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桐山漣、二枚目キャラ×コメディ演技で欠かせない存在に さらなるブレイクへの期待

リアルサウンド

20/9/10(木) 6:00

 桐山漣が今、非常に面白い。

 9月10日に最終回を迎える『おじさんはカワイイものがお好き。』(読売テレビ・日本テレビ系)で、その厳しすぎる態度のせいで職場の同僚からは疎まれつつも、本当はネコ好きの第二営業課課長・鳴戸渡役を好演。ワンレンメガネの冷血ぶり、主人公・小路三貴(眞島秀和)を睨みつける「ぐぬぬぬぬ……」の表情などデフォルメの効いた演技で、ともすると嫌なヤツになりがちな鳴戸というキャラクターにコミカルな魅力をもたらしている。

 ここ最近、『これは経費で落ちません!』『いいね!光源氏くん』(ともにNHK総合)など面白いドラマには、桐山漣の名前がある。1985年生まれの35歳。俳優としてのキャリアは今年で15年目を迎える。デビュー作は、2006年から出演したミュージカル『テニスの王子様』。『仮面ライダージオウ』(テレビ朝日系)で存在感を示した兼崎健太郎、『ルーズヴェルト・ゲーム』『陸王』『下町ロケット』などTBS日曜劇場に欠かせない俳優として知られる馬場徹らと一緒に、俳優として始まりの季節を過ごした。

 大きく注目を浴びたのは、2009年の『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)。本人の念願だったという『仮面ライダー』シリーズで主演の座を掴み、ニチアサファンの支持を獲得。その後も『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~2011』(フジテレビ系)の難波先輩役や、『空飛ぶ広報室』(TBS系)の藤枝役など、チャラそうに見えて根はいいヤツという役をうまく演じていた。

 桐山の特徴は、圧倒的な出演本数。これまでのドラマ出演本数は、ゲスト出演なども含めると65作を超え、ジャンルもバラエティ豊か。『コードネームミラージュ』(テレビ東京系)や映画『曇天に笑う』ではアクションにも挑戦し、高い身体能力を見せつけた。

 こうして切れ目なく様々な作品に出演する一方で、なかなかヒット作や話題作に恵まれなかった面も。ドラマフリークにはおなじみの存在ではあるものの、さらにその先の大きなステージへ活動を広げるきっかけをつかめずにいたようにも見えた。

 だが、着々と磨いてきた演技力は裏切らない。2018年、『探偵が早すぎる』(読売テレビ・日本テレビ系)に出演。5兆円の遺産をめぐって命を狙われる女子大生・一華と、彼女を守る探偵・千曲川光の活躍を描いたコメディミステリーで、桐山は一華の命を狙う大陀羅一族のひとり・壬流古役を務めた。絵に描いたような嫌なヤツだが、ボンボンならではのツメの甘さがあり、母親には逆らえない小物キャラだ。本人はニヒルにキメているつもりが、千曲川に返り討ちにされ、痛い目に遭うという壬流古の残念感を表情豊かに演じて、視聴者を楽しませてくれた。

 この壬流古という役は、どこか『おじカワ』の鳴戸に通じるところがあって。ヒール的なポジションであっても視聴者に愛されるコメディ演技が、桐山は非常にうまい。

 『これは経費で落ちません!』では、営業部のエース・山崎を演じた。本当は研究開発の仕事がしたいのに、その抜群の営業センスが災いして営業部から異動できない山崎さんのジレンマを堅実な演技で見せつつ、終盤はその腹の底が読めないキャラクターを活かし、視聴者を驚かせる一面も。こうした二枚目の役どころがばっちりとハマるのは、端正なビジュアルを誇り、紳士的な仕草の似合う桐山漣だからこそ。

 そんなコメディ演技と二枚目キャラというふたつの武器が結実したのが、『いいね!光源氏くん』だった。同作で桐山が演じたのは、光源氏(千葉雄大)の良き友であり、恋のライバルでもある頭中将。紫の狩衣を華やかに着こなし、低音の効いた落ち着いた語り口で平安貴族の雅な雰囲気を表現した。ホストになって歌を詠むくだりなど、平安貴族ならではのピントの外れたところを、いたって大真面目に演じることで笑いを誘い、千葉の演じる光くんとはまた違う魅力を放っていた。

 放送中の『おじさんはカワイイものがお好き。』でも「ネコチャアアアン!」といとしのネコに文字通り猫撫で声をあげるところや、ネコになついてもらうために原宿まで行って短パンを大量に買い占めるくだりなど、本人は大真面目だからこそ観ている側は面白いシーンが連発。その一方で、ネコをきっかけに仲良くなった真純(藤原大祐)から「鳴戸さん、優しいよ」と言われて、うれしさがこみ上げる表情など泣かせどころもしっかりとつくって、Twitterでは「鳴戸さん」がトレンド入りをするほどの反響を巻き起こした。

 文句のない美形でありながら、コメディもシリアスもこなせる振り幅を持ち、きちんと脇を固められる桐山は、ドラマの制作チームからするとありがたい存在。その圧倒的な出演本数が、桐山が重宝されていることを証明している。良作が続き、追い風の吹いている今こそ、さらなるステップアップのチャンス。

 近年、星野源、高橋一生、田中圭、中村倫也と30代を迎えてからブレイクを果たす俳優が増えているが、実績と実力を兼ね備えた桐山にもその資格は十分ある。系譜としては、同じ『テニミュ』出身であり、33歳のときに『昼顔』(フジテレビ系)で飛躍を遂げた斎藤工が近いかもしれない。色気のある桐山なら、濃厚なラブストーリーもハマりそうだし、『おじカワ』のようなコメディ路線でさらなる当たり役も望めそうだ。

 いずれにせよ長年にわたって堅実にキャリアを積んできた分、一過性の人気で終わらず、息の長い活躍を見せてくれるはず。桐山漣は、これからますます面白くなっていく。

※桐山漣の「漣」はさんずいへんに連が正式表記

■横川良明
ライター。1983年生まれ。映像・演劇を問わずエンターテイメントを中心に広く取材・執筆。初の男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。Twitter:@fudge_2002

■放送情報
プラチナイト 木曜ドラマF『おじさんはカワイイものがお好き。』
読売テレビ・日本テレビ系にて、毎週木曜23:59〜0:54放送
原作: ツトム『おじさんはカワイイものがお好き。』(『COMICポラリス』連載中 既刊1~4巻(フレックスコミックス刊))
出演:眞島秀和、今井翼、桐山漣、藤原大祐、富田望生、愛加あゆ、水間ロン、佐藤正和
脚本:坪田文
監督:熊坂出
音楽:眞鍋昭大
チーフプロデューサー:前西和成(読売テレビ)
プロデューサー:小島祥子(読売テレビ)、熊谷理恵(大映テレビ)
制作プロダクション:大映テレビ
制作協力:大映テレビ
制作著作:読売テレビ
(c)読売テレビ
公式サイト:https://www.ytv.co.jp/ojikawa/

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