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『スカーレット』人情喜劇として秀逸な展開に 喜美子の夢のために母・マツが奔走

リアルサウンド

19/11/14(木) 12:00

 丸熊陶業にて、絵付師の仕事という新たな“自分のやりたいこと”を見つけた喜美子(戸田恵梨香)。しかし喜美子の強い想いは伝わらず、涙を流すことになり、そんな彼女を信楽から訪れたちや子(水野美紀)が慰めた。

【写真】戸田恵梨香インタビューカット

 連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第40話では喜美子の絵付けへの思いを知った母・マツ(富田靖子)が、どうにか絵付けを学べないものかと奔走。結果、父・常治(北村一輝)と一戦交えることとなった。

 丸熊陶業でのある朝、喜美子はやかんを手に絵付けの工房へ。ところが、「深野先生(イッセー尾形)が集中しているから」と、中から弟子の一番と二番が出てくる。喜美子はことの重要さを察し、素直に従うが、そこに居合わせた照子(大島優子)はまったく意に介さない様子。そんな照子の存在もあってか、喜美子は一人、やかんの交換を口実に工房の中へと足を踏み入れるのだ。

 その先で集中している深野は、「ああぁぁぁー」「ううぅぅぅー」といった妙な声を出しているではないか。早朝から唸り声が漏れ出る工房。なかなかのホラーである。そこで喜美子は深野へ近づき、驚愕の表情を見せるのだが、実際に深野がどんな姿であったのかは私たちは見ることができなかった。だが喜美子のあの表情からして、想像を大きく超えるものがそこにあったのだろう。いずれ私たちも見ることができる日がやってくることを、楽しみに待っていたいところだ。

 一方、喜美子の切実な想いをしかと受け止めた母は、愛娘のため、絵付けの修行場探しに奔走。友人の陽子(財前直見)の協力を仰ぎ、喜美子が無理なく絵付けを学べる場を見事に探し当てる。テンションの上がる母だが、最後に超えなければならないハードルがある。頑固オヤジ・常治の説得だ。

 母は娘のため、父を口説き落とす作戦を意気揚々と語ってみせる。その作戦とは、酒を飲ませて気持ち良くなったところを狙い打つというもの。なんとも狡猾な作戦に思えるが、普段の常治はまったく話の通じない相手。これくらいのことでもしないと、太刀打ちしようがないのである。

 そうこうしているうちに常治が帰宅。いつにもまして陽気である。なぜならそう、彼は喜美子の見合い相手(石田明)を連れてきたのだ。まったくなんて身勝手な! そう叫ばずにはいられない。そして事態はさらに「まさか」の方へ展開。見合い相手と初対面である喜美子には、そもそもこれっぽっちもそんな気はないのだが、まさかの「心に決めた人がいる」「ごめんなさい」と一方的にフラれてしまうだ。常治が一人で先走ったせいで、傷つかなくて良い人たちが見舞われた惨事。喜美子が不憫で仕方がない。

 これには父娘のバトルが勃発しても、なんら不思議ではない。しかしそこへマツが、例の作戦を決行しようと二人の間に割って入ってくる。下手に出て、酒を勧めながら、喜美子の絵付け修行の承諾を得るのだ。ところが、酒瓶の中は水。喜美子が妹の直子(桜庭ななみ)に、“酒飲み親父をだます生活の知恵”として伝授し仕込んだものだが、泥酔状態ならともかく、今日の常治は素面である。当然ブチ切れ、必殺技“ちゃぶ台返し”を繰り出そうとする。だが、喜美子が素早く応戦し、ちゃぶ台を押さえつける。 時代性や古い価値観といったものが透けて見える一連の場面だが、人情喜劇として実に秀逸であった。どうなることやら。

(折田侑駿)

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