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King Gnu、Cö shu Nie、Ivy to Fraudulent Game……“白と黒”で魅せるバンドの新作MV

リアルサウンド

19/3/30(土) 8:00

 今年2月に配信リリースされた、King Gnuの最新曲「白日」。TVドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)の主題歌にも抜擢されたこの曲のMVが、今話題を集めている。

(関連:King Gnuはポップミュージックの価値基準をひっくり返す 「白日」から楽曲のユニークさを解説

 常田大希(Gt/Vo)が代表を務めるクリエイター集団・PERIMETRONが手掛けるKing GnuのMVは、極彩色を基調とした毒々しいアートワークが特徴的だ。しかし、今作では全く様相を変えた、白黒のシリアスな映像が印象的である。

 King Gnuをはじめ、2019年要注目のロックバンドが“白と黒”を基調としたシリアスな世界観のMVを立て続けに公開している。今回はその一部を紹介したい。

■Cö shu Nie「絶体絶命」

 TVアニメ『東京喰種:re』(TOKYO MXほか)のオープニングで昨年注目を集めたCö shu Nie(コシュニエ)。TVアニメ『約束のネバーランド』(フジテレビ系)のエンディングにも抜擢された「絶体絶命」のMVは、“白”が基調の映像が印象的だ。

 KEYTALKの「ASTRO」やゲスの極み乙女。の「戦ってしまうよ」などのMVを手掛ける田辺秀伸がディレクターを務めた今作。時にトリッキー、時にシンプルな世界観でバンドの個性的な存在感を引き出す田辺らしい、シンプルでありながら詩的なモチーフが散りばめられた映像になっている。

 特に象徴的なのが、白い衣装で枯れた花に囲まれて演奏するメンバーが、曲の途中で子供の姿になるシーン。さらに、最後のワンカットでメンバーの靴だけが残される。これは、〈時間が証明するだろう〉〈明日を掴むために/絶望を駆け抜けろ〉といった歌詞に込められたメッセージを暗喩的に表現しているようだ。

 アニメ『約束のネバーランド』のストーリーにもリンクするテーマである、“時の流れ=成長”と“閉塞感からの脱出”を表現した、美しいMVだ。

■Ivy to Fraudulent Game「低迷」

 今夏ミニアルバムのリリースも決定しているIvy to Fraudulent Gameが2月に公開した「低迷」は、シングル『Memento Mori』のカップリング曲。“白黒”の映像が印象的なこのMVには、寺口宣明(Vo/Gt)だけが登場し、他のメンバーは姿を見せない。

 台の上に寝かされ、ビニールをかぶせられた状態で歌う寺口の姿は、〈半透明のこのビニールじゃ 見透かされそうになって〉という歌詞を比喩的に表現しているようだ。

 MVのワンコーラス目が終わる頃、曲が止まり時計の秒針の音だけが聞こえるパートが訪れる。その間見えているのは、ビニールの中でもがくように伸ばされた寺口の指先だけだ。それはまるで、寺口が20歳の頃に抱え続けていた虚無感や無力感を表現したという楽曲のメッセージを、暗黙のうちに伝えようとしているように見える。

 MVを手掛けた三石直和は、「低迷」が収録されたシングルの表題曲「Memento Mori」をはじめ、illionの「BANKA」、=LOVEの「手遅れcaution」など、映画的な映像を得意とするディレクターである。楽曲の中に込められた、「苦悩・虚無感から少しずつ脱皮していく様」を表現した映像展開や、その物語の主人公を演じる寺口の繊細な表情や仕草が印象的なMVだ。

■King Gnu「白日」

 冒頭にも触れたKing Gnuの最新曲「白日」のMV。演奏するメンバーの姿を淡々と映し出したその映像は、「Slumberland」をはじめとする今までのKing GnuのMVと比べると随分とシンプルに思える。

 中でも印象的なのが、ワンカット目の白い背景に佇む、白い衣装の井口理(Vo/Key)の横顔だ。一目見て、その狂おしい歌声を耳にした瞬間、“白”のイメージがリスナーの脳裏を支配するだろう。

 井口の姿は、〈真っ白に全てさよなら/降りしきる雪よ/全てを包み込んでくれ〉といった歌詞の“雪”のイメージ、そして“白日”というタイトルのイメージを想起させる装置としての役割を担っている。2番サビの後の、身体を反らせるようにしてロングトーンを聴かせる姿は、まるで祈りのようにも見えるほどだ。

 MVを手がけるPERIMETRONは、楽曲の世界観をより的確に表現することを徹底し続けてきた。極彩色のイメージが強い映像ももちろんその表現を徹底した結果であり、「白日」もまた同様である。楽曲のメッセージをより的確に表現するために、今回は“白黒”という色調が最も適切だったのだろう。

 そのほかのMVの映像も同様に、ミュージシャンの持つ確固たる世界観を的確に汲み取り、楽曲やミュージシャン自身の魅力を最大限に引き出すために選び抜かれたモチーフや色調が印象的な、美しい映像ばかりである。

 バンドの楽曲に通底する世界観を伝えるために、MVはとても大きな役割を担っている。動画が音楽と出会うきっかけとして大きな存在感を放つ昨今、その役割はより大きなものになっていることだろう。バンドならではの物語がぎゅっと詰め込まれたMVに、今一度改めて注目し直してみてはいかがだろうか。(五十嵐文章)

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