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欅坂46のダンスは、なぜ見る者を惹きつける? “成長”と“心情”を意識した振付を考察

リアルサウンド

19/10/30(水) 7:00

 10月27日の『関ジャム 完全燃SHOW』でダンス特集の最新版が放送され、振付稼業air:man、akane、TAKAHIROの3名がゲスト出演した。欅坂46のほとんどの楽曲の振り付けを手掛けているTAKAHIROは、自身が手掛けた矢沢永吉「魅せてくれ」の振り付けの意図や撮影秘話などを解説。他のゲスト2人の振り付けについても熱く語る様子からは、彼のダンスに対する真剣さや愛がひしひしと伝わってくる。総じて現在のエンタメ業界における”振付師”の重要さを再認識させられる放送であったと言えるだろう。

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 ダンス素人ながら筆者がTAKAHIROの特徴を挙げるとすれば、手や足の動きそのものだけでなく、ステージ全体の見せ方~視覚的な効果など、ミクロな要素に加えてマクロ的な視野で大きくダンスを捉えている点と、それを連続した時間軸の一瞬として捉えている点にあるように思う。さらに言えば、こと欅坂46に関しては実際に踊る彼女たちの”成長”をダンスに組み込み、1曲1曲を独立した作品としてではなく、関連した物語のひとつとして見せることで、ダンスの視点からもグループの成長を映し出しているのが画期的だ。それによってひとつのグループを振り付けし続けることの意味も生まれている。

 例えば、視覚的な効果という点では「サイレントマジョリティー」がわかりやすい。見る者の視線がセンターに注がれるように両脇のメンバーらがしゃがんで道を作り、センターが後方から前進してくるサビの振り付け(通称”モーセの十戒”)は、ステージ全体で作品を表現しているのが最もよく表れているシーンのひとつだろう。ひとりひとりの細かなダンススキルは当然求められるが、高校ダンス部の全国的なブームのなか、個々人が集まり踊ったときの全体での見え方も現代の視聴者は注目している。今でこそグループダンスにおける当たり前の考え方なのかもしれないが、こうした特徴を持ったTAKAHIROの振り付けはアイドルシーンに鮮烈な影響を及ぼしている。

 そして、演者に”背景的”な役割を担わせるのも彼の振り付けの特徴のひとつだ。すべてのメンバーが等しく同じ踊りをするのが一般的だが、例えば「アンビバレント」ではステージ後方でよれよれと漂っているメンバーがいたり、「エキセントリック」では歌割担当以外のメンバーがステージを縦横無尽に駆け抜けるパートがある。彼女たちはただ漂っているわけでも、ただ走ってるわけでもない。歌詞の意味を表現するための振り付けであり、それをメンバー全員で取り組んでいるのだ。ある意味、演劇のようなパフォーマンスと言えるだろう。

 見る側の心情を意識したダンスの流れを構築しているのもTAKAHIROの特徴である。番組内での彼の発言で「Bメロで高難度のダンスを見せることで視聴者の意識がサビへと向かう」というものがあった。この視点はひとつひとつのダンスだけに集中しているとあまり湧かない発想である。観客の目線がどこに向かうか、そしてこの踊りを見せると会場はどんな反応になるかを想定した上で振り付けする。それはつまり、連続する一瞬一瞬の動きの積み重ねで一曲のダンスを振り付けているということだ。ひとつの動きに拘らず、全体の流れの中でダンスを見せているのである。

 また、シングルごとに全く違ったダンスを見せているようで、実は似た振りを別の曲に組み込んでいるのも特徴のひとつである。「毎回のシングルで段階を踏むごとに、ちょっとずつ似た振りを入れてくれるんですよ。同じようなステップが次のシングル曲にも入ってたりするんです」と話すのは佐藤詩織(クイックジャパン135号より)。単にその曲に合った動きだからというわけではなく、前作から今作にかけての成長を見せていく。また、振り付けを完全に固定せず、時間が経つにつれて変化させることもある。以前はこうだった振りが今は違う振りに…ということもしばしば。そうした自由度の高さからくる”変化”もパフォーマンスの見所に繋がっている。

 新曲が出るたびに話題になる欅坂46のダンス。彼女たちのパフォーマンスが観客を惹きつけるのは、こうした振付師の優れた発想があるからこそなのだろう。(荻原梓)

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