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くるり主催『京都音博』全ステージレポート 9回目を迎えた同フェスの「得難さ」とは?

リアルサウンド

15/9/24(木) 13:11

 2007年から毎年開催、今年で9回目の開催となったくるり主催の『京都音楽博覧会 IN 梅小路公園』が、9月20日(日)に行われた。今年の出演はくるり、木村カエラ、高野寛、indigo la End、Cosmo Sheldrake、八代亜紀、Antonio Loureiro、ましまろの8組。

 まず毎年恒例の開会宣言、着物姿の岸田とTシャツ姿の佐藤が登場。例年この時は着物姿であることが多いので、「なんで普段着やねん」と岸田が佐藤につっこんだりしつつ、あと会場に隣接していた梅小路蒸気機関車館が閉館になったので(来年京都鉄道博物館として再オープン予定)このフェス恒例の「ポーッ」という汽笛音が今年はないこと(去年まで演奏中も関係なく何分かに1回のペースで鳴っていた)などにも触れつつ、あいさつと、感謝の言葉と、産休中のファンファンからのメッセージ(スマホに届いたものを読み上げる)のあと、1組ずつ出演者を紹介。

1 高野寛

150924_takano.jpeg高野寛

 「中学の時空手部やったんですけど、練習をしながらずっと彼の曲を口ずさんでいました」という岸田の言葉に続き、登場。スタンディングでアコースティック・ギター弾き語り。1曲目からいきなり自身最初のヒット曲「虹の都へ」(90年)でスタート。次は、「犬の一生はあっという間で、犬の1年は人間の7年にあたるそうです」と曲の趣旨を説明し、昨年リリースの最新アルバム『TRIO』の1曲目「Dog Year,Good Year」を歌う。そしてボブ・ディランの「時代は変る」に安保法制問題についての日本語詞を付けてカバーしたあと、「僕の曲で一番有名な曲をちょっとだけ」と、CMソング「グリーンダカラちゃんのうた」を歌って会場をわかせる。くるりのトリビュート・アルバム(09年)に提供した「ワンダーフォーゲル」、「虹の都へ」に次ぐヒット曲「ベステンダンク」と続け、『TRIO』でセルフ・カバーした「確かな光」でしめくくった。

2 Cosmo Shalerake

150924_cosmo.jpegCosmo Shalerake

 マニュピレーター的に機材を操作しつつ歌う、というライブ・パフォーマンスを行う、ロンドンの25歳のアーティスト。これまでに音源リリースしているのは『ペリカンズ・ウィーEP』(7曲入り)のみだが、その日本盤に岸田は「突如現れた“普通の天才音楽家”」「ヴァンパイア・ウィークエンド、ハドソン・モホークが目指した越境的サウンド作りをいとも簡単にくつがえす最近の英米アーティストの中で最先端の越境的サウンド」「きっと英米シーンは彼を中心に変わっていくことでしょう」と、推薦コメントを寄せている。なお、この岸田のコメントはCDパッケージに貼られているが、インナースリーブには佐藤とファンファンの推薦コメントも載っている。歌ものを志す人がなんでこんなトラックを? こんなに自由なトラックを作る人がなんでわっかりやすい歌ものを? という驚きに満ちた全5曲。という意味で、音楽手法やジャンルは違うが、本質的にくるりのやっていることに近いかもしれない。

3 木村カエラ

150924_kaela.jpeg木村カエラ

 自身のバンドは連れてこず、くるりとのセッションでステージに立つ……いや、全員座って演奏し歌っていたが、とにかくそういうスペシャル・ライブ。白いノースリーブシャツにふっとい青ジャージ(サイドに白線)、という衣裳で登場、アコギを弾く岸田とふたりで最新シングル「EGG」からスタート。2曲目で岸田以外のくるり&そのサポートメンバーが全員登場、「Sun Shower」をプレイ。終わると岸田、「ええ曲やな、これ。よかった」「めちゃ緊張してたけど、すごい楽しくなってきた」と漏らす。「今日はくるりがバックやるんですけど、(カエラの)曲、すごい演奏難しいんですよ」と開会宣言の時に言っていたので、相当の気合いを持って臨んだのだと思われる。「Butterfly」と、自身の代表曲を続けて披露。「Butterfly」では間奏でBOBO(オフィシャルサポーターとして開演前の会場紹介映像でレポーターを務めたりしていた)が乱入、タンバリンを打ちつつ踊る。ラストは再び岸田とふたりで、カエラが大好きなくるりの曲であり、8月2日のROCK IN JAPAN FESTIVAL出演時にも岸田とふたりで披露した「奇跡」でライブをしめくくった。

4 indigo la End

150924_indigo.jpegindigo la End

 本人たち曰く「今日いちばん音が大きいアクトだそうです」。爆音を出すというわけではなく、着座せず、アコースティック楽器も使わず、普段どおりのライブをやるというだけなのだが、そうするとこのフェスではそういうことになる。「くるりは大好きです」「コピーバンドやってました」と、このフェスに呼ばれたことへの喜びを何度も口にしながら、「心ふたつ」「幸せが溢れたら」「夏夜のマジック」と、活動を重ねれば重ねるほど曲の強度とそれを形にする表現力が増していく最近のこのバンドの勢いを見せつけるように、しかしじっくりとプレイ。確かにこの世代(20代中盤〜後半ぐらい)のギター・バンドの、いわば「くるりチルドレン度」はものすごく高いものがあって、対バンやフェスなどで岸田に会って狂喜している若いバンドマンを何度も見かけたことがある。ラストの4曲目「素晴らしい世界」を歌う前に、「京都大好きです、これてうれしいです」と川谷絵音は口にした。あと、「イルカが気になる」とも口にした(会場に隣接する京都水族館のイルカショーが演奏中も続いていて、時折ジャンプするイルカの姿が見えたりするため)。

5 ましまろ

150924_mashimaro.jpegましまろ

 ご存知、ヒックスヴィルの真城めぐみ&中森泰弘とザ・クロマニヨンズの真島昌利が結成し、今年5月にシングル『ガランとしてる』、9月2日にはアルバム『ましまろ』をリリースしたばかりの新しいバンド。「1980年代の初頭、新宿JAM STUDIOで知り合った3人が30数年の時を経て~」とプロフィールには記されているが、つまりそれぞれロッテンハッツ以前とザ・ブルーハーツ以前に同じ東京モッズ・シーンにいて知り合った、ということだと思う。
真城めぐみはヴォーカルとパーカッション、マーシーはアコースティック・ギター、ふたりの中央後方の中森泰弘はセミアコ。1曲目「体温」は真城、2曲目「僕と山ちゃん」はマーシーがリード・ヴォーカルをとる。真城、「無理矢理出していただいてありがとうございます。私たちだけなんです、無理矢理なの」と謙遜なのか自虐なのか判断に困ることをにこやかに言いつつ、「公園」を歌い、「ガランとしてる」でしめくくった。真城めぐみの歌を聴いたことがない、という人はまずいないと思うが、マーシーがかつてソロでもバンドでも普通に歌っていたことを知っている世代と知らない世代でリアクションが分かれた感じだった。前者は「ああっ、これこれこの感じ!」と興奮し、後者は「へえーっ、こんな歌なんだ!」と聴き入る。そしてそのマーシーの言葉とメロディを真城めぐみが歌うとこうなる、という新鮮な感動もあり、あっという間の4曲だった。

6 八代亜紀

150924_yashiro.jpeg八代亜紀

 40年以上にわたって活躍する演歌界のトップランナーでありつつ、2012年の小西康陽プロデュースの『夜のアルバム』からはジャズ・シンガーとしての活動も始めて大ヒット、その作品が海外へも届き世界的な評価を得ている最近の八代亜紀。本日もジャズバンド編成でオン・ステージ。同作から「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」「クライ・ミー・ア・リヴァー」をじっくりと聴かせたあと、まるで友達に語りかけるような親しげなMCで、12歳でクラブ歌手としてデビューした頃のエピソードなどを語り、「全然売れない時代もあったけど、今は演歌の女王だよ」と胸を張り、喝采を浴びる。野外であることを気にしつつ、「(天気がいいので)これ、やっていいかしら」とサビの手のアクションを見せ、歓声が巻き起こる中大ヒット曲「雨の慕情」へ。ふたたびジャズ・ナンバー2曲を歌い、メンバー紹介のあとに始まったラスト・チューンは「舟唄」。当然、ジャズにリアレンジしているのでイントロではそれとわからなかったオーディエンスだったが、「お酒はぬるめの~」彼女が歌い始めた瞬間の大歓声、すごいものがあった。

7 Antonio Loureiro

150924_antonio.jpegAntonio Loureiro

 くるりがブラジルから招聘したシンガーソングライター。あらゆる楽器を演奏できるマルチ・プレイヤーだが、この日のステージはグランドピアノの弾き語り……いや、「語り」という言葉にはあきらかにそぐわないテンションの歌と、歌いながら弾いているのが信じられないアクロバティックなピアノを次々と聴かせていく。ポップス、ジャズ、ロック、クラシック等、本当にボーダレスな活動のアーティストだし、楽器もなんでも弾ける、という予備知識で観たが、「それ以前にまずシンガーとしてすごい」という事実に圧倒される。まるで楽器を操るような自在な歌いっぷりだった。途中のMCで、「祖父が今日亡くなった」というようなことを言っていたのだけ気になったが(すみません、私英語できないので、今日が命日だという意味だったのか、まさに今日亡くなったと言っていたのか、判断がつきませんでした)、続いて歌ったのは、その祖父に捧げる曲だった。

8 くるり

150924_qururi_2.jpegくるり

 岸田&佐藤+ドラム、キーボード、ギターに、昨年の京都音博に出演したブエノスアイレスのミュージシャン、トミ・レブレロがバンドネオンで加わった6人編成。ドラムのMabanuaは3曲目から6曲目までの参加、それ以外はドラムレス編成での演奏だった。

1 Time
2 ブレーメン
3 パン屋さん
4 新曲
5 新曲
6 ふたつの世界
7 真昼の人魚
8 キャメル
9 京都の大学生
10 Baby I Love You
11 ペンギンさん
12 宿はなし

 という、まさにこの日のためだけの、ここでしかやらないであろうセットリスト(そういえば逆に、今年の春から夏にかけてのフェス出演時は、みんな喜ぶような有名曲を並べたメニューでのライブが多かった)。最初に驚いたのは3曲目に「カバー曲をやります」とプレイしたサンフジンズの「パン屋さん」。サンフジンズでは3人という最少人数で演奏しているこの曲を、今のくるり+トミ・レブレロの6人でやるとこうなるのか!という新鮮さに満ちたプレイだった。「ツイッターでリクエストを募ったんやけど、(意見が)いろいろで(笑)。でも、この曲、多かったから」と歌われた「真昼の人魚」もすばらしかった。そして岸田、「さっき裏でスタッフと言うてたんやけど、あんたら最高やわ。世界一のお客さんです。ありがとう」とお礼を言ったり、ラストの「宿はなし」を歌う前に「いや、音博やっててよかったっす、くるりやっててよかったっす、ありがとう」とさらに感謝の言葉を口にしたりと、なんだかやたら感極まっていたようだった。

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 ロック以外のジャンル、欧米以外のアーティストも招聘して、ステージがひとつだけのフェスを行う──という趣旨で2007年にこの『京都音博』が始まった時、いろんな声があった。もちろん肯定的な意見も多かったが、そのアーティストに興味がなければ他のステージに行くことのできる他のフェスと違い、「観る」か「観ない」しか選択肢のないフェスで、興味がないどころか全然知らない異国のアーティストと見せるのって、はたしてどうなのか、という声もあった。気持ちはわかるけど、それアーティスト側の趣味の押しつけになってしまうんじゃないか、くるり観たさにみんな来るけど、それまでじっとがまん、みたいなことになるんじゃないか、と。

 正直、1回目の時は、僕にもそういう気持ちはあった。が、開催3回目ぐらいで完全になくなった。そして今はむしろ──特にネットまわりに顕著だが──音楽にしろ映画にしろ本にしろ「いかにも自分が好きそうなもの」「興味持ちそうなもの」ばかりを勧められて、「興味なかったけどすごくよくてびっくりした」「全然知らなかったけど観て(聴いて)驚いた」という経験が、ちょっとまずいんじゃないかと思うくらい減っている今の自分にとって、音や映像ではなく生のライブでそれを体験させてくれる『京都音博』は、本当に得難い、重要な存在だと思っている。

 そしてその重要さは、回数を重ねるごとに増していると思う。人気者アーティストを揃えたフェスが動員で苦戦したりすることもある中、『京都音博』が満員のままで9回を数えているのは、その重要さを多くの参加者が肌で感じ取っているということなのではないかと思う。

 あ、異国のアーティストだけではありません。過去の石川さゆりにせよ、今回の八代亜紀にせよ、自分が生で観ることになるなんて思わなかったし。そして、どちらも、ショックなほどすばらしかったし。

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(文=兵庫慎司/撮影=久保憲司)

京都音楽博覧会 HP:https://kyotoonpaku.net/

くるり WEB SITE: www.quruli.net
くるり FANCLUB : https://note.mu/quruli

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