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8人の現代美術家とアール・デコ建築とが響き合う 『生命の庭』展が東京都庭園美術館にて開催中

ぴあ

20/10/20(火) 12:00

山口啓介の《香水塔と花箱》

東京都庭園美術館で、10月17日より『生命の庭 8人の現代作家が見つけた小宇宙』が開幕した。この展覧会は、現代美術をテーマにした同館では久々の展覧会。2021年1月12日まで開催される。

東京都庭園美術館入口

本展は、8名の作家たちの作品を通して、人間と自然との関係性について問い直すことをテーマとしたもの。

特に、旧朝香宮邸である本館での展示は、1933年の竣工当時に大流行していた、アール・デコ様式の室内装飾と展示作品とが共鳴しあい独特の雰囲気を作り出しており、この美術館でしか見ることができないものだ。

淺井裕介《混血─その島にはまだ言葉がありませんでした》

館内に入って最初の展示室となる大広間では、淺井裕介による力強く巨大な泥絵の作品が観客を待ち構える。

山口啓介の《香水塔と花箱》

そして、庭園美術館のシンボルとしても親しまれている香水塔の背後に山口啓介の《香水塔と花箱》が置かれる。山口が制作する花や種子を天然樹脂で固めた「カセットプラント」の作品は、優しく降り注ぐ陽光の下では、さらに輝きを増している。

加藤泉《無題》(2020)を窓越しの緑が引き立てる

大食堂には加藤泉の作品が並ぶ。同館、特に大食堂は壁紙や壁画、ラジエーターグリルなどどれも個性が強く、独特の雰囲気のある部屋であるものの、加藤の作品は空間と見事に調和しており、作品だけでなく国の重要文化財に指定された建物も細部まで改めて鑑賞したくなってくるのがおもしろい。 加藤の作品は2Fベランダや、正面玄関など、館内のいろいろなところに配置されており、それを探し出すのもまた楽しい。

大食堂は背後にも加藤の作品が。加藤泉《無題》(2020)
ベランダにも加藤泉《無題》(2020)
入り口では狛犬と一緒に加藤泉の作品がお出迎えしてくれている。

ガラスを使い、菌や細胞などのモチーフの作品を作る青木美歌。青木の作品は本館小客室や新館にも展示されており、置かれた場所で作品の見え方が大きく変わることに驚くはず。

青木美歌のガラスの作品。床に投影された作品の影もエレガンス
小客室で展示されている青木美歌の作品《光に始まる 光に還る―Wonder》

今年2月に逝去した康夏奈は、海や宇宙、自然をモチーフにした新作を構想していたという。本展では過去に制作した彼女の作品を展示する。

朝香宮寝室の康夏奈《Cosmic Cactus》シリーズ
若宮寝室に展示されている康夏奈《Panoramic Forest, Panoramic Lake》

志村信裕の《光の曝書(メンデルスゾーンの楽譜)》は、朝香宮が実際に所有していたメンデルスゾーンの楽譜に、建物の外にある庭園で撮影した映像を投影した幻想的な作品。建物の過去と現在を結びつける。

朝香宮が実際に使用していた書斎に展示されている志村信裕の《光の曝書(メンデルスゾーンの楽譜)》
《光の曝書(メンデルスゾーンの楽譜)》 朝香宮もこの楽譜を見ていたのだろうか。

2階広間にあるのは床置きの絵画で知られる小林正人の作品。枠を作り、キャンパスを貼りつつ絵を描く小林の作品は、建物に差し込む光により神々しさも帯びている。

小林正人《Unnamed #66》
小林正人《名もなき馬》

そして、各地の風景や伝統的な文様を着想源とする佐々木愛の白一色で描かれた漆喰の作品。こちらも陽の光によって影の向きが変わり、受ける印象が大きく異なるのが興味深い。可能であれば、朝と夕、晴天や曇天、雨天で見え方がどのように変わるのかを確かめてみたい。

佐々木愛《鏡の中の庭園》
佐々木愛《鏡の中の庭園》部分

8名はそれぞれのスタンスで、朝香宮邸という空間とテーマに向き合い、作品を構成している。現代美術作家がなにに興味・関心を抱いているのかを、建物を通して知ることもできる。好奇心を刺激される展覧会だ。

ちなみに、本展は階段の踊り場や頭上の壁など、展示室以外にも作品が展示されており、それも見どころ。突然ひょっこりと作品に出くわすと驚きと嬉しさがこみあげてくる。

取材・文:浦島茂世

【開催情報】
『生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙』
2020年10月17日(土)~2021年1月12日(火)、東京都庭園美術館にて開催
https://www.teien-art-museum.ne.jp/

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