Chaki Zulu、ESME MORI、Mori Zentaro、CELSIOR COUPE…ストリーミング時代の音楽シーン支える注目プロデューサー4組
20/8/11(火) 12:00
BACHLOGIC、今井了介、RYUJA、Nao’ymt。いずれも、ブラックミュージック方面での地位確立を機に、J-POPシーン全体へと飛躍していったプロデューサーである。そもそも、ヒップホップやR&Bは“プロデューサー・ミュージック”とも称されるほどプロデューサーの存在意義が大きい。技量やセンスをハードに求められる面もあるが、そのぶん無名のクリエイターが瞬く間にスポットライトを浴びる可能性も存分に秘めている。特にここ数年は、ストリーミング世代のアーティストが台頭するのと並行して、彼らと切磋琢磨してきた制作者が業界内外からスムーズに注目されるケースも増えてきたように感じる。これよりピックアップする4組のプロデューサーも、まさに今、認められるべくして認められつつある猛者ばかり。次にJ-POPを席巻するのは誰か、想像に胸を馳せながらチェックしてみてほしい。
ヒップホップと歌もの、二つの領域を自在に行き交うChaki Zulu
日本のストリートカルチャーをラップ、アート、ファッションと多面的に盛り上げるクルー、YENTOWN。その一員にして、現行ヒップホップの最右翼を担っているのがChaki Zuluである。アーティストに対する鋭い分析力と、豪快さとスタンダードな感覚を持ち合わせたサウンドメイキングが作風の大きな特徴。とりわけ、クルーメイトであるAwichやkZmとのタッグでは、ミステリアスな雰囲気を充満させた「WHORU? feat. ANARCHY」や「Shook Shook」(Awich)、ドラムンベースで軽快に突き進む「TEENAGE VIBE feat. Tohji」(kZm)など、挑戦を厭わない彼の姿勢が如実に表れている。
他にも、SALUやSKY-HIら人気ラッパーのプロデュースも引き受け、すでに十分なプロップスを保有するChaki Zuluだが、一方で歌ものとの関連性も深い。元々はTHE LOWBROWSというグループで音楽活動をする傍ら、制作サイドの人間として山下智久やMIYAVIらの楽曲を担当。ヒップホップ界隈での評判を受けてか、最近ではダンスポップ関連への従事が再び増加しており、RYUJI IMAICHIやGENERATIONS from EXILE TRIBEといったLDH関連アーティストの作品では、スパイスとしてもはや欠かせない存在に。また加藤ミリヤにトラック提供した「Don’t Let Me Down」は、歌ものとヒップホップ、両方の作法を上品に調和させたChaki Zuluならではの佳曲となっている。
iriとの抜群のコンビネーションで魅せるESME MORI
資生堂やNTTドコモなど、誰もが知る企業の広告音楽も手がけるのは、自らシンガーソングライターとしても活動するESME MORI。シティポップやベースミュージックなどを下敷きにした癒し系トラックのスペシャリストで、CMソングとして話題を呼んだchelmicoの「爽健美茶のラップ」は彼の手によるもの。加えて、2019年に新体制を迎えたAwesome City Clubのサポートや、ヒプノシスマイクをはじめとするバーチャル系アーティストへの楽曲提供など活動は多岐に渡るが、やはり彼の名仕事といえばiriとの連動だろう。「Wonderland」や「Come Away」のサウンドワークは、iriのアンニュイな持ち味を誰よりも鮮やかに引き出しているし、さらに彼らは共同制作者として、Sexy Zoneや私立恵比寿中学といった面々にもグルーヴ豊かなダンスナンバーを用意。この全方位型とも言えるコンビネーションがとにかく頼もしいので、今後のJ-POP発展のために願わくば定番化していってほしいところ。
大物アーティストが見逃さないMori Zentaroの技術
自らを「根っからの音楽オタク」と話すのが、関西発祥のアーティスト組織・Soulflexのブレーンも担うMori Zentaro。同じくSoulflexに所属するSIRUPとは旧知の仲で、彼との数ある共同作品のひとつ「Do Well」(Honda「VEZEL TOURING」CMソング)は、ラテン要素をまぶした躍動的なサウンド構成でスマッシュヒットを記録。正真正銘のブラックミュージック贔屓でありながら、実績を重ねるごとに意匠のインパクトが増してきているあたり、彼の音楽に懸けるアップデート精神は相当なものだ。そんな彼の魅力にアーティストが感化されないはずもなく、香取慎吾は開放的なディスコトラック「Trap」をシングルカット。山本彩は「stay free」などのアルバム収録曲で、耳当たりの良いエアリーな歌唱法に開眼した。
最先端の音を鳴らすクリエイト集団、CELSIOR COUPE
向井太一との深い親交で知られるCELSIOR COUPEは、yahyelやOBKR(小袋成彬)らと時代性を共有するオルタナティブR&Bの騎手的存在。集団で活動しているとのことだが、SNSなどを見て回ってもプロフィールに謎が多く、現時点では覆面ユニットの毛色が強い。先述の向井とはメジャーデビュー前から多くの楽曲でタッグを組み、エクスペリメンタル志向の奥ゆかしいアプローチから明快なファンクまで、柔軟なアイデアを駆使して彼のチャンネル開拓をアシストしてきた。特に「Savage」や「最後は勝つ」のように、内省に傾倒した楽曲でのシナジー効果たるや絶大。BOYS AND MENやDISH//、TAEYOのメジャーデビュー作など、CELSIOR COUPEもまたプロデュース対象の幅が少しずつ広がりを見せており、イノベーティブな音作りのさらなる発展も含め、今後が期待される。
■白原ケンイチ
日本のR&B作品をはじめ、新旧問わず良質な歌ものが大好物の音楽ライター。当該ジャンルを取り上げるサイトの運営、コンピレーションCDのプロデュース、イベント主催の経験などを経て、現在はささやかに音楽ライフを満喫する日々。Twitter
新着エッセイ
新着クリエイター人生
水先案内