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古典的SF小説の“その先”を描く。『日本沈没2020』監督が語る

ぴあ

20/7/16(木) 12:00

『日本沈没2020』

小松左京の伝説的な小説『日本沈没』が、Netflixオリジナルアニメ『日本沈没2020』として映像化され、全世界で配信されている。『きみと、波にのれたら』などの映画や、『映像研には手を出すな!!』『DEVILMAN crybaby』などシリーズ作品も数多く手がける湯浅政明が監督を務めており、原作の世界観や流れを踏襲しながら、過去の湯浅作品にも通ずる部分のある作品に仕上がった。

本作の舞台は、2020年。ある日、日本に巨大地震が発生し、人々は大パニックに。先の見えない未曾有の危機の中で人々が懸命に生きる姿を、ある一家を中心に描き出していく。

小松左京の原作は日本SF小説の古典といってもいい作品で、これまでも繰り返し映像化されてきたが、湯浅監督は「まさか自分が『日本沈没』をアニメでやるとは考えたことがなかった」と振り返る。

「でも、今までに自分がやったことのないジャンルにはやはり興味があって。その前にいくつか企画をやっていたんですけど、どれも“映像化は難しい”というもので、『日本沈没』も同じく映像化が難しいものなんですけど、きっとできるし、そのやり方を考えるのが面白そうだなと」

これまでの『日本沈没』は、巨大な災害や危機に、学者や政治家、深海調査艇の操縦士たちが立ち向かっていく物語だったが、本作は都内で暮らす平凡な一家が主人公として描かれる。

「小松左京さんの小説はいま思うと、地震のメカニズムだったりが一般の人に浸透するきっかけになった作品だったのかなと思います。小説の先を小松さんはその時点では描ききれなくて、のちに共著で描かれていますけど、今回の作品に関してはひとつの家族を主役にするのであれば、その先が描けると思いましたし、今だからこそ『日本沈没』をその先まで描く意味があるのかなと」

過酷な状況の中で主人公たちは選択を迫られ、決断し、時に大切な人間を失い、それでも止まらずに前に進んでいく。明確な正解がわかりにくくなってしまった現代で、本作が描くドラマは小説の刊行時よりも切実な物語として受け止められるはずだ。

「正解を出すことが重要ではあると思うんですけど、逆にそこを求めすぎるあまり混乱している人は多いのかな?とも感じます。要は自分がその選択に納得できるかだと思うんですよね。もし、悪いことが起こっても自分が選んだ結果ならば納得するだろうし、危ないし失敗するかもしれないけど“自分が選んだ”という確信があれば、それでいいんじゃないかと思うんです。違うと感じたならば、そこで改めて対応すればいいわけですし……そういう考えが基本的にあるんだと思います」

他人から見たら無謀な選択であっても、どんな結果が待っていようとも、人は自分が納得した選択によって前進していく。それは湯浅監督のデビュー作『マインド・ゲーム』から繰り返し描かれてきたテーマでもある。

「たぶん、そういうことも描きたいのかもしれないですね。『マインド・ゲーム』もそういうことが描かれているんですよね。“あなたの人生はあなたが選んだ結果”だと」

なお、湯浅監督は作品をつくる上では「いつもこれがベストだと思って選択している」と語るが、一方で他のスタッフや演出家たちと共同で作業していくことにも積極的だ。

「映画だとひとつにまとまることが大切なので、できるだけ中心にいて自分でやろうとするんですけど、テレビシリーズはひとりで監督するのはかなり困難ですし、逆に集まった人たちの様子が見られるので、任せられるところはできるだけ任せるようにして、フォローできるところはしつつ、集まった人たちの意見が入って作品が膨らんでいくのが面白さだと思っています。集まった人の中には将来、大活躍する力のある人がいるかもしれないですし、まだまだ駆け出しの人にお願いして、その才能がどうやったら成立するのか考えるのも楽しい作業ではあるんです。

最初は自分で絵を描きたい方だったんですけど、テレビをやるようになって、テレビだとたくさん経験できるし、やっているうちにそういうかたちも楽しくなってきたんですよ。シリーズだからこそ語れるものがあり、いろんな才能を見られる場でもある。それに人とやってもそれは“異物”ではないんですよね。自分では思いつかないようなものを取り込むことで、また自分も進化して行く。それも面白いんです」

本作でも家族はサバイバルを繰り広げる中で様々な人に出会い、意見を交わし、時に対立し、それぞれが選択をした結果、別の道を歩んでいく。本作は壮大なスケールのパニックもの、SF作品の側面もあるが、その根本には人間関係、相互理解の難しさ、選択の重要性 が描かれている。

「『日本沈没』は、何かよくないことが起こった時に根本的な問題が浮かび上がってくる、という話だと思うんです。その上で今回は、その状況からどうやって立ち上がっていくのかを描いているので、少しだけ理想を描いているつもりです」

ドラマ版とも実写映画版とも違う2020年の『日本沈没』はどんな結末を描くのだろうか?

「ネットフリックスで配信されますので、アニメが好きな方にも観てほしいですし、日頃は映画しか観ない人にも観てもらえるといいなと思っています」

『日本沈没2020』
Netflixにて、全世界独占配信中

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