Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

篠原涼子が最終話で伝え続けた“ムダ” 『ハケンの品格』が描いた“働くことは生きること”の真髄

リアルサウンド

20/8/6(木) 6:00

 初めての派遣切りにあって傷心した春子(篠原涼子)は、長年の夢を叶えて東海林(大泉洋)らの元へ帰ってきた。衝撃のラストで13年ぶりの続編に幕を閉じた『ハケンの品格』(日本テレビ系)の最終話は、シリーズを通して描いてきた「働くことは生きること」というメッセージを改めて強く訴えた。

【写真】変わらない春子(篠原涼子)と東海林(大泉洋)と里中(小泉孝太郎)

 グランドフィナーレに相応しく、第1シリーズから続く東海林や里中(小泉孝太郎)との思い出がギュッと詰まった60分に思わず目頭が熱くなる。高い声で表情を作りスピーチする春子の「数量限定でーす」がまた聞けたこと、そのスピーチが東海林の原稿であること、里中を「甘ちゃん」と呼び喝を入れる姿、社内でプロジェクトを賭けた勝負事をする、仕事のために漁に出ること、それらの全てが『ハケンの品格』が積み上げてきた歴史を想起させた。

 そしてその春子の行動が、実はS&Fを救うスーパー派遣ではなく、血の通った人間の“愛”によって突き動かされていた行動だったことを、私たちは東海林のセリフで改めて認識する。「大前春子はここ(ハート)で動いている人間です」と社長(伊藤四郎)に熱弁をふるう東海林は、誰よりも春子を大切にしていた。だが、13年間、春子への思いを諦めきれずに抱え続けてきたことを吐露するものの、思いは叶うことはなかった。

 一方で里中は、春子にプロポーズしたと思いきや、本人にはそんなつもりはなかったようだ。これには春子もなんだか残念そうな表情を浮かべた。普段はキレの良いツッコミで正社員にさえもどんどん切り込んでいく春子だが、こと恋愛となるとなかなか前へは進めない。里中に対しても、東海林に対しても、最終的な答えは出さなかったものの、「友情」と「愛情」を併せ持った特別な感情を抱いていたのではないかと思えた。

 春子は恋愛について、「人間だけができるムダなこと」とAIとの比較を用いながら東海林と里中に諭す。AIとの囲碁勝負で「ムダ」という文字を碁石で打って、定時退社した春子に言わせると、失敗や悩み、恋する感情は人間特有の「ムダ」だと言う。しかしムダこそが、実は人と人の絆を強固にする重要なものなのではないだろうか。

 そしてムダを繰り返しながら、また前を向き、走り出す姿こそ、「働くことは生きること」の真髄なのだろう。『ハケンの品格』は様々な働き方が広まりつつある今の日本で、「働くこと」と向き合うきっかけを与えてくれる作品だったように思う。

 一時は多くの社員がリストラの危機にあったS&Fの仲間たちだが、その後の歩みは様々だ。浅野(勝地涼)、東海林は課長となりマーケティング課を牽引している。宇野(塚地武雅)と三田(中村海人)もS&Fに残り、職務を全うしていた。里中は独立し、お惣菜の会社Ajiを立ち上げる。派遣社員でS&Fにいた亜紀(吉谷彩子)と小夏(山本舞香)は正社員としてAjiに入社、井手(杉野遥亮)も“念願”の派遣社員として共に働く。

 それぞれが思い描く「仕事」に従事し、顔を綻ばせていた。そして派遣切りにあってしまい、涙ながらにS&Fを去った春子はというと、長年の夢であった演歌歌手となってAjiのオープンの日に訪れる。春子もまた、自分の夢を叶え東海林らの元に姿を表したのだ。春子がS&Fと築いてきた関係を長い間見守ってきた私たちにとって、この別れと出会いはまるで自分のことのように胸を高鳴らせる瞬間となった。

 こうして今一度物語にピリオドを打つ『ハケンの品格』は、人にとって忘れてはいけない大切なものを思い出させてくれるお仕事ドラマとなったにちがいない。

(Nana Numoto)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む