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“恋つづロス”の人にも届けたい 上白石萌音、心の琴線に触れる歌声の魅力

リアルサウンド

20/3/20(金) 12:00

 ゴールデン・プライム帯で初主演を務めたドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系/通称:恋つづ)が大ヒットした上白石萌音。これまで、女優業はもちろん声優や歌手、ナレーターなど声の領域においても幅広く活動してきた。同作で共演した佐藤健も、出会う前の上白石の印象を「声が素敵な方だと思っていた」と話す。愛され女優・上白石萌音の大きな魅力のひとつである「声」。その魅力を、演技と歌唱の両側面から探った。

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■魔王の心を溶かした、不思議な包容力

 大きな瞳、まんまるなおでこ、思わず触れたくなるような頬。「笑った顔が誰よりもかわいい」……劇中のセリフがぴったりのチャーミングなルックスで、いまや日本中を虜にしている上白石萌音。

 今回、恋に仕事にまっすぐな新人看護師・佐倉七瀬役を好演した彼女だが、くるくると変わる表情や若さあふれる瑞々しさのなかに、聡明さや芯の強さ、ときには母性をも感じさせる大人の表情が見え隠れする。

 佐藤演じる天堂浬に抱きすくめられながらも、まるで彼女のほうが天堂の心ごと抱きしめているような、あたたかな包容力をもつ女性だ。

 違和感なく高校生役がつとまるほど顔立ちは幼いのに、天堂とのラブシーンで見せた表情には、女優としての幅を感じさせた。それでいて、透き通るような清らかさを、神聖さを失わない、不思議な人。

 そんな彼女の魅力のひとつが「声」。ふんわりとすべてを包み込むような軟質の声は、優しさのなかに、ほんの少し少年性を感じさせる。

 耳よりももっと奥……心にじんわりと響く、聖歌や子守唄のような声だ。

■女優が歌うからこその魅力

 『恋つづ』最終話、天堂に「ばーか!」と言い放った七瀬にキュンとした人も多いだろう。上白石は声の使い分けが実にうまい。ブレスや言葉じりにも色を持たせることで、感情の機微を伝える。

 彼女が、声優の経験から得たという「声色の調整」について語ったインタビューが興味深かった。「5歳若めで」「色を明るく」といった、センシティブな表現の世界だという。

 上白石が織りなす声色、表現力の高さは、もちろん歌唱においても活かされている。彼女の歌を聴くと、女優が歌う意味、女優が歌うからこその魅力を考えさせられる。

 当時10代の上白石が、小坂明子氏の名曲「あなた」をカバーした歌唱映像を観たことがある。

 「あなた」への想い、過ごした日々、叶わなかった夢……潤んだ大きな瞳が、歌詞には描かれない世界を見つめ、今にも泣きそうに揺れている。クセのない、まっすぐすぎるほどの歌唱。詞のひとつひとつが、切なく胸を刺す。

 まさに女優・上白石萌音が演じる、数分かぎりのモノドラマだった。

■深く響く低音域の魅力

 彼女が話す声は落ち着きのあるミドルだが、歌唱における音域は広い。なおかつファルセットの技術も高いため、聴き手に違和感を持たせることなく、地声とファルセットをクロスさせることもできる。

 声量は言うまでもない。最新曲「From The Seeds」(2020年2月25日リリース)でのパワフルな歌唱は実に爽快で心地よい。中毒性のある楽曲とうまく絡み合い、脳内リピートが止むことはない。

 そして上白石萌音の「声の美しさ」は、深く響く低音域でさらに映える。

 彼女の楽曲で例を挙げるならば「一縷」(2019年10月14日リリース)をぜひ聴いてみてほしい。

 こうしたノスタルジックな楽曲と彼女の声は、また非常に相性が良い。

 高い語学力と美しいスピーキングを持つ上白石であるから、ミュージカルのスタンダードナンバーも聴かせどころなのだが、それについてはまた、機会があれば語りたい。

〈でもね せめて これくらいは持っていても ねぇいいでしょう? 大それた希望なんかじゃなく 誰も気づかないほどの小さな光〉(「一縷」)

 このフレーズに、ズキンと胸がしびれた。先述したような、どこか少年性を感じさせる声。それでいて、低音域で深く響かせる技術。セリフのように歌う歌詞。

 上白石の技術と感性、すべてが詰まったようなワンフレーズだった。

 楽曲の世界に入り込む想像力と、それを表現する歌唱力、表情、仕草。それらを兼ね備えた上白石の歌声は、心の琴線にじんわりと触れる。芝居においてもそうだ。

 優しくて、あたたかくて、まっすぐで、品があって……そしてなにより、美しい。彼女の声の魅力は、女優・上白石萌音の魅力そのものだ。触れれば触れるほど、底知れず惹かれてしまう。(新 亜希子)

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