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いま、最高の一本に出会える

左から岡田利規、ウティット・ヘーマムーン。

「プラータナー」原作の刊行記念でウティット・ヘーマムーンと岡田利規が対談

ナタリー

19/6/23(日) 14:54

昨日6月22日、東京・ジュンク堂書店 池袋本店にて「『プラータナー 憑依のポートレート』(河出書房新社)刊行記念 ウティット・ヘーマムーン×岡田利規 トークイベント」が開催された。

これは、6月24日に発売されるタイの作家ウティット・ヘーマムーンの小説「プラータナー 憑依のポートレート」の出版を記念し、2018年に同作を舞台化したチェルフィッチュの岡田利規とヘーマムーンが作品について語るイベント。まず岡田が、日本語出版に対する思いをヘーマムーンに尋ねると、ヘーマムーンは「とても興奮しています。僕はずいぶん徳を積んできたのだな、と(笑)」と笑顔を見せる。続けて岡田は、ヘーマムーンとの出会いやなぜ「プラータナー」を舞台化しようと思ったかなどを語り、「僕たちはタイの状況や政治と密接に生きているわけではありませんが、この作品には我々にとっても重要なことが書かれている。だから翻訳される意義があると思ったし、僕にとって演劇化する価値があると思いました」と説明した。

ヘーマムーンは「小説を書き始めて10年くらいになりますが、最初は登場人物の自我の二面性に興味がありました。それが近年は、登場人物に社会がいかに投影されるのかということに興味が変わってきて、それがこの作品につながりました」と話すと、岡田は「そこが興味深いなと思いました」と頷き、「タイのトンチャイ・ウィニッチャクンさんが『地図がつくったタイ─国民国家誕生の歴史─』で提唱した“地理的身体(ジオボディ)”という概念がありますが、それがこの作品には投影されている。国家を1つの身体であると捉える考え方は私にとってもすごく有効でした。演劇は身体を使いますから。なのでクリエーションでは、どうしたら地理的身体を俳優の身体に関連付けていけるかを課題に取り組みました」と語った。

さらに岡田が「この小説に書かれているタイは、日本人が思う一般的なイメージの中にあるタイとは違うものが描かれていると思う。それを読むことはショッキングかもしれないし、面白いことだとも思います」と話すと、ヘーマムーンは「もちろんこの小説には、タイの政治の話や地理的身体が隠れてはいます。が、ソープオペラ的と言いますか、フォーカスが当たっているのは1人の人間の、3つの時期における恋愛の話なんです……って話したほうが面白く聞こえるでしょう?(笑)」と茶目っ気のある笑顔を見せる。これを受けた岡田が「実際にすごくエロい小説です(笑)。もうちょっと“エロくない”恋愛の書き方もあったのでは?」と斬り込んでいくと、ヘーマムーンは「タイの文学では、性的な場面でも直接的な表現を避け、芸術的で抽象的な表現を好みます。この作品では、一般的な小説では絶対に使われないような、粗野で直接的な言葉で表現してみようと思いました。教育を受けた中産階級の言葉ではなく、道端に転がっているような言葉も取り戻していこうと。と言うのも、タイの出版界は20・30年前くらいまで知識層や富裕層の言葉が占めていて、社会の周辺にいるような“小さな人たち”の声が出てこなかったんです。でもこれからは小さな人たちの声を伝えるための文学が必要になってくると思いました。タイ社会で小さなタイ人の声を伝えることが大事だと思ったんです」と真摯に述べた。

トークの最後には、来場者からの質問が受け付けられた。その1人として、「一言、感想を申し上げたいのですが……」と、タイ文学の研究者である宇戸清治が挙手。社会構造を捉えた“全体小説”で知られる、戦後派の作家・野間宏の「青年の環」を引き合いに出しながら、「ウティットさんは、日本では消えてしまった全体小説の作家ではないか」と指摘する。さらに「タイの状況を考えると、ウティットさんの過激な作風が心配です」と身を案じつつ、「このままずっと活動を続けていかれれば、10年、20年後には東南アジアで初めてのノーベル文学賞作家になるのでは」と期待を語ると、岡田も「期待しています」と続き、ヘーマムーンはワイ(合掌)で答えた。

「プラータナー:憑依のポートレート」の日本公演は6月27日から7月7日まで、東京・東京芸術劇場 シアターイーストにて。今回の日本公演は、国際交流基金アジアセンターが主催する、日本と東南アジアの文化交流の祭典「響きあうアジア2019」の一環として行われる。また6月28日には、公演記録集「憑依のバンコク オレンジブック」(ウティット・ヘーマムーン+岡田利規)が白水社から発売。さらに7月2日には東京・ゲンロンカフェにて、「憑依のバンコク オレンジブック」の出版&東京公演開催記念イベントが実施され、ヘーマムーン、岡田、そしてタイ文学研究者・翻訳・通訳者の福冨渉が登壇する。

ウティット・ヘーマムーン×岡田利規×塚原悠也「プラータナー:憑依のポートレート」

2019年6月27日(木)~7月7日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト

原作:ウティット・ヘーマムーン
脚本・演出:岡田利規
セノグラフィー・振付:塚原悠也
演出助手:ウィチャヤ・アータマート
出演:ジャールナン・パンタチャート、ケーマチャット・スームスックチャルーンチャイ、クワンケーオ・コンニサイ、パーウィニー・サマッカブット、ササピン・シリワーニット、タップアナン・タナードゥンヤワット、ティーラワット・ムンウィライ、タナポン・アッカワタンユー、トンチャイ・ピマーパンシー、ウェーウィリー・イッティアナンクン、ウィットウィシット・ヒランウォンクン

公演記録集 刊行記念トークイベントとして、ウティット・ヘーマムーン×岡田利規×福冨渉 司会=上田洋子「舞台と小説の交感ーー『プラータナー:憑依のポートレート』『憑依のバンコク オレンジブック』出版&東京公演開催記念」

2019年7月2日(火)
東京都 ゲンロンカフェ

出演:ウティット・ヘーマムーン、岡田利規、福冨渉
司会:上田洋子

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