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UVERworldは変わらないために変わり続けるーーアルバム『UNSER』大胆にして革新的なサウンドへの挑戦

リアルサウンド

19/12/18(水) 7:00

 “期待に応え、予想を裏切る”“変わらないために変わり続ける”。常に革新的な表現にトライし、ファンを惹きつけ続けるアーティストに向けられるこれらの常套句は、UVERworldにこそよく似合う。

 楽曲のサウンドメイク、メッセージ性、ライブパフォーマンスなど、音楽活動に関わるすべてのファクターを精査することで、こちらのイメージを大きく超える前進を続けてきたUVERworld。そのスタンスがこれまで以上に強く反映されているのが、12月4日にリリースされたアルバム『UNSER』だ。このタイトルは、ドイツ語の「UNSER(俺たちの)」と英語の「ANSWER(答え)」を組み合わせた造語。”俺たちの答え“という思いを込めた本作には、音楽シーンの半歩前を進み、オーディエンス(そして、彼らをリスペクトする下の世代のアーティストを)牽引しているUVERworldの新たな表現がはっきりと刻み込まれている。

(参考:UVERworld、誠果 生誕祭ライブに見るメンバーとの絆 19年間の歩みを凝縮したステージを振り返る

 バンドが次のタームに突入したことを高らかに告げる『UNSER』。本作に至る最初のスタートは、2018年7月に発売されたベスト盤『ALL TIME BEST』だったと思う。「7th Trigger」「CORE PRIDE」「PRAYING RUN」「在るべき形」「7日目の決意」といったアンセムが収められた本作は、文字通り、この時点での彼らの集大成だった。ヘビィロック、エレクトロ、ヒップホップなどを融合させたハイブリッドなバンドサウンド、TAKUYA∞の生き方、考え方、価値観などが色濃く描かれたリリックを軸にしたUVERworldの音楽性は、2018年の時点で完全に確立されていたと言っていい。

 音楽性の確立は、バンドにとって大きな分岐点でもある。同じスタイルを継続することで表現を深めるか、まったく違うテイストを持ち込むことで、さらなる前進を続けるかーーどちらが良くてどちらが悪いという話ではないが、UVERworldは当然のように後者を選択した。変化のポイントは、現行のヒップホップ、R&Bへのアプローチ。

 ポスト・マローン、チャンス・ザ・ラッパーに象徴される現在の海外シーンの潮流を取り入れながら、新たなサウンドを提示する。その刺激的なトライアルは、『ALL TIME BEST』以降にリリースされたシングル群『ODD FUTURE』『GOOD and EVIL/EDENへ』『Touch off』に明確に表れていた。これらの楽曲はすでにライブでも重要な場面でプレイされ、オーディエンスの熱狂を生み出している。これまで親しまれてきた楽曲とはまったくテイストが異なるが、メンバーの音楽的欲求に則した“今やりたいこと”を真っ直ぐに表現し、それをしっかりと受け止めるファンの関係は本当に理想的だ。

 前作アルバム『TYCOON』、ベストアルバム『ALL TIME BEST』を経て届けられた本作は、シングルの制作で得たスキルと経験をさらに研ぎ澄ませ、UVERworldの新たなスタイルを打ち立てた作品だ。まず記しておきたいのは、海外のクリエイターとのコラボレーション。特にアメリカのポップバンド、After Romeoのフロントマンであり、K-POP、J-POPのアーティストに楽曲提供も行っているドリュー・ライアン・スコットの存在はきわめて大きい。たとえば1曲目の「Making it Drive」。インディーR&B、EDM、ヒップホップを結合させたトラックメイク、ラップと歌をナチュラルにつなぐボーカルが印象的なこの曲は、アルバムを象徴するナンバーの一つであり、彼らが目指している音楽性を端的に示している。

 単に海外のトレンドを取り入れるだけではなく、これまでに培ってきた有機的なバンドサウンドとしっかり結びつけているのも本作の聴きどころ。それを可能にしているのはもちろん、メンバー個々のプレイヤビリティだ。高い技術と独創的なアプローチを併せ持った彼らの演奏は、『TYCOON』以降の音楽的トライ&エラーのなかでさらなる進化を果たしている。個人的にもっとも印象的だったのは、リズムの多様性。プログラミングされたビート、シンセベースと生楽器のグルーヴが融合した本作のリズムは、まさに唯一無二だ。

 TAKUYA∞のリリックにも、現在の彼らの姿勢が明確に表出している。〈少し報われた昨日に 戻りたいなんて思わなくて良い〉(「Making it Drive」)というフレーズからは、過去の成功にとらわれず、目指すべき場所に向かう意思が感じられるし、〈もう終わっているロックバンド自体?〉〈ならなんで毎日こんなに俺達は楽しいんだよ?〉(「無意味になる夜」)には、ロックバンドにこだわり、前進を続けることへの矜持が込められている。すべてに共通しているのは、自分たちの未来を信じ続けるマインド。同じ場所に留まるのではなく、果敢に変化することで、まだ見たことがない未来を掴む取る。そんな強靭な精神性こそがUVERworldの核であり、本作の強度につながっているのだと思う。

 UVERworldは11月23日から全国アリーナツアー『UVERworld UNSER TOUR 2019』をスタートさせている。さらに12月19日、20日には東京ドーム2DAYS公演を開催(20日はなんと、男性客のみの『KING’S PARADE 2019 男祭り FINAL』)。大胆にして革新的なモードチェンジを果たした本作の楽曲がライブという場所でどう表現されるか、そして、UVERworldのステージにどんな変化を与えるか、興味は尽きない。はっきりしているのは、アルバム『UNSER』を作り上げたことで彼らがまったく未知のレベルにたどり着いたということ。常に半歩先を行くUVERworldはここから、さらに刺激的なシーズンを迎えることになりそうだ。(森朋之)

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