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『MOTHER マザー』『コンフィデンスマンJP』で真逆のアプローチ 長澤まさみの女優としての真価

リアルサウンド

20/7/9(木) 6:00

 長澤まさみが、今年、デビューから20年を迎えるという。

参考:長澤まさみ×阿部サダヲ×奥平大兼の3人が挑んだ難役の裏側 映画『MOTHER マザー』を語り合う

 もうそんなに経つのかという感慨深さと同時に、歳を重ねるごとに魅力的になっていく、その変化にも驚く。33歳となった彼女は、今や映画、ドラマ、舞台を問わず日本のエンタメ界に欠かせない女優のひとりだ。

 この7月はそんな彼女の主演映画が2本公開となる。

 先日公開された映画『MOTHER マザー』は実際に起きた事件を基にしたシリアスな人間ドラマ。社会から孤立し、ひとり息子に異常な執着を見せるシングルマザーという難役に体当たりで挑み、観る者の胸をザワつかせる渾身の演技を見せている。また、7月23日(木・祝)からは新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となっていた『コンフィデンスマンJP プリンセス編』が公開に。TVドラマ、劇場版第1作、スペシャルドラマを経て、2作目の映画まで作られるほどの人気を獲得した本作。長澤演じるダー子は天才的な頭脳を武器に悪徳企業のボスなどから大金をだまし取る詐欺師チームのリーダーだ。完璧な仕事ぶりとは裏腹にエキセントリックな言動で周囲を振り回すキャラクターは、彼女のコメディエンヌとしての顔を世間に広く知らしめたことだろう。同月の間に“陰と陽”のふたつの顔でスクリーンに登場する長澤まさみ。改めてその魅力を紐解いてみたい。

 12歳、史上最年少で第5回(1999年度)東宝「シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、華々しいデビューを飾ると、同年(2000年)にはもう『クロスファイア』で映画デビュー。東宝が発掘した大型新人として大々的に売り出された。広くその名を知られるようになったきっかけの作品と言えば、2004年公開の『世界の中心で、愛をさけぶ』だろう。長澤は本作で白血病に冒された抱えた少女・亜紀を演じ、スキンヘッドも辞さない熱演ぶりで注目を浴びた。健康的で溌剌としたビジュアルは『タッチ』や『ラフ ROUGH』などの青春ドラマや『プロポーズ大作戦』(フジテレビ系)などのラブコメでも存分に活かされ、数多くの作品で主演を務める。

 20代になると、それまでのどこか清純派なイメージを覆すかのようにさまざまな役柄に挑戦。『曲がれ!スプーン』ではドタバタコメディに、『モテキ』ではエロかわいさを爆発させ、『嘘を愛する女』ではしっとりとした大人の色気を匂わせるなど、ジャンル問わず大活躍を見せる。また、この頃の長澤は『奇跡』で演じた小学校教師や大河ドラマ『真田丸』(NHK)の信繁を慕う幼なじみ役など脇役でもキラリと光る存在感を放っていたのが印象的だ。そして迎えた30代。『マスカレード・ホテル』の立ち姿から発する凜としたオーラはスクリーンで際立っていたし、『キングダム』で太もももあらわに鮮やかな殺陣を披露するシーンは観客を釘付けにした。そして当たり役となった『コンフィデンスマンJP』のダー子は、長澤が演じたことでここまで血肉の通ったキャラクターになったのだと心底感じる。幼くして演技の世界に飛び込み、ひらすらに第一線を駆け抜けてきた彼女の、30代はおそらく深化のときとなるだろう。

 長澤まさみの演技を見て感じるのは、カンの良さ、もとい度胸の良さだ。的を定めたら真っ直ぐに突き進んでいくような、どこかアスリートめいた演技スタイルの人のように思う。抜群のスタイルと整った顔立ちは彼女の武器のひとつだが、どう効果的に使うかについて感覚で理解し迷いがない。時にはこちらをドキッとさせるようなギャップも織り込みながら、堂々と画面の中に存在している。やはり、天性の女優なのだと思う。そしてそんな感度の高さは、ティーンエイジャーから大人の女性へとしなやかに脱皮していくなかで、ますます研ぎ澄まされてきている。『MOTHER マザー』、『コンフィデンスマンJP プリンセス編』と、真逆のアプローチの作品が偶然にも同時期に公開される今こそ、長澤まさみの女優としての真価を改めて見つめ直す機会ではないだろうか。(渡部あきこ)

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