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THE FOREVER YOUNGは今の時代にこそ必要な“救世主” 『ビューティフルユース』を聴いて 

リアルサウンド

19/9/20(金) 17:00

 福岡県久留米市出身の3ピースバンド、THE FOREVER YOUNGがニューアルバム『ビューティフルユース』を9月11日にリリースした。このバンド名に、このアルバムタイトル……どんだけ“若さ”を押し出しているんだ!? と思うかもしれない。でも、実際に、若さゆえの恋も夢も汗も涙も醜さも怒りも、そして、それらをひっくるめた美しさも、今作では表現されている。

 クニタケヒロキ(Vo/Ba)の響く声、琴線に触れるメロディ、まっすぐすぎる歌詞、生々しいバンドサウンド。その全てが、愚直なまでに青い。その青さは、若い世代だけが重ね合わせられるものではなく、おじさんにもおばさんにも、おじいさんにもおばあさんにも、身に覚えがあるものだと思う。そのなかには、今も“青さ”が躍動し続けている人もいるだろうけれど、 残念ながら“青さ”が埃をかぶってしまっている人もいるかもしれない。『ビューティフルユース』は、その埃を吹き飛ばし、再び“青さ”を輝かせる一枚だと思う。すでに彼らのライブには、ライブハウスが似合うアクティブなキッズだけではなく、スーツ姿で拳をあげる男性や、後方でニコニコ聴いている女性もいるのだが、今作はさらに幅広い人たちに向けて扉を開け放っている。

 音楽のみならず、整えられた、小綺麗な、無難なものが多いこの世の中で、THE FOREVER YOUNGは明らかに異質だ。たとえるなら、世界のどこへ行っても同じものが食べられるチェーン店のカフェとは違い、THE FOREVER YOUNGはあの街にしかない、店構えは決してオシャレではない定食屋。だから食べるまではドキドキする。でも、一度味わうと夢中になってしまう。そういった異質さが、逆に彼らをこの時代で際立った存在にしていくと、私は思っている。そのひとつの証として、彼らのライブには、いわゆる“早耳”に見える女の子たちも多い。決してぱっと見オシャレでも小綺麗でもない(何度も失礼)彼らの楽曲を、女の子たちが同じようにがむしゃらに汗臭く歌いあげているのだ。それは、やっぱり彼らのようなバンドが他にいないし、彼らのようなバンドが求められているからだと思う。

 生きていると窮屈なことがたくさんある。その一方で、笑いが止まらないような幸せもある。若さとは、その全てを思い切り吐き出せることでもあると私は思っている。でも、今の時代、若い世代もそうだし、その上の世代はさらに、なかなか吐き出せる場所がなくなっているのではないだろうか。ちゃんとしなきゃいけない。大人にならなきゃいけない。そんな空気が蔓延しているなかで、THE FOREVER YOUNGは、大袈裟な言い方になるが“救世主”になり得るはずだ。

 何度もライブの話をするが、THE FOREVER YOUNGのライブは自由だ。ステージにあがる人もいて、時にはクニタケのマイクを奪って歌い出すこともある。無秩序に見えるかもしれない。でも、そこにはしっかりと意味がある。THE FOREVER YOUNGは“一人ひとりが吐き出せる場所”を作っているのだ。もちろん、ライブだけではない。『ビューティフルユース』をヘッドフォンで聴いているだけでも、クニタケのむき出しの歌に、オガワリョウタ(Dr/Cho)とタカノジュンスケ(Gt/Cho)の感情に誠実な演奏に、「これだ!」「ここだ!」といった言葉が、思わず口からこぼれてくる。

 『ビューティフルユース』での意表を突くバラード「TO THE END」でのオープニング。しみじみしていると思いきや、いきなり爆発する「笑っていようぜ」。いろんな人に〈くそったれ〉を連呼し、どしゃめしゃな演奏にたどり着いた挙句〈俺達一番くそったれ〉で締めくくられる「くそったれ」。パンクロックはロマンティック、という法則を体現した「アイラビュベイビー」。もともとはチューリップの名曲だが、吉田栄作のみならず、有頂天やMe First and the Gimme Gimmesなどにもカバーされてきた「心の旅」の、史上最高温度のカバー。最後は、彼らのひとつの楽器ともいえるシンガロングで埋め尽くした「一生青春突撃宣言」。

 全10曲、伝わってくる楽曲しかない。2000年代初頭にライブハウスを席巻した“青春パンク”という言葉が彼らのキャッチコピーになっていることから、当時の一過性のブームを思い出して、複雑な気分になっている世代もいるかもしれない。しかし、ある人が「パンクって全て青春だからね」と言っていたのだが、私はその言葉に尽きると思う。THE FOREVER YOUNGは、その究極をやっているのだ。また、幅広くも根っこはハードコアなバンドばかりを輩出している<STEP UP RECORDS>出身というところも、THE FOREVER YOUNGを信頼できる理由である。9月から11月にかけては、リリースツアーも行われる。〈ボロボロと 果てた時/またここで 逢えるさ/変わらない 俺は君と/永遠にその手繋ぐ/永遠に君へと叫ぶ〉(「一生青春突撃宣言」)――本作を携えた全国ツアー『ビューティフルユースツアー2019』が9月25日の宮城・enn 2ndから11月8日の福岡・Queblickまで計14公演行われる。ライブに足を運べば、必ずあなたの居場所が見つけられるはずだ。

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。

■リリース情報
『ビューティフルユース』
発売:2019年9月11日(水)
価格:¥2,500(税抜)
全10曲収録:
1.TO THE END
2.あの街へ帰れない
3.笑っていようぜ
4.くそったれ
5.アイラビュベイビー
6.ハートビート
7.心の旅
8.サヨナラにさよなら
9.ファンファーレ
10.一生青春突撃宣言

THE FOREVER YOUNG オフィシャルサイト

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