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ドリカム 中村正人×よみぃ『太鼓の達人』特別対談 超難関曲「あなたとトゥラッタッタ♪」の秘密に迫る

リアルサウンド

19/12/20(金) 19:00

 DREAMS COME TRUEの楽曲「あなたとトゥラッタッタ♪」が音楽ゲーム「太鼓の達人 グリーンver.」の超難関曲として話題になっている。11月にはゲームの音源が原盤に差し代わるなど、原曲の魅力が“ドンだー”(「太鼓の達人」ユーザー)に伝わる現象も起きているようだ。

参考:DREAMS COME TRUE 中村正人×よみぃ 『太鼓の達人』対談動画

 リアルサウンドでは、DREAMS COME TRUEの中村正人と、ピアニスト/YouTuberといった様々な活動を行う作曲家(コンポーザー)・よみぃの対談を企画。「あなたとトゥラッタッタ♪」と「太鼓の達人」を中心に、ゲーム音楽に対するスタンス、SNS時代における音楽制作との向き合い方などについて語り合ってもらった。(森朋之)

■「あなたとトゥラッタッタ♪」の裏譜面はとにかく難しい

ーーDREAMS COME TRUEの楽曲「あなたとトゥラッタッタ♪」が音楽ゲーム「太鼓の達人 グリーンver.」の超難関曲として話題になっています。

中村正人(以下、中村):最初はTwitterで知ったんですよ。ドリカム関連のことをエゴサしてたら、「太鼓の達人の(「あなたとトゥラッタッタ♪」の)裏譜面(本来の譜面とは別で用意されている難易度の高い譜面)が最低だ」「ドリカムに謝れ」という書き込みがあって(笑)。

よみぃ:「最低」というのは、良い意味ですね。「あなたとトゥラッタッタ♪」の裏譜面はとにかく難しいので。譜面自体が物珍しいというか、音符の配置が特徴的なんですよ。

中村:特徴的というのは、“トゥルルルルル~”というロールのことだよね。あれはドンだー的には何て言うの?

よみぃ:ロール処理ですね。右手で2回、左手で2回を高速で叩かないといけないんですけど、太鼓の達人を極めし“ドンだー魂”の高い者どもは平気な顔をしてやるんですよ。

中村:打楽器の用語でいうとパラディドルに近いのかな。

よみぃ:そうですね。“結果発表!”のときのドラムロールとダブルストロークをミックスした奏法というか。おそらく昔からやっていた人はいたと思うんですが、この技が広く認知されたのは、ロール処理を使わないとフルコンボできない曲が登場したからなんです。そうなってきたのは僕が高校生の頃だから、2014年、2015年あたりですね。そんななか、平成最後の超難関曲としてさらに譜面が強化されたのが、「あなたとトゥラッタッタ♪」というわけです。マサさんは「太鼓の達人」をプレイしたことありますか?

中村:あるよ。娘が大好きだから、ゲームセンターで一緒にやったことがあって。曲を選ぶ段階で、バチで叩かなくちゃいけないでしょ? それがもうわからない(笑)。

よみぃ:(笑)。制限時間がありますからね。

中村:そうそう、焦っちゃうよね。でもね、実は僕、音ゲーの始まりの時期に少し立ち会ってるんだよ。あるゲーム会社の有名な方が僕のところに来て、「音とゲームを一緒にすることはできないかな」とプレゼンされて。そのとき僕がアドバイスしたのは、「たとえばドラムのタイミングに合わせて叩くと、点が入るというのはどうですか?」ということだったんだけどね。

よみぃ:ちょっとそれ、詳しく教えてほしいです。どれくらい前の話なんですか?

中村:22、3年くらい前かな。ようやくグラフィックが3D的に動き始めた頃の話だよ。

よみぃ:そうなんですね! それが音楽ゲームの最初のアイデアだったとすれば、マサさんは音ゲーの教祖ですね。そんな方と「太鼓の達人」について語り合えるなんて光栄です。

中村:(笑)。まさか譜面が画面上で走るなんて想像もしてなかったけどね。ここまで進化するとは驚きですよ。この進化は、作った人も想定してなかったんじゃない?

よみぃ:それは間違いないですね。僕が初めてプレイしたのは小学校のときですけど、2、3年くらいのペースで進化しているんです。まず、最初に「太鼓の達人」をプレイした第一世代がテクニックを極める。その人たちが大人になる頃に次の世代が出てくるんですけど、この世代は第一世代が作ってきた技をすでに習得していて、強化された状態で始まっているんです。当然、第3世代、第4世代と進むにつれて技はすごくなるし、譜面を作っている方々もそれに合わせて譜面の密度を上げて。近年の難しくなる兆候はものすごいものがありますね。「あなたとトゥラッタッタ♪」(裏)もそのひとつです。

中村:次の世代が出てきて、どんどん難易度が上がるというのは、体操競技みたいだよね。塚原跳び(体操選手の塚原光男が1970年に初めて披露した跳馬の技)が登場したときは人類史上初だったけど、次の世代はそれを当たり前のようにやって、新しい技を積み重ねてきたわけだから。

よみぃ:そうですね。今後さらにレベルが上がるのか、どこかで最上限に達するのかは、プレイヤーとして興味があるところですが。

■中村正人、マスター音源で「あなたとトゥラッタッタ♪」を解説

ーーできれば、よみぃさんに「あなたとトゥラッタッタ♪」の裏譜面を実演してもらいたいのですが……。

よみぃ:え、ホントですか……? できるかな……。

中村:よみぃでも恐れるくらいの難しさなんだ?

よみぃ:かれこれ10年くらいプレイしてますが、「あなたとトゥラッタッタ♪」の裏譜面はできるかどうか不安ですね。

中村:やってよ。お願い。

よみぃ:マサさんがそう言うなら、わかりました。僕に任せてください!

(よみぃ、備え付けのバチでプレイ。ロール処理も完璧にクリアし、見事にフルコンボ達成!)

よみぃ:やった! これが太鼓の達人マスターだ!

中村:すごいね!

よみぃ:よくフルコンボできたな……。

ーー中村さんは、「あなたとトゥラッタッタ♪」が「太鼓の達人」で盛り上がっている状況に対して、どう感じていますか?

中村:最初に「ドリカムに謝れ」のツイートの話をしたけど、ぜんぜん謝る必要はなくて。いまはオリジナル音源を使ってもらってるんですが、その前のバージョンもしっかり(原曲のアレンジを)コピーしてくださっていたんですよ。じつは今日、マスターの音源を持ってきたんですけど(とパソコン上のデータを見せる)。

よみぃ:すごい! こんなにトラックを使ってるんですね。

中村:そうそう。これがキックの音で、こっちがスネアの音なんだけど、これだけでも「太鼓の達人」の音源に近いでしょ。

よみぃ:ホントですね。ドンだーのみんな! このスネアのロールは本来、ドラム用の細いスティックで演奏するものなのに、我々は太いバチでやっているんだ!

■プレイしたときに挑戦しがいのある曲を書こうとする

中村:(笑)。間奏パートのリズムも、原曲のアレンジに忠実なんですよ。よみぃは音ゲーの曲を作ってるけど、プレイすることを考えて作ってるの? それとも、単純に作りたいものを作ってる?

よみぃ:いまのマサさんの話でいうと、フラットに自分が作りたいものを作ってますね。「D’s Adventure Note」(よみぃが15歳のときに発表し、「太鼓の達人」に使われたオリジナル曲)は、人生で初めて作った曲なんです。

中村:そうなんだ。何の機材を使ったの?

よみぃ:DAW(Digital Audio Workstation)の30日無料体験版です。

中村:なるほど。いまは簡単で使いやすいDAWソフトが普及していて、誰でも曲が作れる環境がありますからね。

よみぃ:難しかったですけどね。MIDIキーボードを持ってなかったから。

中村:マウスで音を置いていったんだ(笑)。

よみぃ:はい(笑)。作りたいように作ったんですけど、すでに「太鼓の達人」をやっていたし、無意識のうちに(「太鼓の達人」向きの)「そういうリズムになったらいいな」と思っていたかも。「よみぃさんの曲はプレイしていて乗れる」「何回もやっちゃう」というコメントが多いのも、そういうことかなと。

中村:よみぃのクリエイティビティのなかで、「太鼓の達人」はかなりでかいんだね。たとえばクラブのDJは、当たり前のように踊れる曲を作るでしょ? 実際にクラブで踊っているお客さんを見て、「こういう曲があれば、もっと盛り上がるな」と思って次の曲を作る。そういうことに似てるよね。他のプレイヤーを見て、「こういう曲を作ってみよう」と思うこともあるでしょ?

よみぃ:そうですね。音楽ゲームのコンポーザーはそのことを意識しているし、半数以上は音ゲー大好きなプレイヤーでもあると思うんです。なので、実際にプレイしたときに挑戦しがいのある曲を書こうとするのかなと。プレイヤーの欲望も果てしないですからね。フルコンボだけでは満足できず、次は“全良”を目指すようになるので。

■「ソニック」の音楽のコンセプトは“映画のサントラ”

ーー中村さんが「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」(1991年に発売されたアクションゲーム)の音楽を担当したときは、どんな状況だったんですか?

中村:ハードもソフトも全然だったからね。いまは考えられないけど、最大同時発音数が5音、6音くらいだったんですよ。コードで3つ使ったら、残りの音でドラム、ベース、メロディを入れなくちゃいけない。さらに音を足そうとすれば、微妙に調整して、隙間を作る必要があったんです。

よみぃ:たとえば「ここで一発シンバルを入れよう」というときは、他に鳴っている音を減らして、スペースを空ける必要があった?

中村:そう。しかもサンプルの音なんて存在しないから、ハイハットもシンバルも、すべての音のデータを0から作ったんです。当時は「スーパーマリオ」が先行していて、「ソニック」の制作陣はそれに対抗して作られたチームだったんだけど、大変でしたね。限られたスペックだからこそ、おもしろかった部分もあったと思うけどね。

ーー「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の音楽はフライング・ロータスやサンダー・キャットなどがリスペクトを表明するなど、海外でも高く評価されています。

中村:ようやく映画(2020年公開予定の映画『ソニック・ザ・ムービー』)にもなるしね。「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の音楽のコンセプトは“映画のサントラ”だったんですよ。グラフィックを見たときに、「これは映画だな」と思って、短編映画の音楽を作るような感覚で制作していたので。でも、いまはゲーム音楽も他の音楽も一緒じゃない?

よみぃ:「太鼓の達人」のオリジナル曲を(ゲームを)知らない人が聴いて、「いい曲だ」と思う、みたいなことですよね。個人的な目線でも、確かにそういう感覚になってる気がしますね。

中村:アクションゲームとRPGの違いみたいなものはあるけど、ゲーム音楽も“音楽ありき”になってるんじゃないかな。よみぃは作曲家であり、ゲームのプレイヤー、YouTuberとしても活躍しているけど、これからよみぃの表現はどこに向かうの?

よみぃ:どこだろう……。いままでのことを考えてみると、高校生のときにゲームセンターに通いはじめて、その頃に作った曲が「太鼓の達人」に収録されて。「太鼓の達人」のファンでもあったから、ふたつの喜びが融合して、とんでもなく嬉しかったんですよ。そういう幸せな出来事があって、次に僕が何をやったかというと、自分の曲でフルコンボを目指すことだったんです。「太鼓の達人」に入ってるのは「D’s Adventure Note」「おにぎりはどこかしら」の2曲なんですが、ユーザー精神に則って全力を注いで、どちらも“全良”できるようになって。これからも音ゲーはどんどん難しくなると思うし、プレイヤーたちに“最難関”と言われる曲を作って、それに自分も挑戦すること続けたいですね。

中村:どこまでも“自分”でいけるんだね。たとえばモーツァルトも、あんなに難しい曲を作って、しかも自分で弾いてたでしょ。いまモーツァルトの曲を弾く人たちは作曲の部分はないけど、彼は自分で書いて、弾いてた。よみぃがやってることは、それと似てるよね。我々の場合も、プログラミングで曲を作って、それを実際に叩いたり、弾いたり、歌っているから、同じかもしれない。

よみぃ:なるほど。

■SNS時代における音楽制作のスタンス

中村:ベースにしても、制作のときは打ち込みで作って、それを自分でコピーするとこから始まるからね。自分たちでアレンジした曲を生のバンドで再現することに命をかけて、“全良”するところをお客さんに見せるのがライヴだから。でも、音楽業界は変わりましたね。いくら曲を作っても、YouTubeやSNSで発信できないとどうしようもないでしょ。自分でアップロードすることを含めて、発信しないと何も始まらないから。その結果を数字で見て、「もっと聴いてもらうには」と工夫して。いまの表現者には、それが基準になってますよね。先はどうなるかわからないし、SNSの時代は明日終わるかもしれないけど、違う情報の伝達方法が出てくるまで、この時代が続くわけだから。

よみぃ:とんでもないSNS時代ですよね。そんな時代に生まれた僕がちょっと感じているのは、SNSのリテラシー、空気感みたいなものと、音楽界の芸術性が噛み合うのは難しいなと。パソコンがなかった時代は、楽器の音を聴いて、その特性を理解しながら五線譜に書いていた。そこに個性が表れていたと思うんですが、SNSを介した発表の場は、まったく違った仕組みなので。そこで頭が混乱してしまうことがよくあります。

中村:そうだよね。曲を流したときに、ユーザーに判断してもらえるのは最初の5秒。そこで興味を持ってもらえれば、10秒、15秒、上手くいくと3分聴いてもらえる。芸術家にもいろいろあるけど、もし音楽で食っていこうと思ったら、最初の5秒にぶち込まなくちゃいけない。それはドリカムもやっていることだし、こうやって「太鼓の達人」に取り上げてもらえるのもすごく嬉しいんですよ。ドリカムを知っていようがいまいが、みんながワーワー言いながら楽しんでくれている。それが僕らの一番の目的ですからね。

ーーしかも「あなたとトゥラッタッタ♪」(裏)は、平成最後の超難関曲としてプレイヤーのみなさんが高く評価していて。

中村:ありがたいよね。あの曲はマーチにしたかったんだけど、(NHK連続テレビ小説『まんぷく』の主題歌としてオンエアされた際)「朝からマーチなんて聴きたくない」「元気よすぎてウザい」という意見もあったんです。でも、ドンだーたちの評判はすごくいいし、YouTubeのコメントも8割方がドンだ―の書き込みなんです。ウチの吉田(美和)が踊っているのを見て、「この赤い服の人、踊り上手い」という書き込みもあったり(笑)。

よみぃ:曲名もいいですよね。「あなたとトゥラッタッタ♪」って最後に音符マークが付いていて、そこから譜面に入っていくのもスパイスになってるので。あの曲のタイトルが「平成最後の悪魔の譜面」だったら、ここまで人気になってなかったかなと……。

中村:(笑)。吉田はタイトルにもすごくこだわってますからね。最後の“♪”もそうだし、“トゥラッタッタ”という言葉を創造したのもそうだし。「サンキュ.」の最後に“ドット”を入れたのもそうだけど、それを含めてアートだから。僕の目的は吉田の歌の世界をみなさんに伝えることだし、ドンだーのみなさんに伝わっているとしたら、こんなに嬉しいことはなくて。よみぃとこうやって対談できることも本当に嬉しいし、幸せですね。

よみぃ:こちらこそありがとうございます。ぜひ、マサさんにもフルコンボを目指していただいて。

中村:まずはコレ(「太鼓の達人」本体)を買いますよ。虎の穴を作って自主練します(笑)。(森朋之)

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