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「ボーイズ・イン・ザ・バンド」安田顕が稽古に期待「煮るなり焼くなり」

ナタリー

20/7/2(木) 12:56

左から安田顕、白井晃。

「ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~」の取材会が6月中旬に東京都内で行われ、演出・上演台本の白井晃、主演の安田顕が参加した。

本作は1968年にオフブロードウェイで初めて披露された作品。初演50年を迎えた2018年にはブロードウェイでリバイバル上演が行われ、第73回トニー賞の演劇リバイバル作品賞に輝いた。日本では故・青井陽治の翻訳・演出で1983年に初演されて以来上演が重ねられている。作中では真夏のニューヨークを舞台に、安田演じるマイケルのアパートでの出来事が描かれる。マイケルの部屋では、ゲイ仲間のハロルドの誕生日を祝う準備が進められていて……。

取材会の冒頭で白井は、本作の初演当時に比べて現在では、同性愛が社会に受け入れられていることを挙げる。その一方で、新型コロナウイルスに関わる状況を受けて「自分たちを守るために、自分たち以外を排除する感覚は消えていないと感じた」と述べ、「セクシャリティに限らず、人種、宗教、経済など、“線引き”によっては誰もがマイノリティになりえます。例えば作中の彼らがもしニューヨークに住むアジア系の人々だったら、(新型コロナウイルスの感染が拡大していた)2・3月頃はバッシングを受けていたかもしれない。この作品は同性愛がマイノリティとされた社会の物語ではありますが、こういう話は今なおどこにでも転がっている」と分析した。

安田は「活字離れ気味なのでこの台本は難しかったですが、そのぶん知る喜び、学ぶ喜びがあります」と、キャラクターや物語の背景について勉強していることを明かす。また安田は「The majority is never right(多数が正しいということは決してない)」というフレーズを挙げ、「僕はこの言葉をもともと知っていたのですが、白井さんの『自分たちもいつマイノリティになるかわからない』というお話を聞いて、実感の度合いが変わりました。稽古をする中でもっと腹に落ちてくると思うので楽しみです」と意欲を見せた。

ゲイ仲間のパーティーが描かれる本作では、登場人物同士がキスやハグをするシーンがたびたび登場する。白井は俳優同士が近接・接触する演出を避けて感染症対策をとりつつ、観客が不安や違和感を覚えないようにしたいと言い、「登場人物9人の心がそれぞれにぶつかり、9×8通りの感情の流れがあります。舞台上での距離感が、人間関係の面白さとして作用していけばいいなと思う」と構想を語った。

自身が演じるマイケルの人物像について尋ねられると、安田は「不思議と愛せる」と回答。安田はマイケルが酒好きのカトリックであること、傷付くことを恐れながらも他人を傷付けてしまうことなどを挙げつつ、「今のところ彼のマイナスな点しか見つけられていません(笑)。でも愛せるのは彼が人間臭くて憎めないから。自分にも似た部分があると思う」と共感を口にする。白井はこれにうなずいて「安田さんは自分の中のマイケル的な部分を探り出し、シンクロしようとしている。それは役柄を自分のものにするために、大事な感覚だと思います」と続けた。

また白井はステイホーム期間を経てスタートした稽古の感想を「ひとつの場所でものを作る時間はすごく貴重で、尊厳のある時間だと思いました」と語り、「生身で集まって話したり、何か作ったりするのは人間の本能だと感じました。1人ではできなくても、みんなと一緒ならやれるから僕は演劇が好きです。だから演劇を始めたのだと、改めて思い出しました」と感慨深げに述べる。安田は「今感動しちゃったな、俺」とつぶやくと、「お話を聞いて、グッと“ギア”が入りました。煮るなり焼くなりよろしくお願いします」と、改めて白井との稽古に期待を寄せた。

取材会では、安田がカトリックのマイケルを演じるため、ステイホーム期間にイエス・キリストの生涯をつづる映像作品を観たことを明かす場面も。安田は「白井さんとの“ぶつかり稽古”が始まって、(キリスト教に関する)セリフのベースを理解していないのに『違う技を出して』と言われたら、どうしたらいいかわからないですから。(プロレスラーの)武藤敬司さんは膝が悪いからシャイニング・ウィザードという技を作ったんです。それと同じで、ベースがあるからこそ新しい技ができるんですよ!」と独特の比喩を交えて熱弁を振るう。これを聞いた白井が「いい例えですねえ……(笑)」としみじみとした表情でうなずくと、取材会場は大きな笑いで包まれた。

本作は7月18日から28日までの東京・Bunkamura シアターコクーン公演を皮切りに、宮城、北海道、大阪を巡演し、8月27日から30日まで東京・なかのZERO 大ホールにて東京凱旋公演が行われる。なお新型コロナウイルスの影響を受け、Bunkamura シアターコクーン公演では、販売済みチケットの払い戻しを実施したのち座席配置を調整して再販売する。チケット再販売の先行抽選受付は明日7月3日11:00から6日まで受け付けられ、一般販売は11日10:00にスタート。

「ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~」

2020年7月18日(土)~28日(火)
東京都 Bunkamura シアターコクーン

2020年8月8日(土)・9日(日)
宮城県 東京エレクトロンホール宮城

2020年8月15日(土)・16日(日)
北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)

2020年8月21日(金)~23日(日)
大阪府 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

2020年8月27日(木)~30日(日)
東京都 なかのZERO 大ホール

原作:マート・クローリー
演出・上演台本:白井晃
出演:安田顕 / 馬場徹、川久保拓司、富田健太郎 / 浅利陽介、太田基裕、渡部豪太 / 大谷亮平、鈴木浩介

※初出時より公演情報を修正しました。

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