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いま、最高の一本に出会える

UA、キャリアを俯瞰するような選曲で響かせた歌声 LIQUIDROOMアニバーサリー公演

リアルサウンド

19/8/14(水) 18:00

 新宿から恵比寿に移転して15周年を迎えたライブハウス、LIQUIDROOMのアニバーサリーに駆けつけたUAのライブが去る7月24日に行われた。日常生活を送るカナダの島と日本を行き来しながら、音楽活動を続ける今の彼女は、一体どんなことを考え、音楽と向き合っているのか? そんな思いを抱きながら、開演を待つ場内で流れていたのは、まさにリバイバルの真っ只中にあるジャングルやレイヴィーなテクノ、Massive Attackやエイフェックス・ツインといった90年代のダンスミュージックだ。その東京における中心地だった新宿時代のLIQUIDROOM、かつてそこで繰り広げられたUAのライブを想起させた選曲は、同時に“ポストレイブ時代のソウルシンガー”という彼女の出自をも思い出させた。

 「待たせたぜ!」そう言いながら、ステージに登場した彼女がまとっていたのは、紅白のストライプが入ったドレスと華やかで軽やかなムード。バックを務めたのは、現在はベルリン在住のギタリスト内橋和久、ベース、キーボードの鈴木正人(LITTLE CREATURES)、ドラムの山本達久、コーラスの神田智子とMEG(ex-SUPER BUTTER DOG)からなる5人だ。この日のライブは、2016年の最新作『JaPo』の楽曲を主軸に、大きな愛がゆっくりと花開くように、生のままのボーカルが情感を注ぎ込むオープニングナンバー「愛を露に」からエキゾチックなボーカル、コーラスワークとポリリズミックなグルーヴが一体となった「TARA」、「AUWA」、「JAPONESIA」、「ドチラニシテモ」の無国籍な楽曲世界へぐっと引き込んでいく流れ。アレンジはトライバルであると同時にモダンでもあり、郷愁を感じさせるような旋律とジャズや現代音楽からメロコア、プログレッシブなロックまで、多彩な要素が自然に溶け合い、躍動していた。

 そして、最新作のオーガニックでエキゾチックな楽曲に加え、要所要所に散りばめられた名曲、カバーの数々は、ポップスシンガー、UAの豊かな表現力がオーディエンスを魅了した。サイケデリックな浮遊感に満ちたトリップホップ「ブエノスアイレス」やスペーシーなシンセベースとジャングルのリズムを織り込んだ「閃光」、2016年に亡くなった朝本浩文が作曲を手がけた甘美なチルアウトソウル「Love Scene」、そして、フューチャリスティックな生音ハウスチューン「ランデブー」。そうしたクラブマナーの楽曲でフロアを揺らしたかと思えば、2010年リリースの企画アルバム『KABA』から荒井由実「きっと言える」と薬師丸ひろ子「セーラー服と機関銃」のカバーを披露。親密なあたたかさを伝える歌声と研ぎ澄まされた演奏は、大衆性とアート性のせめぎ合いのなかから数々の名作を生み出してきたUAの音楽観を体現していた。

 2度のアンコールでは、代表曲の一つである「悲しみジョニー」と1997年のシングル『甘い運命』に収録された千賀かほるのカバー曲「真夜中のギター」が強く印象に残った。前者はジャングルからロックの8ビートと、リズムパターンが変化する攻めのアレンジ、それに対して、後者は聴き手にそっと寄り添うような歌を披露して、この日のライブを締め括った。作品単位で捉えると、UAはその先鋭的な作風が取り沙汰されることが多いアーティストであるが、キャリアを俯瞰するかのようなライブの選曲は彼女の多面性や優れたバランス感覚が際立っていた。10月5、6日には日本橋三井ホールでの久しぶりのホールライブ、そして、2020年にはデビュー25周年の大きな節目が控えている彼女だが、音楽のサイクルが一周した今、多様性を内包したその歌声の魔法にリスナーが立ち返るべき季節が再び訪れようとしている。

(文=小野田雄/写真=田中聖太郎)

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