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三宅亮輔が舞台「365日、36.5℃」で初主演!「この役をやりきったら何でもできる気がする」

ぴあ

19/10/17(木) 18:00

三宅亮輔

脚本家・演出家・俳優として活躍する、気鋭の表現者・濱田真和の2019年の新作舞台「365日、36.5℃」は、田舎街で起こった小さな事件にまつわる少年たちの物語だ。「喪失と再生の青春群青劇」という濱田本人の言葉もあり、一筋縄でいかない雰囲気がプンプンするが、主役の“輪星”を演じるのは、MEN’S NON-NOの人気モデル・三宅亮輔。稽古初日から3日目、役作りに悩みもがく彼の等身大の姿を、ありのままに紹介しよう。

「僕のスタートは、MEN’S NON-NOのモデル。それからモデルとして3~4年活動していて、演技をすることになって、今でちょうど1年くらいですかね。楽しくやっているんですけど……正直、今回の舞台はやっぱり、一番キツいなって思います。キツいだけだと語弊があるかな、なんて言うんだろう……一番、思いは強い。だからこそキツい」

初主演の舞台に緊張感が高まっているからと思いきや、そういうわけではないという。

「初主演って言っても、周りがすごいことをされている方々ですから、そこにこだわりはないです。ただ、今年で24歳になったんですけど、『365日、36.5℃』の中で僕は輪星をいうキャラクターの14歳から24歳まで演じるので、ちょうど重なってきます。僕の14歳からの数年はサッカーばかりで、大会で涙したりのスポーツ少年の青春だったんですが、これまでの24年間のいろんなものを活かせていける、いいタイミングのお仕事だなと思います」

主人公・輪星に決まったのはオーディション。脚本・演出の濱田真和との対話がある意味、象徴的な出会いだった。

「オーディションは呼んでいただいたんですが、1時間枠があって。事前に台本をもらっていたけど、それをやったのは最後の15分くらいかな。本当はもうちょっと早く台本読みに入りたいなってたぶん、皆さん思われていたんでしょうけど、ただなんか延々と濱田さんと話してしまいました。濱田さんと僕はなんというか、“近い”んです。距離が近い、割と似ていると言えば似ている。濱田さんからもそれは言われました。あとは芝居に取り組む姿勢がいいとかも言ってたような……。まあ濱田さんは元美容師でいろんな経験をしていて、俳優もされてて、更に趣味がいろいろあるから、話がつきない。僕も趣味とか洋服の話とかさせてもらって。結局、気づいたら45分たっていました。しゃべり過ぎた(笑)」

濱田の話を聞く態度に、感銘を受けての45分だったそう。

「僕、金魚が好きなんで金魚の話をブワッてしたんですが、濱田さんが食いついてきてくれるんです。濱田さんって誰にでも対等に話すし、付き合ってくれるんですよね。でもそうじゃない人って世の中いっぱいいますよね。年齢というより、性格? 怖い人とか上からくる人とか、いるじゃないですか。でも濱田さんはそれがぜんぜんなくて、面白かったしやりやすかった。ただ脚本の抜粋をやったら『あー、難しいなこれ』って内心思いました(笑)。同時に『これができたら、絶対に今後の仕事にも人生にも意味がある』とも思ったけど」

更に濱田に惹かれたのは、彼の情熱、そして人生に圧倒されたから。

「なんか濱田さん自身の言葉というか、熱量がね、すごかった。脚本に関することで言えば、死がテーマになっているのだけど、その中で彼自身の体験が書かれていて、想像を絶するような人生を歩んできてるのがわかって……僕にはないことがたくさん詰まっていた。震災のことも入っていて、なんか、嘘つけないなって思いました。まあ、ご自身のことはメインというより裏テーマだみたいなこと、言ってましたけどね。あとワークショップ的なことをしたときに、キャスト全員で丸くなって、それぞれの身近な人が亡くなった話をしたんですが、その時にこれはやっぱり、半端なものはできないとわかりました。僕は身近な死の経験がなかったんですが、段階を踏んで役に入るきっかけになりましたね、あれは」

しかし役作りはそう簡単ではなく、このインタビューの最中も悩みの真っただ中にいた。

「今日で稽古を3日間くらいやっていますけど、正直あんまりというか……どんどんわからなくなる。話自体の理解というより、たぶん輪星という人物に対しての理解がつかめないのかな。なんかこう、わかりそうでわからなくて、でも投げ出す気はもちろんなくて、それはやっていきますけど、やっているうちにわからなくなる。濱田さんと話していると、内容はわかりやすいはずで、演じるポイントもあるはずだけど、わからない。難しいと思わないようにしているけど、難しい。稽古中、なんか物が食べられないんです、今。精神的にお腹がすいてられないのかな。まあ、帰りに焼肉食べたりしてますが(笑)」

▼稽古中の三宅さん

その中で、一筋の光がチラリと見えたこともあったようで……。

「僕の『わからない』と、輪星の『わからない』がクロスしたんですよ、昨日の稽古で。よくわからないと思いながらしゃべっていたら、最後に『わかんねえ』ってセリフがあって、なんか一瞬、感覚的に自分と役とが合わせられたという確信があった。そういうのが、連続していければいいのかなって思うけど、どうなるかなあ。青春群青劇って銘打っていますけど、どう演じるのか全部は見えない。演じるにあたり僕は僕のままでいたいし、一番輝いていたいから、一所懸命やるしかないですけどね。それほど長くはない役者史上とはいえ、間違いなく一番難しい役です。オーディション決まりましたってなったときは、楽しい期待ばっかりだったけど、今は『ヤバい、これやるのか俺』ってなってる(苦笑)。でもこの1ヵ月でまた変わるかもしれないから、先はわからないですね」

ここまで聞くと「365日、36.5℃」が難解で暗い話のようだが、決してそうではない。

「僕は、簡単に言えばすごく感動したんです。想像しながら脚本を読んで、感動して、これをやれたらすごいなって思いました。これを演じきれたら何でもできるんじゃないかってほど。手話を使っていたり、いろんな人が亡くなっていたりと、シリアスな場面や暗い場面もあるけれど、笑えるところもあるし、決して後ろ向きじゃない。昔はいろいろあったけど、ちょっと笑ってまではいかなくとも、普通に話せるようになるよね、みたいな感覚、覚えがありません? 

結局は明るい未来につながっていく、行かざるを得ない、そんな作品です。あとね、キャラクターがとにかく立っているので、絶対にお客さんは誰かに寄り添える。結果として、キャストと同じ目線・同じ反応をしてもらえるんじゃないかな。舞台と客席が、同じ熱量になれると思います」

死がテーマのひとつではあるが、突き詰めていくにつれ死へのイメージが変わっていった。

「僕の近しいところで亡くなった人がいないんですね。そこで僕の親友が、何年か前に友達を亡くしたので話を聞いたんですが、『最初はつらいけど、数年経つと心は変わる。仕事に行って、普通に生きていかなきゃいけないし』というようなことを言っていて、なんか考えたというか。日常生活に紛れる、死に出会っても普通に生きていくっていうことが、明るい未来とストレートに言ったら軽いですけど、結局は死も生活につながっていくのかなって。だから、死を扱いながらも見たら『これから頑張ろうぜ』って、なってもらえる作品だと思うんです。いろいろ抱えた人たちばかりが出てくるけど、最後は前向きな気持ちになるはずです」

芝居に苦しみながらも、結局は芝居の面白さを見出す三宅も、前向きさを失っていない。

「尊敬する先輩である、同じ事務所の高良健吾さんがが、役柄に自分を重ねることができなくてもいい、理解があれば演じられるとおっしゃっていたんです。他人のことを完全にわかって共感するって、無理じゃないですか。でも寄り添うことはできる。役柄を演じるうえでは、高良さんの言う通り『わからなくとも、理解する』が大事なんじゃないかな。僕も死に対しての思いを切実な経験としては持っていないけど、親友から聞いて僕なりに消化している。だからまさに、輪星を理解している最中に、僕はいるんです」

気鋭の表現者の情熱に、全力でぶつかる主演──奇跡のスパークが起こること間違いなしの舞台は、まさに一期一会。がむしゃらにもがく三宅が本番で見せるパワーを、ぜひ客席から確かめたい。

Superendroller企画・制作「365日、36.5℃」は、2019年10月30日(水)~11月4日(月)、「すみだパークスタジオ 倉」にて公演。初の主演を務める三宅亮輔の、会心の演技に期待したい。

撮影/木村直軌、取材/藤坂美樹、構成・文/中尾巴

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