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トロント映画祭:自分に正直に生きられない人へ『Violet』

ぴあ

『Violet』 (C)Courtesy of TIFF

成功するために自分はこうあるべき、そのためには今こうしないと、付き合う相手のステイタスも大切だ。そんなふうに「なりたい自分」を作り上げ、それに合わせて生きようとしてがんじがらめになっている人は、世の中にきっと少なくないのではないか。トロント映画祭で上映された『Violet』の主人公ヴァイオレットは、まさにそんなひとりだ。

映画の製作会社でエグゼクティブを務めるヴァイオレットは、何をするにつれても、頭の中で、ああしろ、こうしろ、それはやめておけというような声を聞く。その声を彼女は「委員会」と呼んでいて、無視しようと思っても無視することができない。ほかの人もみんな同じなのだろうと思って気を落ち着けようとしてきたが、友人に聞いたらそんなことはないと言われ、余計にパニックする。過去におかしたミスを忘れられず、自分の置かれた環境もきちんと判断できない彼女は、堂々めぐりをして苦しんでいくだけ。自ら書き下ろした今作で長編映画監督デビューを果たしたジャスティン・ベイトマンは、本編上映の前の挨拶ビデオで、観客に向け、この映画の主人公はあなたなのですと述べている。

ヴァイオレットを演じるのは、オリヴィア・マン。彼女のキャリアの中でも、最も見せ場の多い、美味しい役だと言えるだろう。彼女の頭の中の声は、ジャスティン・セローが担当する。ハリウッドの内側を見られる業界ものとしても楽しめる。

文=猿渡由紀

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