片桐仁の アートっかかり!
連載初のアーティスト対談が実現! 片桐仁×加藤泉が巡る『加藤泉―LIKE A ROLLING SNOWBALL展』
毎月連載
第13回
今回片桐さんが訪れたのは、原美術館で開催中の『加藤泉 — LIKE A ROLLING SNOWBALL』展。連載史上初めてアーティストご本人にご登場いただき、片桐さんがその制作の裏の裏まで迫った鑑賞レポートをお届けします!
加藤泉の全容を紹介する個展
青野和子(ハラ ミュージアム アーク館長/加藤展担当学芸員) 本展は、加藤さんの全容を紹介する展覧会として、ここ原美術館と、群馬県渋川市にある原美術館別館ハラ ミュージアム アークの両方で開催しています。
加藤 原美術館が新作展で、ハラ ミュージアム アークは25年分のアーカイブ展になっています。
片桐 25年分! 両方観て全てが分かるようになっているんですね。
エントランスで出迎えてくれていますが、これは精霊的なものをイメージしているんですか?
加藤 これに限らず全部、具体的な何かということはなくて……造形的に絵を描いていったらこうなっていったという形です。
片桐 もともとは絵ですよね? 立体を作るようになったきっかけがあるんですか?
加藤 絵って行き詰まるんですよね。それを打開したくて、直感的に彫刻で何か面白いものができるんじゃないかなと思って、やってみたら面白くて。
片桐 それで木彫やったり、ソフトビニールを作ったりしているんですね。
片桐 こちらはまた大きな作品ですね!
加藤 この作品はこのスペースに合わせて作ったものです。
片桐 色づかいとか、生き物の捉え方とかが、日本人離れしていますよね。ネイティブアメリカンとかに精通しているような気がしてしまうんですが……。
加藤 島根県出身なのでネイティブジャパニーズみたいなところはあると思います。アニミズム信仰が強くて、石とかも全部が神様という土地なんです。近所に古墳がたくさんあって、子供の頃は石櫃の横でポテチ食べたりしていました(笑)。
片桐 そうした体験が作品に現れている感じはしますか?
加藤 影響はあると思います。
パリの老舗版画工房で制作するリトグラフ
片桐 これは石に直接描いているんですか?
加藤 これはリトグラフを刷った薄い紙を貼っているんです。
片桐 版画なんですね!?
加藤 そうです。パリの工房で石版を作って刷っているんです。
片桐 石に貼っているんだ。すごい!
加藤 その工房がものすごく素敵なところで。それこそピカソやシャガール、マティスから、デヴィッド・リンチとかポール・マッカーシーとかも制作している工房なんです。石版の石や紙も古いものが置いてあって、もしかして昔ピカソが使ったかもしれないと思いながら制作するのが、すごく楽しいです。
片桐 昔気質の職人さんたちと制作するのも面白そうですね。
パワースポット!? 何かが宿っているような空間
片桐 インパクトある立体がきましたね。この空間は何か宿っているっぽいですよ。パワースポットみたい! 霊感とかあるんですか?
加藤 いや、全然ないです(笑)。UFOも見たことない。
片桐 ないんですか! それでこの感じ!? この展示室の雰囲気とすごい相性がいい感じがしますね。これは木彫ですか?
加藤 そうです。クスノキを彫ったもので、頭の上に乗っているのはソフビです。
片桐 素材感がいいですね。木と皮と石とソフビ。ソフビの中に入っているのは毛糸ですか?
加藤 ファブリックの作品で使用した切れ端の毛糸です。僕、ゴッホが好きなんですけど、ゴッホは毛糸を使って作品に使う色を決めていたらしいんですよ。そのオマージュとして使っているんです。