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つつんで、ひらいて

19/12/11(水)

我が編集者時代、もっともエキサイトした瞬間は、原稿をもらった時、装幀が上がった時、それらが一冊の本になって書店に並んだ時だった。 「選ばれてあることの恍惚と不安の二つ我に在り」、と言えばいささかオーバーだがそんな感じだった。 編集者、作家、書店員など、本作りの中心・周辺の仕事をしている人たちを取り上げた映画やテレビはあるが、装幀家を主人公にした映画は本作『つつんで、ひらいて』が初めてだろう(ドキュメンタリー映画だが)。監督は『夜明け』でデビューした広瀬奈々子。 40年間で約1万5000冊を手掛けた装幀家の菊地信義氏に、3年間密着したという。菊地氏といえば俵万智『サラダ記念日』をはじめ大江健三郎、古井由吉、浅田次郎、平野啓一郎ら人気作家の本を手掛けた日本を代表する装幀家だ。 菊地氏の仕事は原稿を読み込むところから始まる。用紙の選定、タイポグラフィとデザイン、ミリ単位のフォントの斜体具合まで、その思考と表現は天地を創造する神の手のように繊細だ。 資料には「世界初のブックデザイン・ドキュメンタリー」と書かれてあるが、その言葉にウソはない。 紙の感触とインクの匂いがいつまでも離れない、本の好きな人必見のドキュメンタリー映画だ。

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