Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ナイロン100℃『イモンドの勝負』ケラリーノ・サンドロヴィッチ×大倉孝二インタビュー

ぴあ

ケラリーノ・サンドロヴィッチ×大倉孝二  撮影:江隈麗志

続きを読む

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)率いる劇団「ナイロン100℃」が約3年ぶりの新作上演、しかも劇団のホームグラウンドとも言うべき下北沢・本多劇場と聞いて、期待に胸が高まった演劇ファンは多いはず。そこで、作・演出を務めるKERAと主演・大倉孝二のふたりに公演への思いを聞いた。

「今回はもう、コメディでなくなってもいいかという覚悟で臨むつもりです」

――出演者の最初に大倉さんの名前がありますが、大倉さんが演じられるキャラクターが中心の物語と想像していいでしょうか。

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA) 今のところ、大倉が完全な主役ですね。主人公が何らかの勝負をして勝ち進んでいく、しいて言えばスポ根的な要素を考えています。まだ決まっていないことばかりだけれど、気が変わらない限り、そうだと思います。

――「イモンド」というのは人名ですか?

KERA まだ秘密です。

――大倉さんは今回の座組を見て、どう思いましたか?

大倉 知っている人しかいないんでねえ。強者ぞろいで、本気を出したら本当に厄介(笑)。すごく疲れそうですね。

――3年ぶりの劇団新作ですが、おふたりにとって劇団とはどのような場所でしょうか。

大倉 最初は活動のほとんどが劇団公演でしたし、自分の活動そのもの。今は演劇だけでなくテレビや映画に出させてもらっているので、改めて自分の血筋を確かめる場、里帰りのようなものになっていますね。

KERA 最近は、劇団公演も数年に1回になりましたからね。当たり前ですけど、自分が集めた人たちなので、前提として自分の作劇にとって戦力になってくれる役者ばかりが集まってます。外部での1か月の稽古ではできないことをできる集団であることが、大きな違い。それに何十年も苦楽を共にしてきたので、同志意識みたいなものもありますね。

――その長いおつき合いの中で、印象的なエピソードを教えていただけますか。

KERA 大倉と出会った頃の印象は「でっかいヤツだ」。オーディションでドアに頭をぶつけて帰って行ったっていうのが、彼との原風景です。

大倉 (劇団は)仲が良くてずっと一緒にやっている、というものでもないですからね。僕はどちらかというと、KERAさんだけじゃなく先輩たちに怒られた思い出が多いですよ。

KERA みんな上履きを用意しているのに、裸足で歩いて怒られたりしてた。

大倉 素足でトイレに入って、KERAさんに怒られましたもんね。今思えば、僕もそんなヤツ嫌だわ(笑)。

――客演で赤堀雅秋さん、山内圭哉さん、池谷のぶえさんも出演されますね。

KERA 赤堀くんは一番未知数です。役者としての引き出しはわかっているつもりだけど、ナンセンスをやっている姿は観たことがない。楽しみですね。圭哉と池谷はナンセンス的なスキルもあるし、何でもできる。充分な戦力になってくれる客演陣ですし、劇団員も触発されるでしょうね。

――今回はナンセンスコメディということですが。

KERA 僕はもともと、ナンセンスな笑いをやりたくて芝居を始めた人間。近年は古田新太くん、大倉、犬山(イヌコ)たちとそういう芝居をやりましたが、劇団では久しくやっていなかった。今回、自分を突き動かすものがあった訳でもないし、原点に返るとか強い意志があった訳でもないけど、定期的にトレーニングしないとナンセンスって書けなくなるんです。だから久し振りにね、やってみようかと。

――ナンセンスコメディを創るというのは、すごく難しい作業ではないかと思います。どのように進めていらっしゃるのでしょう。また大倉さんはそれを体現するために、どのように挑んでいらっしゃるのでしょうか。

KERA ナンセンスって、常識的な世界の中におかしな人がいるのではなく、世界観自体が狂っている。書き手としては、まず、その狂っている世界観を自分の基準値とするところから始まります。しかも、ある沸点以上に達してしまうとナンセンスではあっても笑いにならなくなってしまう。例えば筒井康隆の小説は、初期のナンセンスな短編は笑いにつながるけれど、後期の長編はむしろ前衛性や実験性が際立つ。同じナンセンスでも年齢と共に書きたいものや書けるものは変わりますしね。

我々はコメディという制限の中で言うとナンセンスの極北までいったと思います。その後、ブルー&スカイや地蔵中毒といったナンセンスを主体にした舞台を創る奇特な人たちが出てきた。でもやっぱり、彼らと僕では違いますから。僕の場合、物語を構築していく創り方ではなく、「何かが狂った世界の中で、何が面白いか」を探って、それを物語としてでっち上げていくっていう創り方をしています。今回はもう、コメディでなくなってもいいかという覚悟で臨むつもりです。

大倉 僕は「どうやったら面白くなるか」以外、特に考えることはないですね。脈絡がないので突然訳のわからない境地に達しないといけないから、だいぶしんどい。でも、それが面白いんだと思います。

――「だいぶしんどい」というのはなぜ?

大倉 悪ふざけというのは、興が乗った時にやるものですよね。でも全然興が乗っていない時に、しかも毎日、いい歳をしてやらなきゃいけない。若い頃は、自分を盛り上げたり、周りもワイワイ盛り上がってから出ていく、なんて時もありました。今は病院の待合室みたいにしーんとした楽屋から、みんなのっそり出ていく。それで突然ふざける。それがしんどくもあり、楽しくもあるんでしょうね。



取材・文:金井まゆみ 撮影:江隈麗志



ナイロン100℃『イモンドの勝負』チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2184061

アプリで読む