遠山正道×鈴木芳雄「今日もアートの話をしよう」
『本──TAKEO PAPER SHOW 2011』
月2回連載
第10回
19/1/18(金)
鈴木 今回は僕たちが登場したある本を紹介したいと思います。
遠山 僕たちが登場した本? なんだろう。
鈴木 『本──TAKEO PAPER SHOW 2011』。紙の専門商社である株式会社竹尾が毎年開催しているペーパーショウの図録。2011年の展覧会で、紙の本の可能性を拓く本というので刊行したじゃない。
遠山 ああ、78名の識者が選んだ本と、それにまつわる短いエッセイが載ったやつだ。で、我々も選ばれたんだよね。
鈴木 そうそう。で、2011年刊行の図録は、実はすごく人気がある。3分冊になってるんだけど、1冊目は「人間と本」というタイトルで、本とは何かっていうことが綴られてる。『本は「自分自身です」』とか、『本は「隠れ家」です』とか。そして2冊目が「78冊の本」というタイトルで、78名が選んだ本を「原寸」で紹介してて、3冊目が「78人の本」で、みんなが選んだ本とそれにちなんだエッセイが書かれている。どの部分も興味深くて面白い。
僕、実は値上がりする本のソムリエでもあるんだけど、みんなにこの本をススメます(笑)。
遠山 選書家・鈴木芳雄(笑)。
鈴木 そうそう。この本買っとかないと、値上がりするよ、買えなくなるよっていう本を紹介しています(笑)。
遠山 ということは、この本もいま古本屋とかで手に入れとかないと、手に入らなくなる?
鈴木 なると思う。重版しないしね。
遠山 それにしても、これすごく豪華な本だよね。コンセプトもしっかりしてる。この時のコンセプトが、
紙に定着された「物体としての本」の魅力を伝えるコンセプトブック。
本と人との関わりをビジュアルで綴る「人間と本」。
識者78名が選んだ本と、エッセイ78本。
紙の本の未来と、本のデザインの可能性を展望する。
さすが紙の会社が作る本だなって思った。芳雄さんは何を選んだんだっけ?
鈴木 僕は、紙の本でありながら、ハイパーテキストリンクを実践した『テレビゲーム 電視遊戯大全』(テレビゲーム・ミュージアム・プロジェクト編、ユー・ピー・ユー、1988年)。
遠山 ごめん、それはどんな本だっけ?(笑)
鈴木 (笑)。まるでウェブサイトみたいな本。直線的に読み進んでいくタイプの本ではなくて、掘り下げたい部分に向かう仕組みになってる。どういうことかというと、スパイラル綴じで、ページが2段や3段に切り分けられてる。その上、項目をジャンルで分割、各トピックにも記号と番号が振られて、知りたいところ、見たいところにどこへでも飛んでいけるという仕組み。
遠山 まさしくウェブサイトでリンクからリンクへ飛ぶという感じだ。それっていつ出版されたの?
鈴木 1988年。
遠山 その当時にそういう本が出版されるって、めちゃくちゃ画期的じゃない?
鈴木 すごい画期的だった。しかも、ウェブサイトでクリックしてリンク先に飛ぶっていうのは、1990年誕生なんだよね。
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