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事故物件住みます芸人・松原タニシが語る、異界巡りのリアル 「心霊スポットは単に怖いだけじゃない」

リアルサウンド

20/4/15(水) 10:00

 “事故物件住みます芸人”として怪談シーンで圧倒的な知名度を誇る・松原タニシ。2012年よりテレビ番組の企画として事故物件に住み始め、以来、数々の事故物件を住み歩く唯一無二の芸人だ。自身の住んだ事故物件や身の回りの心霊体験をまとめた著書『事故物件怪談 恐い間取り』(2018年/二見書房)は大きな話題を呼び、ついに今夏、亀梨和也主演、中田秀夫監督で映画化されることが決定している。
 
 同時に事故物件に住むだけでなく、数々の心霊スポットを“異界”と称し、各地を巡る活動も展開。この旅をまとめた新著『異界探訪記 恐い旅』(2019年/二見書房)も人気を博し、ますます注目が集まっている松原に、映画のことや、怪異に対する姿勢などを、都内某所にある「白い服を着た美しい女性の幽霊」が出ることで有名な旅館の一室でインタビューを行った。(たかなし亜妖)

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■セカンド、サード、フォース事故物件

――もともと幽霊や怪談などは平気なタイプなんですか?

松原:いや、今も怖いです。ただ恐怖心より、好奇心が勝ります。もともとホラー映画も心霊番組も、怖がるけど興味はあるタイプだったのですが、事故物件に住んでから、より興味が湧いて、そこに近づく勇気が出てきました。ただ、これだけ(異界を)巡ったからと言って、必ず撮れ高があるわけじゃないです。決して仕事として効率のいいものではないです。

――異界には様々な噂がはびこっていますが、それはあくまで“噂”に過ぎないと本にも書かれていましたね。

松原:行っても何も起こらないことの方が多いです。行くのにも費用がかかってしまって、最初は金銭面でも割とギリギリでした。もともとギリギリで生活していたので、特に苦ではなかったですが(笑)。

――異界に関するネタ集めは、やはりネットがメインですか?

松原:異界のネタはネットの情報もありますが、人から聞いた話を優先していますね。イベントで来てくれたお客さんの話を聞いて行ったりします。

――最近はYouTuberなどの方たちが心霊スポット巡りをしていることが多く、視聴者も現地に行ってみるという事例が多くあります。例えば青山霊園など。そういった異界だと、“先客”がいるケースもよくあるみたいですね。

松原:マイナーな異界は、基本的に人と出会わないです。会うことの方が珍しいですね。道了堂跡とか八王子城跡(いずれも東京で有名な心霊スポット)とかはやっぱり有名なので、遭遇したりはしますけど。

――人がいないとなると、より怖く思えますね。ちなみに松原さん、2年間で足を運んだ異界は206箇所、住んだ事故物件は7軒だそうですが……。

松原:延べでいうと現時点(2020年3月)で約500箇所くらいです。そして事故物件は10軒目ですね。

――『恐い旅』では2018年4月までの記録しか書かれていないですね。2年間で300箇所近くも増えたと。借りた事故物件もそこまで増えたとは驚きです。以前はセカンド事故物件も借りていたそうですね。

松原:借りていました。今は沖縄県にサード、フォース事故物件があります。9軒目は沖縄の方に「そこへ住んでいたら良くないことが起きるぞ!」と言われましたが、何が良くないのかはまだ分かりません(笑)。10軒目はこれからです。

――松原さんは知名度があるので、今や不動産界で有名になっていると思うんです。事故物件を借りる際に困ったことは起きませんか?

松原:知り合いの不動産が紹介してくれる時は、僕のことを分かった上で(事故物件を)貸してくれるんですよ。沖縄もそうでした。ただ一回、内見させてもらった物件の大家さんが僕のことを知っていたみたいで、断られたことはありました。大家さんも風評被害やらで大変なので、できれば事故物件であることは隠したいのでしょう。

■怖いものを求めている人には肩透かし?

――本の話に戻ります。現在も続く異界巡りですがが、本に載せたエピソードはどんな基準で選んだのですか?

松原:載せたのは全部です。先ほども言いましたが、行った場所で必ず何かが起きるわけじゃないんです。怪談を紹介したいのではなく、それよりも行って見たものを記録として残したいなと。実はもともと、『恐い旅』は書籍化の予定もなくて。『恐い間取り』を出したときに「二冊目の“間取り”を書きませんか?」という話があったんですが、(ネタが)ないです!と(笑)。僕が住んでるだけでもそんなに書けないし、話も集まらないので。それだったら心霊スポットに沢山行っているから、そっちを書かせて下さいとお願いしました。

――『恐い間取り第二弾』が刊行される可能性は?

松原:今年の夏頃発売予定です。先日執筆風景を生配信してやっと脱稿できました。

――『恐い旅』を読んでいると、実際に行った異界に関するエピソードは1~3ページほど。文章も非常にユーモラスで、テンポの良さを感じました。

松原:怖いものを求めている人からすれば、肩透かしだと感じる場合もあるかもしれません。でも心霊スポットは単に怖いだけじゃない、というのを書きたかった。タイトルは『恐い旅』となっていますけど、一風変わった旅行記というイメージです。

――誇張なく書かれているからこそ、リアリティがあって身近に感じられるのかもしれません。

松原:僕は性格が悪いので、怪談でも矛盾点ばかり探しちゃうんですよね(笑)。そうなると、自分でも矛盾があるものを書けなくなってしまうので、ありのままを書くしかないんです。

――怪談の矛盾にスポットを当てているところが、これまでのホラーコンテンツになかった特徴だと感じています。そして今夏『恐い間取り』が映画化されるそうですね。

松原:亀梨和也さん主演でビックリです(笑)。中田秀夫監督とも顔合わせをしましたが、どんな作品になるか楽しみです。

■なぜ亡くなったのかを考える

――昨今は「行ってみた」「やってみた」などの企画で心霊スポットがよく出てきますが、実はとてもデリケートな題材ですよね。

松原:僕もこうした企画に悩んだことがあります。でも、(死者や霊と)向き合わないと理解できないこともあると考えていて。事故物件や心霊スポットを扱うコンテンツは、視聴者の“怖いもの見たさ”に応えたものだとは思います。ただ、事故物件を単に恐れるのではなく、その場で起きた事実や物事の背景を考えることには、ちゃんと意味があるんじゃないかなと。「お化けが出るから怖い」という感想で終わってしまうと、大事なことが見えてこないというか。僕自身、最初は興味本位で始めたことなので、心霊スポットを訪れる人を非難する立場にはないのですが、続けていくうちに、人の生死について深く考えるようになりました。

ーー最後に、現在発売している二冊の本の楽しみ方を教えて下さい。

松原:一冊目の『恐い間取り』の方はエピソード的には怪談が入っているので、怖さを求める人向けですね。実際に事故物件を借りてみようと考えている人にもおすすめです。『恐い旅』は心霊スポットに興味があるけれど行く勇気がないとか、一緒に行ってくれる相手がいない人が読むと、行った気持ちになれるかもしれません。初心者の方にも読みやすい一冊だと思います。

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