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松井周×村田沙耶香によるinseparable、共同原案の舞台&小説『変半身』

CINRA.NET

19/9/7(土) 18:00

©鳥飼茜

松井周(サンプル)と村田沙耶香によるプロジェクト「inseparable」が始動。舞台『変半身』が11月29日から東京・池袋の東京芸術劇場 シアターイーストで上演される。

inseparableは、劇作家・演出家の松井周と小説家の村田沙耶香が、共同原案をもとに演劇と小説をそれぞれ発表するプロジェクト。舞台版の『変半身』では、現地で発掘される「レアゲノム」という化石由来のDNAがヒトや動物の遺伝子組換えに必要なものとして注目を集める近未来の離島・千久世島を舞台に、奇祭で亡くなったはずの男がある日突然蘇り、その存在が島の住民を狂わせていく様を描く。

原案を村田と松井、脚本と演出を松井が担当。出演者には金子岳憲、三村和敬、大鶴美仁音、日高啓介、能島瑞穂、王宏元、安蘭けいが名を連ねる。音楽を宇波拓、宣伝イラストを鳥飼茜、宣伝美術を佐野研二郎と香取有美が手掛ける。

「inseparable」プロジェクトは2017年の東京・神津島への取材から始まり、2018年に兵庫・城崎国際アートセンターで合宿と試演会、同年に台湾・緑島、今年に三重・神島で取材を実施。舞台版『変半身』は東京芸術劇場 シアターイーストで上演後、12月14日から三重・津の三重県文化会館、12月18日から京都・ロームシアター京都 ノースホール、12月21日から兵庫・神戸文化ホールで上演される。各公演のチケットは9月21日から一般販売スタート。村田による小説版『変半身』は11月下旬に刊行予定だ。

なお10月19日、20日に東京・多摩センターのパルテノン多摩、パルテノン大通り、デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧三本松小学校)で開催されるCINRA.NET主催のイベント『NEWTOWN 2019』内で、『inseparable+サンプル・ワークショップ「切っても切れない」』が開催。松井周をはじめ、杉山至、伊藤キム、坂口恭平、野津あおいが講師を務め、5つのプログラムを行なう。参加応募は9月28日まで専用フォームで受付。応募者多数の場合は抽選の上、10月2日までに当落が発表される。

松井周のコメント

村田沙耶香さんと話していると時間を忘れます。安楽死ブームが起きたら?とか、ニセの儀式とか「もしもの世界」に足を踏み入れて夢中になっている感じです。
取材した島や合宿先でも二人のおしゃべりは続きました。「もしかしたら人間は実はこんなふうにやってきて、こんなふうに生きて行くのかもしれない」という過去のひっくり返しや未来の予感をどんどん煮詰めていったのです。そして、共通の設定を考え、小説や戯曲のプロトタイプをつくりました。「あるある」を通り越して「ないない」の域に達した設定でも、村田さんの文章で語られると人や島の実在感が増すなあと思いました。
個人個人で異なる現実、オルタナティブ・ファクトがあり、誰もそこに踏み入ることはできないとする風潮があります。自分にとって白か黒かで事実を判断するのみで話し合いを拒絶する態度です。これは、もともと人間はウソとホントの間に生きていて、信用ならないものという認識が欠けているように思えます。ウソとホントの間に生きているから、自分勝手だったり、流されたり、錯覚したり、下心があったりと、「すきま」の部分があるのではないでしょうか。人間っていうものは、デタラメでエロくて愛すべき知的生命体だよなあ!と思えるようなフィクションまみれの人間像を魅力的に描きたいです。
inseparable=切っても切れないとは、やっぱり僕が村田さんと最初に会ったときに感じた「村田・松井ドッペルゲンガー説」に基づいていると改めて思っている次第です。
小説も舞台もどうぞご期待下さい!

村田沙耶香のコメント

小説を書くとき、誰かの作った設定を使うということは、私の一番苦手なことでした。
子供の頃、読んでいた少女小説の男の子が主人公にあまりに冷たいので、二人が仲良くデートしているところを書いてみようとしたことがあります。でも、一行も書けませんでした。主人公がどんな靴を履いていて、どんな部屋に暮らしているのか、全部自分で決めないと、私にはどうしても書くことができないのでした。
そんな私が、なんで、「松井周さんと設定を共有する」という不思議なプロジェクトに挑戦することになったのか、自分でも奇妙です。でも、松井さんの話しているといつも、無意識で理解できるような感覚があり、二人で作品世界をつくったらどうなるだろう? と思ったのでした。
まるで子供のころみたいに、絵や地図や年表を見せ合い、合宿して話し合いました。当たり前だけれど松井さんの脳は私の脳とは違うので、自分では思いつかないようなこともたくさんもらいました。私は、創作ノートや途中稿を絶対に人に見せたくないのですが、inseparableではそれをしました。
そして今、小説を書いています。ドトールで、合宿で広げたノートをこっそりのぞきながら、文字を紡いでいます。舞台と小説がどんなふうに完成するのか、楽しみにしています。

山本充(企画・編集)のコメント

「inseparable(インセパラブル)」、切り離せない、分けられないのにそれがあえて言われることは、いま現在切り離されていること、分かれてしまっていることを暗示する不穏さがある。ひとりの人間が分かれたようにあまりにも似ている小説家と劇作家、ふたりが(再び?)ひとつになるとき、そこにどんな極彩色の漆黒が広がるのか。そんな夢を紙の上と舞台の上でともに見届けてほしいと願っています。

村田沙耶香『変半身(かわりみ)』は11月下旬、筑摩書房より刊行予定。乞ご期待!

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