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櫻坂46 藤吉夏鈴、作品を重ねるごとにみえる変化 「偶然の答え」MVで輝く表情

リアルサウンド

21/3/31(水) 6:00

 4月14日に発売される櫻坂46の2ndシングル『BAN』に収録予定のカップリング曲「偶然の答え」のMVが先日公開された。監督は同グループのMVに初参加の林希。櫻坂46が出演しているイオンカードのCMも手掛ける同監督は、CMでは人生に迷うそれぞれの登場人物たちの繊細な機微を映し出していた。今作では、校舎の屋上でメンバーたちが風を受けながら踊るカットのほか、バッグを叩き捨てる迫真の演技や、ダンス後に涙を零すシーンなど、爽やかなパフォーマンスの中にも緊張感漂う演出が収められた物語仕立ての映像になっている。ざっとMVのストーリーは以下の通り。

櫻坂46 『偶然の答え』

 渋谷の高層ビルの屋上で、景色も見ずに一人思い詰めている主人公・夏鈴。心の中で「あの頃の私は、自分ではない誰かになりたいと思っていた」と呟く。“あの頃”とは、上京前の学生時代のこと。普通の学校生活を送っていた夏鈴だが、実は他人には言えない秘密を抱えていた。いつも一緒にいる親友の莉子のことが好きなのである。ある時夏鈴は思い切って駅のホームで告白してみるも、あっさりとフラれてしまい、その日を境に2人の関係はぎくしゃくしていく。そんな苦い経験もあって夏鈴は“自分ではない誰か”になれる役者の道を志すようになった。役者としての夢を追うため上京することが決まった頃、久しぶりに出会った2人はまだどこかよそよそしい。やがて東京で暮らし始めた夏鈴が、渋谷PARCO前からスペイン坂を降りていた途中、ふと振り返るとそこにはーー。

 こうしたストーリーを描くMVに対して、メンバーたちのダンスパフォーマンスはその時々の主人公・夏鈴の感情とシンクロしているため、彼女たちの繊細な表現にも注目だ。また歌詞は、渋谷のスペイン坂で偶然遭遇したことで運命を感じた主人公が、2人を引き寄せる不思議な力を感じていくというもの。つまり、このMVは歌詞の“前日譚”であると考えられる。

“変わること”を着実に見せてくれる藤吉の物語

 この曲のセンターを担当し、MVでも主人公を務める藤吉夏鈴は、櫻坂46の中で独特の立ち位置を確立しているメンバーだ。先週の記事で「BAN」に描かれる感情を説明するにあたり、過去のインタビューでの彼女の発言を例に挙げたように、藤吉は改名という急激な環境の変化の中で“取り残された”感覚を正直に話している(参照)。センターに選ばれながらも、グループの変化にうまく順応できていない面を持つメンバーなのだ。

 しかしながら、彼女が1stシングル収録曲でセンターを務めた楽曲「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」はとびきり明るく、むしろ“変化”に対しての前向きな言葉が並んでいた。それゆえ彼女自身も表現するのに苦労したという。同インタビューで藤吉は、MV撮影の際になかなか切り替えができず、「私にはできないです」と監督や振付師のTAKAHIROに一度伝えたことを明かしている。その後話し合いを重ねてなんとか完成まで持っていったというが、そんな経緯もあって「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」をステージでパフォーマンスする時の彼女には幾ばくかのぎこちなさも感じるのだ。

櫻坂46 『なぜ 恋をして来なかったんだろう?』

 一方で、この「偶然の答え」での彼女は何かを掴んだように楽曲に入り込んでいる印象を受ける。ブログでも「すごく甘酸っぱい青春で本当に心の底から胸が苦しくなったり気持ちが弾むような感覚になったり」(※1)と、作品に感情移入している心境を綴っているが、自分の役に心から納得して取り組めているような、生き生きとした演技を映像の端々に確認出来るのだ。特に校舎の屋上でのダンス中の表情は、今までにないほど輝いているように思う。

 以前は曲で歌われているものと自分との距離感に戸惑うことがあった彼女も、今作が変わる一つのきっかけになるのではないか。まさに“自分ではない誰か”に変化する藤吉の新鮮な魅力が作品に表れている。とはいえ、同ブログに「私にはまだ受け止め切れないほどの青春ですね」とこの曲に多少のギャップも感じているのが彼女らしいところ。リリースを重ねていくごとに、“変わること”を一歩ずつ着実に見せてくれる彼女の成長が今面白い。

(※1)https://sakurazaka46.com/s/s46/diary/detail/38258

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi/https://twitter.com/az_ogi)

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