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BTS(防弾少年団)、世界的ヒットの理由とブームの行方 K-POPライター4名が語り合う

リアルサウンド

18/12/30(日) 10:00

 BTS(防弾少年団)のアルバム『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』『LOVE YOURSELF 結 ’Answer’』がアメリカの「ビルボードチャート200」で1位を獲得するなど、K-POPが国境を越えて多くのリスナーに支持された2018年。そこで当サイトでも多くのK-POPに関するコラムを執筆している、まつもとたくお氏、桑畑優香氏、西門香央里氏、DJ泡沫氏のライター4名を招き、K-POPシーンの1年を振り返る座談会を行なった。前編となる今回は、BTSの世界的ヒットについてじっくりと語ってもらった。(編集部)

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■BTSの人気がアメリカにも広まった理由は?
ーー2018年は何と言ってもBTS(防弾少年団)の世界的ヒットが印象的でした。

西門香央里(以下、西門):BTSは以前から特に日本で人気があったイメージなので、急に人気になったというよりは徐々に来たのかな、と。アメリカのビルボードで1位を取った時は驚きましたが。その前からK-POPグループはアメリカ進出を試みていましたが、失敗を繰り返してきました。ようやくうまくいったのがBTSなのかもしれません。

DJ泡沫:BTSは意外にもチャートで1位を取るまでに2年ぐらいかかったんですけど、デビュー当時から同時期のデビュー組の中では断然目立っていて。ファンの間ではいつかブレイクするだろうな、という雰囲気はありました。

ーーいつ頃からブレイクを実感されてましたか?

西門:『WINGS』(2016年)じゃないでしょうか。

まつもとたくお(以下、まつもと):コンセプチュアルな内容で、少年から成長する過程を描いたようなアルバムでしたね。

DJ泡沫:ただ、その前の『花様年華』(2015年)で大きく路線が変わったんですよね。それまでは「ホルモン戦争」や「Boy In Luv(サンナムジャ)」のような、等身大の高校生の気持ち、自分の本音を歌っているような内容で。「I NEED U」(『花様年華 pt.1』収録)でかなり路線が変わりました。

西門:あれはびっくりしましたね。

DJ泡沫:こういう曲も歌うんだ、って。ティーザーを見て、BIGBANGの「HaruHaru」や「コジンマル(嘘、LIES)」をイメージした人も多かったようです。BIGBANGも初期はヒップホップ色強めだったのが、ちょっとメロディアスで切ない曲でブレイクして。韓国の若者やアイドルファンにはそういう曲が人気みたいなんですよね。それで、ファン層が一気に広がった。でも、世界的に売れ始めたのはやはり『WINGS』ですね。

ーーもともと韓国や日本では人気がありましたが、2018年はアメリカにも一気に広まった印象があります。

DJ泡沫:そうですね。ただBTSはデビュー直後から毎年アメリカに行ってライブをやっていたので、アメリカのファンの間では認知度が高かったと思います。だから多分、欧米の若者たちにも受け入れられる素地はあったんでしょうね。

桑畑優香(以下、桑畑):私がアメリカで彼らが何かを起こしてるな、と思ったのは『花様年華』(2015年)の時ですかね。洋楽を好んで聴いている人もBTSを気にしていたので、彼らの曲はいわゆるK-POPとはちょっと違うのかな、という印象を受けました。2017年の春頃には、ハリウッド系のメディアから防弾少年団って知ってますか? って聞かれたんですよ。その頃からもしかして他のグループと違う動きをしているのかな、と。「ビルボード200」で1位になった辺りから日本のメディアが一気にざわつき出したのは感じました。

ーービルボードといえば、「トップ・ソーシャル・アーティスト賞」を2年連続で受賞しましたね。

DJ泡沫:これまで6年連続でファンが熱狂的で有名なジャスティン・ビーバーが取っていた賞を彼らが受賞して、アメリカのメディアも驚いたと思います。ビルボードはストリーミングとダウンロードとフィジカルを分けて点数化しているのですが、BTSはフィジカルの割合がすごく高い。KPOPアイドルには多いですが4パターンくらいCDをリリースしていて、音源主流のアメリカでは韓国と同様にもはやグッズ扱いなんですよね。だから、BTSが単純にアメリカでアーティストとしてウケたっていうのとはちょっと違うのかなって。私はヴィジュアル面も含めてアニメなどの二次元カルチャーがアメリカで定着したのと似たような印象があります。

桑畑:私は先日アラブに引っ越した友人に10年ぶりに会って。「K-POPってあなたの国でも流行ってる?」って聞いたら、彼女もBTSのファンでした。そこでも世界的ブームを感じましたね。

DJ泡沫:英語圏で人気が出てインタビューなどが英語で訳されると、多くの国の人に広まるんですよね。それをさらに自分の国の言葉に訳して広げて。スペイン語圏と英語圏で人気が出ると、言語的にすごく他の国にも広まりやすいと思います。

桑畑:夏にアメリカに行った時に、留学している日本の高校生に「サマースクールにBTSのファンっていた?」って聞いたら、留学生や、いわゆるマイノリティの人たちにファンが多いかなって言われて。あとは南米とかに多いみたいです。とは言え、アメリカは広いから地域によって差が大きいかもしれません。ロスやニューヨークでは人気だけど、保守的な地域では広がりにくい、とかもありそうですね。

西門:欧米ではグループアイドル文化が盛んではないので、One Directionの前だと、Backstreet Boysまで遡ることになる。個人的には、BTSが白人でもなく黒人でもない、アジア系なのもポイントなのかな、と。アジア人だからこそ、ファンの間口が広いのかもしれません。

■BTSのブームは今後も続く?
ーーBTSの音楽性も人気の理由なんでしょうか。

まつもと:実を言うと、BTSがアメリカで人気が出た理由って音楽的にはうまく説明できていない。これまでも色々なK-POPアーティストがアメリカに進出してきていて、ようやく“アジア枠”ができた。そこにBTSが良いタイミングでハマったのではないでしょうか。今までのK-POPアーティストはアメリカにローカライズしようとして、最先端のサウンドを取り入れてうまくいかなかったですが、トレンドを気にせず、自分たちの母国語である韓国語で歌ったらヒットした。韓国語でビルボードで1位になったことが一番すごいことなんですよ。

桑畑:その前に「江南スタイル」(PSY)も韓国語でビルボード2位までいっているので。ちょっと耳慣れていたのかもしれませんね。あとはアーティストとのコラボも絶妙ですよね。誰々とコラボしてるから、というところから好きになった人は多いみたいですね。あとは「エレンの部屋」や「ザ・トゥナイト・ショー」などいつも見ているトーク番組にゲスト出演していたりとか。

DJ泡沫:アイドルとして先に好きになって、曲も良いじゃんってファンになるとか、その逆のパターンも多いと思うんです。それで両方ハマった時に熱狂的なファンダムが生まれるので、本人たちのキャラクターや素の表情も大事で。BTSはそういうコンテンツが本当に充実しています。YGエンターテインメントのアーティストが純粋な楽曲重視で、SMエンターテインメントがコンセプトとイメージ的なキャラクター重視だとしたら、BTSはその中間くらい。自分たちでも曲を作っているし、リアルなメンバー間の絆をコンセプトイメージとして売りにしたりも出来るという。

西門:絶妙な人間味が大事なんでしょうね。ビジュアルやサウンド、パフォーマンスなどが他のどのK-POPグループよりも優れているかというと必ずしもそうではない。でも、仲の良さは一番だと思います。そこにファンが想像できる物語があるのが良かったんじゃないでしょうか。

まつもと:僕は男ですけど、国連総会での演説を見たら、RMかっこいいな、と思いました。今、世界に風穴を開けているのはボーイズグループですよね。

DJ泡沫:以前は2NE1はじめ、ガールズグループの世界進出が盛んでしたが、BTSの存在でボーイズグループのファンのパワーの凄さがはっきりしたのかもしれません。スティーヴ・アオキも、BTSがここまで来たのはファンの力も大きいと。今はストリーミングの再生回数やハッシュタグの盛り上がりでも賞や1位が決まる時代になったので、ファンがどれだけ頑張るがダイレクトに賞に繋がるようになっている。逆に言えば、ファンを敵に回すと怖い時代になってきたんでしょうね。

ーーファンの力が巨大化しているというのは感じますね。他のグループでもイベントが中止になったりした例もありますし。

まつもと:それだけ人気があることの裏返しだと思います。世界で起こっているK-POPのムーブメントを日本がきちんと認識できていない、というズレもあって。まだ世界の動きに対してきちんとリンクできていないと感じます。

桑畑:RMの国連でのスピーチのツイートの下に「自殺しようと思いましたが、RMの声を聞いて思いとどまりました」というようなリプライが世界中から来ていたのも印象的でしたね。

DJ泡沫:2017から2018年は特にXXXテンタシオンやリル・ピープなど、アメリカのティーンの間でいわゆるエモラップが流行しましたよね。それに対してアイドルとしてはそういう部分に響く言葉を言ってくれる存在が不在だったのかも。BTSが歌う“10代の鬱屈”って、20年前から韓国アイドル業界ではよく歌われてきたことで決して新しいものではない。でも10代の悩みはどこの国でもいつの時代も変わらないから、同じメッセージでも響くんだと思います。韓国語でダイレクトに意味が分からないから好きな解釈の余地があって良いというのもあって、詩的にも味わえるし、言葉も魅力的に聞こえる。それは日本のK-POPファンもアメリカのファンも同じだと思います。

桑畑:ユニセフ含め、コラボレーションを上手くやって広い層にアピールしているのもすごいですよね。私自身、「K-POPの世界進出について知りたい」という仕事の依頼が来たりして、認知度が広まったな、と肌で感じました。あとは、2017年に、防弾少年団からBTSにグループ名を改めたのもあると思います。あの頃から着々と世界進出の準備を進めていて、表面化したのが今年の前半だったのかもしれないですね。

ーー彼らのブームは今後も続きそうでしょうか。

桑畑:メンバーはあと3年くらいしたら、入隊する可能性もありますよね。

DJ泡沫:2019年は弟グループがデビューするみたいで、それが1つのターニングポイントになるかもしれないですね。ただ、最近BTSを好きになったファンは他のK-POPには興味がないようなイメージです。ここが他のグループとちょっと違う。

まつもと:その論で言うと、BTSの人気が落ちたらもうアメリカでは次のK-POPグループの人気がやって来ないということになります。先ほども言ったように、僕は新しい“枠”ができたんだろうと思っています。だからそこに他のK-POPグループも入る余地がまだある。ただ、今まで弟分ってなかなか受け入れられてないから……。

DJ泡沫:そうですね。ただ、2016年ぐらいからBTSを好きな人たちは他のグループに流れていっているファンもいるので、他のグループがこれからくるという可能性は十分あると思います。

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