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『愛していると言ってくれ』は年上ピュア男役の豊川悦司が最大の魅力 『恋つづ』佐藤健に匹敵!?

リアルサウンド

20/6/14(日) 6:00

 ドリカムことDREAMS COME TRUEによる大ヒット主題歌「LOVE LOVE LOVE」がリフレインする恋愛ドラマ『愛していると言ってくれ』(TBS系)。制作されたのは1995年で、今をさかのぼること四半世紀前だが、現在「2020年特別編」を再放送中ということで、まるでタイムカプセルを掘り起こしたように、ベテラン俳優・豊川悦司の若き日の姿が「かっこよすぎる!」「色気がハンパない」と評判を呼んでいる。そこで、ドラマを観れば分かることではあるが、当時の熱狂を知る昭和生まれの人間としてはあえて語っておきたい。あの頃のトヨエツは、今で言えば『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)の佐藤健に匹敵するほど“爆イケ”だったのだと。

参考:『愛していると言ってくれ』に満ちた“90年代ドラマ”のエネルギー 北川悦吏子脚本を紐解く

 豊川悦司は演劇界でキャリアをスタートさせ、既に北野武監督の映画『3-4×10月』や三谷幸喜作の舞台を映画化した『12人の優しい日本人たち』でキラリと光る存在感を見せていたが、テレビシーンにおいてその名が認識されたのは、1992年の深夜ドラマ『NIGHT HEAD』(フジテレビ系)だった。飯田譲治監督によるSFサスペンスで、研究所から脱走した超能力者の霧原兄弟を豊川と「筋肉体操」の武田真治が演じた(当時は細身だった)。まだ無名だった2人のフレッシュな魅力が注目され、能力が強すぎて辛い弟(武田真治)が「兄さん、頭が痛いよ!」と兄(豊川悦司)に訴え兄が弟を抱きかかえる様が今でいうBL(ボーイズラブ)のような萌えを巻き起こし、スマッシュヒットした。

 その後、豊川はゴールデンタイムの連ドラに進出し『この世の果て』(フジテレビ系)、『この愛に生きて』(フジテレビ系)などの愛憎劇で男性キャストの二番手までキャリアアップ。そして、『愛していると言ってくれ』でついに主演の座をつかむ(常盤貴子とのダブル主演)。演じた榊晃次は耳が聞こえず声を出さない画家という役柄で、手話を駆使しての演技となったが、豊川が長い腕と指で滑らかに“話す”手話は、まるでパントマイムかバレエのよう。舞台に立っていた人ならではの手先足先まで神経の通った優雅な動きに魅了された人も多いだろう。また、これだけ多くの場面で手話を繰り出しながら言葉を発さずに役の感情を顔でも表現することはとても難しいはずだが、豊川はもともと手話を使っている人としか思えない自然さで演じている。

 『愛していると言ってくれ』の出演時は既に33歳。水野紘子役の常盤貴子は23歳で、展開するのは年齢差のある恋。ピュアなラブストーリーであると同時に、まだ何者でもなく恋愛経験もあまりない若い女性が10歳上の男性に恋をし、猛アタックして彼女にしてもらえるが、せっかく付き合えたのに、彼と同年代の元カノの出現によって独占欲を爆発させ自滅してしまうという“若さゆえのあやまち”的な物語にも見える。6月14日(日)放送の第7話以降で、その“あやまち”が描かれていくが、筆者を含め放送当時の若い視聴者は、むしろ紘子になりきって「せつなーい」とどっぷりと共感した。

 常磐と同世代の20代女性にとって、豊川演じる晃次は大人の色気がある男性。第4話、海辺で見せた唇をなぞってからのキス、手話で「紘子が食べたい」と伝えてくるなど(!)、随所に恋愛偏差値の高さが表れる。紘子の幼なじみ・矢部健一(岡田浩暉)のような子供っぽさもなく、絵の才能にあふれて自分の生き方を確立し、若さで突っ走る紘子も想定内とばかりに優しさで包み込んでくれる。しかし、後半、その年上の男としての余裕が、逆に紘子を追い詰めることにも。やはり年齢差のある恋愛は難しいんだなぁと思わせるあたり、“恋愛の神様”と呼ばれる北川悦吏子脚本らしいリアルな展開になっている。

 このときの豊川の身体性は現在の若手俳優に比べても高い。180cm越えの長身で手足も長く、シンプルな白いシャツを着ていても、サマになる。そんな彼が20cm身長の低い常磐に対して身を屈めながら懸命に手話で語りかけてくれるから、身長差萌えが生まれ、大型犬がなついてくるようなギャップも味わえる。

 そんな豊川は『愛していると言ってくれ』で熱狂を呼び、ファンが急増。当代一の色男はキムタクか“トヨエツ”かと比較されるほどの人気に。この2年後の1997年には人間ドラマの名作『青い鳥』(TBS系)にも出演しているが、豊川の主演作では純粋なラブストーリーは少ない方。連ドラでは他に脚本の北川と再び組み、中山美穂と共演した『Love Story』(2001年/TBS系)ぐらいしかない。近年はサスペンスや時代劇への出演が多くなっているので、ここはぜひ続けて『Love Story』も再放送してほしいところだ。

 『愛していると言ってくれ』が放送された1995年から10年ほど経つと、恋愛ドラマは視聴率が取れなくなり、ラブストーリー冬の時代に突入。そこからもう1周回って、ここ数年は『中学聖日記』(TBS系)、『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)などがヒットし、恋愛ドラマ復権の兆しもあるが、少女漫画ベースのものが中心なので、物足りない思いをしている視聴者も少なくないだろう。『愛していると言ってくれ』のような大人の男性が魅力的に描かれるドラマも作られることを期待したい。当時の豊川と同じ33歳の松下洸平(『スカーレット』)と広瀬すずの組み合わせでリメイクなんて、どうだろうか。(小田慶子)

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