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NHKテレワークドラマはいかにして生まれた? 見どころは“貢献度120%”の俳優たちの熱演

リアルサウンド

20/5/4(月) 10:00

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、多くのドラマ・映画が、製作中止を余儀なくされている。改めてドラマ・映画、およびエンタメが私たちの生活にかけがえのないものだったと感じている方も多いのではないだろうか。

参考:『今だから、新作ドラマ作ってみました』予告編

 まだまだ先行きも不透明な状況ではあるが、新しい試みも徐々に生まれてきている。その中でも製作発表時に話題を呼んだのが、5月4日から3夜にわたって放送されるドラマ『今だから、新作ドラマ作ってみました』(NHK総合)だ。

 打ち合わせやリハーサル、本番収録も、直接会わずに行う、完全テレワークによる作品。地上波で放送されるドラマとしては、本作が初の試みとなる。連続テレビ小説『ごちそうさん』、大河ドラマ『おんな城主 直虎』の制作統括を務め、現在はNHK編成局編成センター副部長を務める岡本幸江氏は、製作の経緯について、次のように語る。

「ロケーションでの撮影、スタジオでの収録を断念せざるを得なくなり、新たな番組を作り続けることが難しくなっていましたが、少しでも皆様の“心を温める物語”を新たに届けることができないかと考えていました。そんな状況の中、『直虎』でもお世話になった脚本家の森下佳子さんに相談し、『直虎』の俳優陣にも声をかけたところ、すぐに『協力したい』と返事をもらいました。そこから若手を中心に次々とチームがまとまり、製作が決まりました。最初の案が浮かんだ4月上旬から、ゴーサインが出るまでに1週間はかかっていないです。そこから脚本のプロットができるまでに数日、俳優部にオファーを出して数分後にOKをもらう、その後1週間で脚本ができて、企画から2週間後には撮影開始というスピード感でした。俳優の皆さんも『面白いからやりたい』『何か自分もできないかと考えていた』と志を共有してくれたのが本当に大きかったです」

 撮影に使用できるカメラは1台。しかも、カメラマンは俳優自身。当然、ズームショットやロングショットを自由自在に使えるわけではなく、カメラではなく俳優自身が動かければいけない。撮影機材の問題から打ち合わせまで、実際に準備をし始めると予想以上の困難があったという。

「技術的には困難だらけでした。カメラアングルも自由自在にできるわけはなく、限られた状況の中で俳優部にお任せするしかありません。細かくサイズを変えられるわけでもないので、できるだけシンプルに撮らないといけないという演出上の制約もありました。脚本家の皆さんも、書いてはみたものの映像としてどんなものが出来上がるかまったく予測できなかったようです。普段の撮影で使用しているカメラ、照明を用意することはできないので、どのレベルのカメラを用意するのかというのは、撮影前にもかなり議論しました。俳優部とはオンラインでコミュニケーションを取りながら準備を進めていたのですが、土日はスムーズにつながっても、平日は皆さんもテレワークをしているからなのか、回線が固まってしまうこともあり(笑)、予期せぬトラブル続きで常に手探り状態でした」

 第1夜(5月4日)「心はホノルル、彼にはピーナツバター」 には満島真之介と前田亜季、第2夜(5月5日)「さよならMyWay!!!」には小日向文世と竹下景子、第3夜(5月8日)「転・コウ・生」 には柴咲コウ、ムロツヨシ、高橋一生が出演する。第2夜は『70才、初めて産みましたセブンティウイザン。』(NHK総合)チーム、第3夜は『直虎』チームが再び集まった形だが、第1夜の満島と前田はこれまで対面したことはなく、本作が初めての共演だったという。

「満島さんと前田さんは、『結婚式が中止になった婚約中のカップル』という設定を演じきれる俳優ということで、演出部がかつて一緒に仕事をさせていただいた繋がりからオファーしました。コロナ収束後に直接会うことを楽しみにされていましたね。今回は衣装・ヘアメイクにはじまり、カメラアングルの調整、録画とすべて俳優自身が行っています。撮影をしながら提案も常にしてくれて、俳優部以上の仕事をしてくれました。撮影後は『ヘトヘトになった』と皆さん話していましたが、本当に俳優部には助けてもらいました。前例があるものではなく、初めての挑戦であり、やってみるまで分からない企画にみんなが飛び込んでくれた。俳優の貢献度が120%の企画です。この恩はいつかしっかり返したいと思っています」

 最後に、本作に込めた想いを岡本氏は次のように語る。

「不安な気持ちになるときに、少しでもいろんなことを忘れて笑ったりすることが必要だと思っています。私自身の人生を振り返っても、そうやって多くの物語に支えられてきました。視聴者の皆さんにとっても、本作が少しでも心が温かくなるものになればと願っております」

 豪華俳優陣が集結し、超短期間で製作された本作。岡本氏によると、これからの状況次第ではあるが、ノウハウをため、今後もテレワークドラマの製作を行う可能性はあるという。コロナ禍の状況下の今だからこそ生まれる新しい表現、そしてエンタメの力を、本作を通して感じてみてはいかがだろうか。(取材・文=石井達也)

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