YOU MUST BE LOVE」までを解説してもらった。

『TEMPLE ST.』全曲解説+インスパイア・ソング

04. I CAN LIVE WITHOUT U

Bob Dylan/I Want You(1966)
Smokey Robinson/Baby That’s Backatcha(1975)
Sly & The Family Stone/Runnin’ Away(1972)
Lenny Klavitz/It Ain’t Over Till It’s Over(1991)
曽我部恵一/汚染水(2013)

曽我部恵一「汚染水」【Official Music Video】

西寺:ドラム、ベース、ギター、アコギ、パーカッション、キーボード……この曲はぜんぶ自分で演奏しました。ストリングスとエレピの弾き直しだけ宮川弾さんにお願いしましたけど、ほとんど自分の演奏です。打ち込みではこういうこともあったんですけど、生演奏ではほぼ初めての試みですね。もともと「スヌーピー展」(13年10月から14年1月まで森アーツセンターギャラリーにて開催)のためにつくった曲なんですけど、そういう子供っぽい感じのキャッチーさを狙ったところはあって。60年代の音楽ってちょっとヨレてたりするじゃないですか。僕の場合ナチュラルにそうなっちゃうから却って面白いことになるかと思って、やってみたらすごくいい感じに仕上がりましたね。ソロの部分はエレキとアコギとピアノで自分で連弾したんですけど、そのへんはボブ・ディランやビートルズの頃のひとつのソロの在り方になってるというか。素朴なロックやソウルという意味でいうと、意外にこういう曲ってNONAではできないんですよね。こういうタイプの曲をやれてよかったですよ。

――スモーキー・ロビンソンがまさにそうですけど、郷太くんはファルセットで歌ってもエロくならないんですよね。逆にピュアというかブルーな感じになるのが魅力だと思っていて。

西寺:日本人でファルセットがうまい人ってそんなにいないんですよね。どうしても理屈っぽくなってしまうというか。僕はもともと子供がただ単に純粋に歌ってる感じが好きなんですよ。曽我部さんを選盤したのは、あの人のアティチュードに惹かれるから。曽我部さんがサニーデイ・サービスとして活動しながらソロもやってるスタンスは、NONAがあってソロもやるっていう自分の立ち位置的にシンパシーを感じるところがあるんです。あとはなにより曽我部さんの声が好きなんですよね。おそろしい声だなって思ってて。「この人は何をやっても声がいいよね」と言われることが、アーティストにとっていちばんの褒め言葉なんじゃないかと思います。

5. SANTA MONICA

George Michael/Outside(1998)
Pet Shop Boys/West End Girls(1989)
宇多田ヒカル/Traveling(2001)
Frank Sinatra/Come Fly With Me(1958)
Scritti Politti/The Word Girl(Fresh & Blood)(1985)

George Michael – Outside

――トランシーな始まり方で最初はちょっと驚きました。

西寺:この曲だけ冨田謙さんと2人でつくってるから、他の曲とプロダクションがちょっと別なんですよ。一度トラックをつくり、さらにそれを冨田さんに送ってつくり直してもらったんです。そうしたらコードが変わって戻ってきて、そこにまた新たなメロディを乗せていく、という行程で完成しました。他の曲はぜんぶ僕が主導でつくってるんですけど、そうじゃないものが一曲欲しかったので。ソロなのにコントロールされる喜びがこの曲にはあるんですよね。

――ジョージ・マイケルの「Outside」がそうであるように、この「SANTA MONICA」も大箱のダンスフロアが似合いそうですね。

西寺:冨田さんはずっとFANTASTIC PLASTIC MACHINEの制作の鍵を握っている人ですし、クラブ・ミュージックには、その進化の歴史とともに歩んできた人。ここでは冨田さんからボーカル・ディレクションも受けていて、「サビはフランク・シナトラみたいに歌ってほしい」ってオーダーがあったんですよ。だからサビの部分だけ歌い方が妙に大きくて、そのへんも大箱感につながってるのかもしれないですね。

 宇多田ヒカルさんの「Traveling」に関しては、歌詞の乗せ方みたいなところですかね。宇多田さんの日本語と英語の混ぜ方とか、歌詞を書くときのひとつの指針にしています。

 スクリッティ・ポリッティはピンポイントで、「窓ガラスに吐息吹きかけた 君は指で はかなく消える夢描いた 手を伸ばすごとに揺れるシャドー」という歌詞の部分ですね。「The Word Girl」のミュージック・ビデオにそういうシーンがあるんですけど、これは宇多丸さん(RHYMESTER)狙いで書きました。ただひとりのために捧げたラインというわけです(笑)。

06. BLUEBERRY BAG

Prince/Alphabet St.(1988)
Blur/Girls & Boys(1994)
Outkast/Hey Ya!(2003)
The Rolling Stones/Under Cover Of The Night(1983)
Franz Ferdinand/Evil Eye(2013)

Blur – Girls And Boys

西寺:「TEMPLE ST.」の「ST.」はプリンスの「Alphabet St.」から取ったんですけど、あの表記をずっとかわいいなって思っていて。あと、曲中に中国の女の子が出てくるんですが、彼女には「Alphabet St.」の歌詞の世界を歌ってもらっています。

 ブラーは90年代でいちばん好きだったロック・バンドで、NONAが“下北沢ギター・ポップ出身”なんてふうに括られていたこともあって。「Girls & Boys」のわちゃわちゃした楽しい要素は「BLUEBERRY BAG」にも入ってると思います。ローリング・ストーンズを観た後だとあのブラーですらコンパクトな気もしてしまいつつ(笑)……まあもちろんそこが魅力なんですけど、あくまでも自分の世代感のなかでリアルタイムなロックってことではブラーは最後のバンドでしたね。

――前に言ってましたよね、「レディオヘッドの『OK Computer』が出たあたりから僕の人生暗かったんですよ」って。

西寺:でも、ダフト・パンクの『Random Access Memories』が出て僕の人生がまた明るくなったと思います(笑)。だって、僕がいままでやってきたことにダフト・パンクのほうから寄ってきたように僕には思えますから。彼らはいままではコンピュータ音楽だったのに、生の音楽に振りきってきたわけですからね。

 アウトキャストの「Hey Ya!」はラップを入れるときに参考にした曲です。弟がやってるバーの常連客でハワイ出身のアンソニー・ヘンダーソンってラッパーにお願いしたんですけど、Q・ティップ(ア・トライブ・コールド・クエスト)みたいな声の男で。最初は「SCHOOL GIRL」にラップを入れようと思ったんですけど、ロック・テイストの曲でラップしたほうが面白いんじゃないかって考えたときに「Hey Ya!」が思い浮かんで。ジャック・ジョンソンみたいなハワイ感のある曲で、あえてセカセカやってもらう速いラップも面白いかな、って。そうしたらアンソニーがすごくいい歌詞を書いてきてくれたんですよね。これも運やタイミングを重視して良い結果に結びついた例ですね。

 フランツ・フェルディナンドの「Evil Eye」は、めっちゃ長いリミックスがあったりして、やっぱり僕が好きなロックっていうのはストーンズの「Undercover Of The Night」みたいなリミックスっぽいロックなんです。あとはイエスの『Owner Of A Lonely Heart』(1983年)や、ダイアー・ストレイツの『Money For Nothing』(1985年)とか、ロックとダンスがロック寄りで混じったみたいなものは結構好きでした。

 ちなみにこの曲のストリングスは東京芸大を首席で卒業した真鍋裕くんというバイオリニストに弾いてもらってるんですけど、彼がまたものすごくうまい。ギターやベースはめちゃくちゃシンプルな演奏をしてるのに、ストリングスは日本でいちばんになったバイオリニストが弾いてくれてるっていう(笑)。そのギャップもまたいいかなって思ってます。

07. SILK ROAD WOMAN

Sade/Sweetest Taboo(1985)
TOTO/Africa(1982)
細野晴臣/ハリケーン・ドロシー(1975)
高中正義/Smoother(1987)
Michael Jackson/Liberian Girl(1987)

Sade – The Sweetest Taboo

――先述した『MUSIC 24/7』の交通情報のBGMとして使われていた曲ですが……これ、初めて聴いたときに「あれこれなんだっけ?」って思ったんですけど、でも実はなんでもないんですよね。あまりに良いメロディすぎて既聴感があるっていう。

西寺:それは最高の褒め言葉です。これは天地神明に誓って言いますけど(笑)、なんのパクリでもないですからね。「SILK ROAD WOMAN」については……僕もなんのこっちゃわからないんです。「ヘンな歌ができたな」って思っていて、いったいどうしようかと思っていたんですけど、ちょうどそのとき『MUSIC 24/7』のプロデューサーから番組中の交通情報で使えるような音楽をつくってほしいって言われたんです。それで打ってつけのがあるってことで渡したのがこの曲なんですよ。で、ここまできたらせっかくだから曲にしようってことになって、ティトと一緒に歌詞を書いたんです。無国籍な感じというか、なんか不思議な良さがあるんですよね。

――正直言って、メロディの名曲感や普遍性みたいなところではリストに挙がっているどの曲よりも勝ってますよ(笑)。

西寺:ありがとうございます(笑)。シャーデーっぽいオリエンタリズムというか、シャーデー・アデュが砂漠でラクダに乗ってるみたいな世界観ですよね。TOTOの『Africa』や細野さんの『ハリケーン・ドロシー』も異国情緒を感じさせる曲ということで選んでみました。

 高中正義さんの「Smoother」は昔に『ニュースシャトル』(87年10月から89年9月までテレビ朝日で放映された報道番組)のエンディング・テーマとして使われていた曲で、これは別にエキゾチックなムードがあるということではないんですけど、ニュースのエンディング感とか交通情報のBGMでかかりそうな感じが「SILK ROAD WOMAN」には異様にあるよなってことで(笑)。

 マイケル・ジャクソンの「Liberian Girl」は言葉の通じない女の子とのロマンスということで選んだのもありますけど、ついにジャクソン・ファミリーと歌詞を共作した曲ということも踏まえての選曲です。ティトとの会話は言葉は通じるけど細かいニュアンスは伝えられなかったりするので、歌詞はおのずとストレートな表現になるんですよね。入り組んだ表現ができないぶん大事なものが伝わるというか。この曲はいずれ誰かにカヴァーしてほしいですね。

08. YOU MUST BE LOVE

Ned Doheny/Each Time You Play(1976)
Bee Gees/More Than A Woman(1977)
シュガーベイブ/DOWN TOWN(1975)
Daft Punk/Fragments Of Time(2013)
Robin Thicke/Ooo La La(2013)

Daft Punk feat. Todd Edwards – Fragments of Time (Official Audio)

西寺:この曲だけ宮川弾さん主導で、先に彼につくってもらって僕があとから手を加えた形です。ネッド・ドヒニーに関しては、HARCOが「郷太くんってネッド・ドヒニーに声が似てるよね」って言ってくれたことがあって。自分の歌がこういうふうに聴こえていたとしたらうれしいですね。でもまあ、この「YOU MUST BE LOVE」に関しては、とにかくダフト・パンクの「Fragments Of Time」の存在が大きくて。本当にあの曲が大好きなんです。この曲で歌いたいって素直に思いましたね。それで弾さんに、「Fragments Of Time」みたいなソウル感のあるAORを僕が歌うことをイメージしてつくってもらえないかって打診したんです。シンガー主導でつくると狙いすぎちゃうから、これは弾さんにお願いしたほうがいいだろうと思って。そうしたら弾さんがメロディの半分ぐらいをつくってきてくれて、それから2人で曲にしていった感じですかね。これも良い意味でサラッと聴ける曲だと思います。「Fragments Of Time」はここ5年ぐらいでも指折りに好きな曲です。シンプルで間も空いてて、DJならではの情報処理能力も学ぶところがある。ダフト・パンクのメンバーって、僕と奥田と同い年なんですよ。つまり、NONAと同じ世代なんですね。で、去年彼らがアルバムを出したことでだいぶ空気が変わってきたと思っていて。ニルヴァーナやレディオヘッドみたいなダウナーなロックが世の中を制覇したとき、NONAがやっているようなことは古く見られたというか、それこそ「Get Lucky」だとか「Happy」みたいな価値観は劣勢でしたからね。ロビン・シックもそういう抜けたところがあって、わかりやすいポジティブさがあるというか、聴くほうは楽ですよね。スーツにスニーカーを履いてる感じというか、いいものだからこそカジュアルに楽しんでほしいです。そういった意味で、最近の音楽シーンは圧倒的に面白いですよ。追い風が吹いているというか、ようやく自分の好きな音楽が一般の人たちにも伝わるかもしれないって気持ちも出てきたりしています。

 いままでは宙に向かって手を振ってる気がしていたんですけど、今回はパシッと当たるような気がしています。特に今回のソロは伝わりやすいんじゃないかなって思っています。

(取材・文=高橋芳朗)

■リリース情報
『TEMPLE ST.』
(GOTOWN/ VIVID SOUND)
発売:3月25日
価格:2,800円

〈収録曲〉
01. EMPTY HEART
02. TEMPLE / SHAKE
03. SCHOOLGIRL
04. I CAN LIVE WITHOUT U
05. SANTA MONICA
06. BLUEBERRY BAG
07. SILK ROAD WOMAN
08. YOU MUST BE LOVE

http://www.gotown.jp
http://ameblo.jp/nonareeves-life

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