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和田彩花の「アートに夢中!」

塩田千春展:魂がふるえる

毎月連載

第22回

ベルリンを拠点に国内外で活躍する現代美術作家・塩田千春は、記憶、不安、夢、沈黙など、かたちのないものを表現したパフォーマンスやインスタレーションで知られている。ごく個人的な体験を出発点としながらも、その作品はアイデンティティ、境界、存在といった普遍的な概念を問うもの。中でも赤や黒の糸を空間全体に張り巡らせたダイナミックなインスタレーションは、彼女の代表作となっている。現在、森美術館で開催中の「塩田千春展:魂がふるえる」は、大型インスタレーションを中心に、立体作品、映像作品、写真、ドローイングなどで、塩田の約25年に渡る活動を網羅的に体験できる展覧会。「不在のなかの存在」を一貫して追求してきた塩田の作品を、和田さんはどう見たのか。

パワーを感じる
言葉にならない展覧会

《どこへ向かって》(2017/2019年)

今回の展覧会で、初めて塩田さんの作品を生で見ました。作品のパワーをものすごく感じましたが、 言葉にしにくいというか、とても難しいとも思いました。

私は現代アーティストの展覧会や作品を見ると、どうしても何かテーマを見出そうとしてしまいます。なので、いつもけっこう突き詰めて考えてしまうんですが、今回は難しかった。作品を追えば追うほど、メインの巨大なインスタレーション作品になるほど、パワーはすごいのに、それを言葉にできなくなる自分がいたんです。

全長約280kmの赤い糸
《不確かな旅》

《不確かな旅》(2016/2019年)

今回のメイン作品は、《不確かな旅》。真っ赤な糸が張り巡らされた展示室には、フレームだけの船が置かれたり、宙に浮いたりしています。

以前、2015年にベネチア・ビエンナーレ日本館で開催された「《掌の鍵》– The Key in the Hand - 」展の写真を見たことがありました。この時は、無数の鍵が赤い糸の先に吊るされていました。そして船も古いベネチアの伝統的な船だったので、写真を見ただけでも、かなり心に重く響く展示だなと思いました。

それと比べると、この《不確かな旅》はあっさりしているように感じました。船もさらに軽量化というか、抽象化されているので。それでも、無数に張り巡らされた糸が、彼女の不安や、人や物事との関係性の絡みを表しているように思えて、心に訴えかけてきます。ちょっと重さも感じさせるなと思いました。

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