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KinKi Kidsは今日も”音楽の力”を体現しているーーアルバム『O album』で新しい時代に向かって届けるふたりの歌

リアルサウンド

20/12/28(月) 12:00

 12月23日、KinKi Kidsにとって約4年ぶりとなるオリジナルアルバム『O album』がリリースされた。クレジットには、おなじみの作家陣のほか、初タッグとなるアーティストの名前も。さらには堂本剛も創り手として参加している。

 ここ数年、KinKi Kidsが動き始めたというか、挑みを始めた印象がある。「堂本光一と堂本剛が歌えばKinKi Kids」。ジャンルレスに届けられる音楽が、その定説を確信させる。

 濡れた声と哀愁、“個”の強さ、芯に響くハーモニー、第三の声ともいえるユニゾン・“KinKi Kidsの声”。それらKinKi Kidsならではの持ち味を最大限に活かしつつ、幅広い楽曲を表現したチャレンジングな今作。アルバムコンセプトは“Over”。聴いて納得の1枚だった。

KinKiの“イズム”を感じる堂島孝平との楽曲群

 1曲目を飾るのは『O album』の共同プロデューサー・堂島孝平による「彗星の如く」。ベースが活きるグルーヴィーな楽曲ながら、サラっと軽やかな聴きやすさがある。ギターサウンド、歌詞にそれぞれ散りばめられた“キラーフレーズ”は、まさに堂島節だ。

 スタイリッシュでありながら、Bメロの入りで辿るメロディアスなラインにKinKi Kidsを感じる。耳を離れないこの感覚に、堂島孝平×KinKi Kidsのはじまりである「Misty」がよぎる。

 同じく堂島による「DEEP DIVE」は、ライブで聴きたい1曲だ。ギターをかき鳴らすロックサウンドでありながら、不思議な上品さと切なさをもつ。

 サビ前の合図的な“So sad”、否応なしに胸は高まる。ボーカルとギターが呼応し、ピアノの旋律が絡みつく落ちサビへと向かう展開は、もうずるいとしか言いようがない。

 ロックが映える光一の声とメランコリックな剛の声、高音域のサビを地声で歌いあげるユニゾンにはどこかやるせなさが漂い、苦しいほど歌詞の世界観にマッチする。

 「運命論」は、ファンにとってストライクな曲ではないだろうか。KinKi Kidsが歌い続けてきた楽曲ラインであると感じた。サビは壮大でありながらシンプル。だからこそ、沁みる名曲だ。二人のファルセットも美しい。

 大切なメッセージを、丁寧な日常の描写で綴っている。4分27秒の楽曲なのだが、あっという間の感覚。何度でも聴きたくなる。

 剛と堂島による「Slash」は、個人的にもっともKinKiの“イズム”を感じた曲だ。

 尖ったギターサウンドの疾走感に乗った、ドラマティックなメロディ。電子音をこれだけ打ち込んでおきながら、歌謡曲を思わせる懐かしい響きをもつ。

 電子音と生音の融合は『A album』や『B album』の時代にも多用され、流行した。KinKiとともに歩んできたファンこそ感じる“なじみやすさ”もあるだろう。温故知新と言うべきか、秀逸な曲だ。

 2017年に突発性難聴を患った剛が、入院期間中に制作したメロディ。痛いほどのエネルギーを感じる。“堂島孝平”という詩人の、言葉ハメの上手さとロマンチシズムにも敬服だ。

竹内アンナから松本隆&細野晴臣まで…引き出されるボーカルの表情

 今作でひときわ存在感を放つのは「ジェットコースター・ロマンス」と同い年のアーティスト・竹内アンナによる「感情愛情CRAZY」。

 重厚でありつつポップなサウンドは、展開が読めない面白さがある。また、アッパーな楽曲とマイナーな声の融和により、絶妙なストーリー性が生まれている。

 成海カズトによる「響 -hibiki-」は、ドラマチックなイントロで惹き込む中毒性の高い楽曲。個々のソロパートにも起承転結があり、光一、剛、それぞれの表現が味わい深い。

 美しい歌詞と、変化球的なメロディラインのギャップが心地よく、長く愛されるスルメ曲になりそうだ。

 漂う“和”が美しいピアノバラード「新しい時代」。堂本剛の詩とマシコタツロウの曲、KinKi Kidsのボーカル。それぞれの“らしさ”が、ただただ濁りなく融合した名曲だ。

 剛が、ステイホーム期間中に綴ったという歌詩には、彼の感性が優しく光る。〈このいまが寂しい〉。シンプルだが、これ以上ない表現だ。ファンに寄り添い続けた剛が書くからこそ“寂しさ”はリアリティをもち、感じた愛の矛盾に共感する。今年、多くの人が抱え続けた言いようのない想いが、ここに描かれている。

 現在、ジャニーズ公式YouTubeチャンネルで同曲のミュージッククリップが公開されている。多くは語らない。見てほしい。

KinKi Kids「新しい時代」Music Clip (from O album)

 作詞・松本隆、作曲・細野晴臣。クレジットにさえ興奮した「99%」。シティポップの風味をもつ楽曲には、ジャジーなテイストとエキゾチシズムが漂う。歌詞もじっくりと噛みしめたい。噛みしめたいようで、流れるままに聴いていたくもある、ムーディな曲だ。

 彼らがこういう曲を歌うと、いまだに「大人な曲」と表現してしまう。失われない眩しい面影が、そうさせるのだろうか。

 しかし、こうした艶のある楽曲とKinKi Kidsの親和性が高いのも事実。18歳で「硝子の少年」を歌いあげた二人。あの上質な背徳感のようなものを「99%」に感じた。

KinKi Kidsが届けてくれる“これから”に差す優しい光

 「100年後の空にはなにが見えるんだろう」では、当たり前ではない「奇跡」……“いま”を切り取った松井五郎の歌詞が、織田哲郎らしいフォルクローレ色のあるサウンドと、キャッチーなメロディに乗る。

 ジャニーズサウンドを支えてきた作家陣による、包容力のある普遍的なメッセージ。それを歌い続けるのもまた、KinKi Kidsの意志であり、使命なのかもしれない。

 ラストの「STARS」は、まさしくアルバムコンセプトの“Over”、新たなステージへの一歩を感じさせる1曲だ。制作は、2004年からKinKi Kidsコンサートのバンドマスターを務め、彼らの音楽を誰よりも知る吉田建。

 エンドロールのような、あるいはカーテンコールのような曲だ。楽しかった時間にひととき別れを告げ、明日への希望を抱く、そんな曲。

 美しさのあまり、ほんの少し切なくもある。けれどこの曲を聴き終えたとき、心に残るのはきっと灯。アウトロのない潔さが、むしろ余韻を残す。

 「STARS」がアルバムを締め括ることで、この混沌とした時代にも、KinKi Kidsが届けてくれる“これから”にも、優しい光が差すのを感じた。

 KinKi Kidsは今日も、音楽の力を体現している。

■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。
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