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和田彩花の「アートに夢中!」

六本木クロッシング2019展:つないでみる

毎月連載

第14回

3年に一度、森美術館で開催される「六本木クロッシング」は、日本の現代アートシーンを総覧する定点観測的な展覧会として2004年以来開催してきたシリーズ展。第6回目となる今回の「六本木クロッシング2019展:つないでみる」は、現代の表現を通して見えてくる「つながり」に注目し、1970-80年代生まれを中心とした日本のアーティスト25組を紹介する。対極のものを接続すること、異質なものを融合すること、本来備わっている繋がりを可視化することなど、アーティストたちが作品を通じてさまざまな「つながり」を提示した同展を観て、和田さんが感じたこととは?

イメージとは何か?
「目」の《景体》を通して考える

目《景体》2019 年 ミクスト・メディア 230×700×800 cm 展示風景:「六本木クロッシング2019展:つないでみる」森美術館(東京)撮影:木奥惠三 画像提供:森美術館

今回の展覧会で一番私が楽しみにしていたのが、大好きな現代芸術活動チーム「目」の作品です。

「目」は、2012年にアーティストの荒神明香さん、ディレクターの南川憲二さん、制作統括の増井宏文さんによって結成されたアーティスト集団です。個々のクリエイティビティを特性化し、連携を重視するチーム型芸術活動を行っているのですが、その作品はとても不可思議なものが多いんです。彼らによると、果てしなく不確かな現実世界が実感に引き寄せられる「体験」を作品として展開しているとのこと。

私はこれまでに、宮城県の牡鹿半島と石巻市街地を舞台にした、「Reborn-Art Festival 2017」でも「目」の作品を見てきましたが、今回も度肝を抜かれるような作品でした。

「Reborn-Art Festival 2017」で見た作品《repetition window》は、石巻の景色を見るもので、参加型。移動からすべてが作品として構成され、ただ目で見て楽しむだけのものではありませんでした。行程などすべてが綿密に彼らによって作り込まれた、とても繊細で大掛かりなものだったんです。でも今回は、目で見て感じる作品。《景体》と題された作品に私は恐怖を覚えました。目の前に広がるうねりや浮き沈みは波を想起させますが、自分の目の前にあるものの正体が不確かなまま作品と対峙したからだと思います。

でも、もちろん怖さだけではなく、「目」が今回はどんな仕掛けや、どんな思いで作っているんだろうと考えさせられました。

ただ作品を見るだけでなく、これが本当に波なのだろうか?なんてことを考えていました。波を模したように見えるけど、近づいてみると黒っぽく光沢のある素材が見えてくるんです。この作品の形態をはじめに見たとき波を想起させられたけど、これは本当に波なのだろうか?と。

そもそも「波」といわれて、みんなが同じ形態の「波」を想像するわけではないですよね。人によって、足をチャプチャプとつける穏やかな波だったり、サーフィンを楽しむ人が望むような高い波だったり、荒れ狂う冬の海の波だったり、川の波だったり……。でも見た瞬間に「これは波だ!」ということがわかったり、かと思えば、自分がそう見えているものの真偽を問うてみたり。そこで私は、景色や対象物に対して、みんなが持つイメージ、そして共通するものってなんなんだろうって考えさせられました。

もしかしたら、人によっては「波」とは思わないかもしれない。「山」だと思ったりするかもしれませんよね。それだけイメージっていうものは曖昧で、あやふやなものなんだということを突き付けられました。でもそこが面白いと思うんです。

「目」の作品は、そういうふうに私たちが思い込んでいるイメージを根底から覆すような、そんな力を持った作品が多いんです。彼らが言うように、これが確かな世界だと思っているものが、実はとても不確かであると目の当たりにさせられてしまうというか。人の五感を刺激する、特に視覚をすごく刺激してくるんですよね。そこが大好きだと再確認できました。

ロボットと恋する?
本当の愛ってなんだろう

林 千歩《人工的な恋人と本当の愛-Artificial Lover & True Love-》2016/2019年 ミクスト・メディア・インスタレーション サイズ可変 ビデオ:4分30秒 音楽:渋谷慶一郎 作詞:渋谷慶一郎、林 千歩 歌:林 千歩 展示風景:「六本木クロッシング2019展:つないでみる」森美術館(東京) 撮影:木奥惠三

そしてもう一つ印象に残った作品が、林千歩さんの映像作品《人工的な恋人と本当の愛-Artificial Lover & True Love-》。見てすぐに内容がわかるというところがすごくよかったです(笑)。

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