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いま、最高の一本に出会える

m-flo、中田ヤスタカ、Crystal Kay……Anime Expo「OTAQUEST」で証明したアメリカ人気

リアルサウンド

18/7/20(金) 8:00

 来年デビュー20周年を迎えるm-floが遂にアメリカで初公演を行った。カニエ・ウェストやファレル・ウィリアムスといったビッグアーティストたちとの親交も深いVERBALや、LAのクラブシーンでもDJとして活動している☆Taku Takahashiの活躍からしてみれば、今までm-floがアメリカでライブを行ってなかったことが逆に不思議なほどでさえあるが、この記念すべきライブは1日10万人以上の来場者が訪れる全米最大のジャパン・ポップ・カルチャーの祭典Anime Expoの目玉イベントでもあり、オリジナルメンバーであるLISAの15年ぶりの復帰という大きなお土産を携えて行ったとあって、長年待ちわびたアメリカのファンが熱狂、人気と実力を見せつけたライブとなった。

 7月にロサンゼルスで開催されるAnime Expoは全米最大の日本アニメ・コンベンションとしてスタートし、今年で27回目を迎えているが、今やアニメ・漫画だけに留まらず、映画や音楽、日本関連のポップ・カルチャーが一堂に会するということで毎年参加人数を増やし、昨年の1日あたりの来場数は前年より15%も多い11.5万人、トータルの延べ来場数は過去最高の35万人を記録している。

 特別イベントとして日本人アーティストによるコンサートが毎年行われ、今年最大のライブは初日の7月5日に行われた、このm-floプレゼンツ「OTAQUEST」であり、気温31度の熱暑となったにも関わらず、会場となったLA有数のコンサアートホールであるマイクロソフト・シアターには多数のファンが来場し大盛況を収めた。他に中田ヤスタカ、PKCZ®、Crystal Kayらをラインナップした総勢8組が出演、6時間に及んだ音楽フェスとなったが、知名度、キャリア、クオリティ、規模といった全てにおいてAnime Expo史上これまでになかった最高のイベントになったと言えるだろう。

 開場の午後4時、オープニングを飾ったのは初音ミクの楽曲で知られる八王子Pだ。大型ビジョンに映し出される映像とオーディエンスのLEDライトが、八王子Pの繰り出すテクノサウンドと見事なコラボレーションを生み出し「OTAQUEST」開幕を迎えるのにふさわしい盛り上がりを見せ、ラストソングの「Blue Star feat. 初音ミク」まで 45分の間、絶え間無く大歓声と手拍子が続いた。

 2番手はDJセット陣としては紅一点のYUC’e(ゆーしえ)。トリコロールのトップスにカットオフデニムというキュートなファッションで生ボーカルをしながらのプレイは、耳にも目にも「KAWAII」スタイル。弾けるようなリアルボーカロイドのようなライブにLAのオーディエンスも夢中、得意の英語を駆使してのコール&レスポンスも大いに盛り上がった。

 そしてUSでのクラブツアーの経験もあるDJ、Masayoshi IImoriの登場で会場が一気にダンスクラブと化した。ゲーム音楽とベースミュージックをシンクロさせたかのような独自の世界観のサウンドに、LEDライトを振る観客のダンスにも熱が入る。EDM/TRAPの可能性を広げる日本のクラブミュージックの水準の高さを世界に知らしめることに成功したといえよう。

 前半戦のラストを飾ったのは、3年連続でのAnime Expoのライブイベント出演となったTeddyLoid。数々の有名アーティストのコラボやリミックス、そして2016年にはSportifyで日本以外の海外で最もプレイされた日本人アーティスト5位という実績を引っさげ、J-POPからボーカロイド、ダブステップ、ヒップホップ要素を取り入れたエレクトロサウンド、さらには「もののけ姫 2018 feat. 米良美一」もドロップした壮大なステージング。途中、初音ミクのコスプレイヤーのダンサー二人が登場するというサプライズでも楽しませてくれた。

 そしてここからは本日のメインアクト4組が登場。まずは午後7時、遂に降臨したDJ MAKIDAI、DJ DARUMA、そしてVERBALを擁するPKCZ®に、オーディエンスのボルテージも一気に加速。PKCZ®もアメリカ初公演だが、MVでも着用していたお揃いの黒い法被姿がお祭りモードを掻立てる。カリスマ性溢れるVERBALの英語MCとラップが飛び交うなか、懐かしのM.O.P.からMigos、ケンドリック・ラマーの最新ヒットといったヒップホップ/トラップのリミックスを中心に、Anime Expoと親和性の高いエヴァンゲリオンやゴジラ、ゼビウス、映画『キル・ビル』からのサントラも取り入れる遊びゴコロ満載のセット。

 またThe ProdigyやSwedish House Mafiaといったテクノの王道、さらにはVERBALの別プロジェクトTERIYAKI BOYZ®「TERIYAKI BOYZ TOKYO DRIFT(FAST&FURIOUS)」も絡ませ、時代やジャンルを超えたセンスのほとばしる選曲のリミックスで容赦なく畳み掛けるセットはまさに圧巻だった。アメリカ西海岸を代表するラッパーのレジェンド、スヌープ・ドッグをフィーチャリングし、EDMの名門レーベルSpinnin’から2月に全米リリースされたオリジナル曲「BOW DOWN」も披露し、アメリカが日本のモンスターユニットの凄さを目の当たりにした。

 続いて登場したのはCrystal Kay。VERBALから「俺たちのシスターだ」と紹介され、そのままPKCZ®とのコラボレーションライブとなる嬉しいサプライズに突入。真っ白のミニワンピのセクシーなステージ衣装に身を包んだ歌姫Crystalの歌声は、圧倒的なパワーで日本のR&B/ポップ界を長年牽引してきた歌唱力と表現力を見せつける。大歓声に迎えられたパフォーマンスは貫禄と自信に満ち溢れ、新曲「幸せって。」や、アニメ『鋼の錬金術師』エンディングテーマ「Motherland」を歌いきった。当然MCは流暢な英語だが「LAのライブは初めて。本当に嬉しくって夢のよう」と、オーディエンスの熱い反応にCrystal Kayも喜びを隠せない。最後は「Boy friend Part II」で締めくくり、わずか20分のセットながらその存在感をアピールした。

 日本のエレクトロシーンの重鎮であり、世界に通用する音楽を作れる男、中田ヤスタカがステージに上がると「OTAQUEST」も佳境に。きゃりーぱみゅぱみゅやPerfumeのプロデューサーとしてヒットチューンを連発し音楽シーンに君臨しているだけではなく、DJとしても超一流であることは間違いなかった。プロデューサー自らが自分のトラックを超絶にカッコよくクラブリミックスし、そしてその職人技プレイを目撃できるライブというのは贅沢この上なく鳥肌が立つ。新曲「White Cube」や公式リミックスとしても認定されている「Zedd & Alessia Cara – Stay 」が、「にんじゃりぱんぱん」「TOKYO GIRL」「If you wanna」といった定番トラックと変わらず大きく盛り上がるのは、それぞれの楽曲のクオリティやダンスミュージックとしての構築レベルの計り知れない高さを証明するもので、流行を意識しつつもさらにトレンドやムーブメントを作り出していく中田ヤスタカならではのクリエイティビティを見せたアクトだった。

 そしてもちろんトリを務めたのはヘッドライナーである、お待ちかねのm-floだ。LISAが復帰して15年振りに最強のトライポッドが完全復活して話題となっているだけにファンの熱気も尋常ではなく、正直なところアメリカにもm-floのファンはこんなにも多いのかと驚いた。会場にはm-floや「LISA」の名前の入ったTシャツを着たファンの姿も多数見受けられた。

 遂に始まったオープニングはVERBALと☆Takuの二人による「gET oN!」でいきなり会場のボルテージもマックスの盛り上がり。さらに「d.w.m」をパフォーマンスして「m-flo loves」時代からのトラックでたたみこみ、途中「she loves the CREAM」といったレアトラックを挟みながら「Lotta Love」の流れで、楽曲の層の厚さをみせつけてくれた。VERBALはPKCZ®として、Takuは中田のセットですでにステージ上に顔を出していたが、やはり二人揃ったケミストリーは神がかったサウンドとグルーブを次々と生み出していく。VERBALも反応のいいオーディエンスへの煽りをエンジョイしている様子だ。

 長年、アメリカ公演を待ちわびていた観客の声援で「初めてアメリカでライブができたことを誇りに思っている。Thank you, LA!」とのVERBALの言葉もかき消されるほどだったが、MCではPKCZ®のプロデューサーでもあるEXILEのHIROへ「こんなに素晴らしいイベントをサポートしてくれて本当にありがとうございます」と感謝の言葉も。続いてCrystal Kayも再登場して大ヒット曲「REEEWIND!」をコラボレーション、今宵のライブのプレミアム感に拍車をかけた。

 そして「DOPAMINE」「The Love Bug」のパフォーマンスに続き、IimoriやYUC’eもステージに上がって会場もますます熱気を帯びたところに、いよいよ登場したのがLISAだ。オーディエンスからLISAコールの大声援が起こる中、記念すべき3人での最初のパフォーマンス曲はLISA脱退後に4年半ぶりのコラボになった「TRIPOD BABY」、その後m-flo10周年記念のスペシャルライブにLISAが参加した時に共演した「SOUND BOY THRILLER」と、復活の歴史をたどるような選曲に思わずグッとくる。3人のパフォーマンスはオーガニックでいて、パワー溢れるものだったのはいうまでもない。「How Like Me Now?」「been so long」「Hands」といった初期作品のパフォーマンスののち、2月にリリースされたLISA復帰後第一弾シングル「No Question」では、言葉一つ一つを大切に歌い上げるLISAならではのボーカルが染み渡る。そして最後となった名曲中の名曲「Come Again」では会場のシンガロングも一段と大きくなり、大歓声の中でm-floプレゼンツ「OTAQUEST」は幕を閉じた。

 Anime Expoだけに映画『ASTRO BOY 鉄腕アトム』や『アップルシード』へ提供した楽曲でm-floを知ったアメリカのファンも多かったかもしれないが、それらの楽曲には敢えてこだわらず、いい意味で媚びない選曲でリアルなm-floの姿で勝負して大盛況を収め、しかもヒップホップの本場であるアメリカ・ロサンゼルスでのライブを成功させたと言うことには、「アメリカ初公演」以上の深い意義があるだろう。

 一つのプロモーションが全国的に行き渡りやすい日本と違って、アメリカの音楽界で成功することは、実はアメリカ人にだって容易なことではない。どんなビッグアーティストでも最初は各地方を地道にツアーしプロモーションすることから始めなければいけないし、広大なアメリカは人種も音楽テイストも多様だ。しかしAnime Expoは全国から来場者が集まり、日本との親和性も強く、今までのアメリカ進出の難易度を効率よく克服してくれるのに絶好の機会。m-floがこのAnime Expoを初アメリカ公演のイベントに選んだことは、非常に賢明な決断だったように思う。

 今年のAnime Expoで発表されたガンダムの実写版ハリウッド映画化のニュースが世界的な話題になったように、Anime Expoはアニメ業界だけではなく世界のエンタメ業界が注目するイベントになっている。日本人アーティストのアメリカ公演はオーディエンスのほとんどがアメリカ在住日本人、ということも珍しくはないが、世界中から注目されているAnime Expoのオーディエンスの圧倒的大多数、ほとんどがアメリカ人であるということも最後に付け加えておきたい。

(取材・文=仲野千晶/写真=鈴木香織)

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