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デビュー1年で豪ソングスチャート制したTones And I、「Dance Monkey」で世界の心掴むか

リアルサウンド

19/9/28(土) 8:00

 Spotifyでは再生回数に基づくデイリーチャート、そしてユーザーがSNS上でシェア等した回数に基づくバイラルデイリーチャートがありますが、世界中のユーザーを対象とするグローバルチャートにおいて、デイリーおよびバイラルデイリーの双方で最近常時5位以内に登場しているのが、今回紹介するTones And I(トーンズ・アンド・アイ)「Dance Monkey」。

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 一度聴いたら忘れ難い声。Tones And Iはその声で路上から音楽フェスまで、どんな場所をも掌握してきました。MVのインパクトも絶大で、曲がはじまると呼吸器をつけていた老人が蘇ったかの如く動きまくります。そしてこの老人の茶目っ気たるや、かつて日本でヒットしたいじわるばあさんを思い出した次第。この老人、どうやってキャスティングしたのでしょう。

 Tones And Iはオーストラリア出身のトニー・ワトソンによるソロプロジェクト。オーストラリアではストリートパフォーマンスをバスキングといい、パフォーマーはバスカーと呼ばれるのですが、彼女はバスキングに必要な許可証を昨年取得すると、初めて訪れたバイロン湾でのライブが成功。仕事を辞めてバスキング一本で勝負する道を選び、ワゴン車で生活しながら自身の音楽を極めていきます。

 そして昨年秋、Tones And Iは大道芸人のチャンピオンを決めるイベント『Battle of the Buskers』を制覇。バスカーのナンバーワンとなったのです。

 Tones And Iのレコードデビューは今年になってから。デビュー曲「Johnny Run Away」のMVでは寝泊まりしていたワゴン車やバスキングの様子、レコーディング風景そしてアーティスト写真撮影の模様が記録され、彼女のデビューまでの歴史を辿ることが出来ます。

 地元の人気ラジオ局Triple Jの推薦もあり、オーストラリアのソングスチャート(ARIA)では最高12位を記録した「Johnny Run Away」に続いてリリースされたのが「Dance Monkey」。この曲がオーストラリアで如何に支持を集めているかはこの夏行われた地元の音楽フェス、『Splendour In The Grass』でのパフォーマンスを観れば一目瞭然。ラジオ局Triple Jの公式YouTubeアカウントにその様子が掲載されています。

 バックバンドなし、コンピューターとシンセサイザーのみを携えたった独りでステージに立ち、2万を超える観客を熱狂へと導くTones And Iの姿に、デビュー以降もバスキングのスタイルを貫く彼女のポリシーが見て取れます。大サビからサビに戻る瞬間、観客が一斉に飛び跳ねる様子は感動必至です。

 ところで、Tones And Iの右手のタトゥーをフェスの映像で確認出来るのですが、見覚えはありませんか。実は「Dance Monkey」のMVで弾けているあの老人の右手にも同様のタトゥーがあるのです。果たしてTones And I本人が老人を演じたのかは明かされていないようですが、仮に彼女だとしたら話題作りに長けていると言えます。実際、6月の楽曲リリース、7月のフェス出演を経た直後から「Dance Monkey」はオーストラリアソングスチャートを制覇し、現在まで8週連続で首位を獲得しているのです。国外の歌手が首位に立つことの多いオーストラリアソングスチャートで地元出身者が制したのはディーン・ルイス「Be Alright」以来およそ1年ぶり。また先月末には「Dance Monkey」も収録したデビューEP『The Kids Are Coming』をリリースし、こちらも地元アルバムチャートで最高3位を獲得しています。アメリカのビルボードソングスチャートではリミックス等を追加投入して首位獲得に至るケースが多く、チャート制覇のためにはそのような”仕掛け”が欠かせなくなってきましたが、MVの面白さで興味を惹かせるのはある種の仕掛けと言えるかもしれません。そして興味を持った方がフェスのパフォーマンスをチェックすれば、2万もの観客同様、Tones And Iに魅了されるという流れが生まれています。

 Tones And I「Dance Monkey」はオーストラリアでは勿論のこと、ヨーロッパ各国でもチャートを席巻中。アメリカや日本ではビルボードソングスチャートでまだ結果を残していないものの、Spotifyデイリーチャートでは現段階でアメリカ39位、日本が82位を記録しヒットの兆し。また日本ではレコード会社のサイトにTones And Iのページが用意されお膳立ては充分。アーティスト写真はファッションや色合いから、どことなくビリー・アイリッシュを思わせます。

 日本でTones And Iが紹介される際、第2のビリー・アイリッシュ、路上パフォーマンスの歌姫などのキャッチコピーが用いられるかもしれませんが、まずはTones And Iの名を認知させていけば、気になった人が彼女の声やMVに触れた瞬間、惹き込まれることは間違いないでしょう。プロモーション来日の機会があるならば、バスキングを仕掛けてみるのも面白いかもしれません。

 さて、Tones And Iは今月25日に新たなMVを公開。デビューEPの表題曲、「The Kids Are Coming」は世界の諸問題を作り上げてきた大人への怒りを示しています。

 MV公開の数日前、国連気候行動サミットで地球温暖化防止に真摯に取り組もうとしない各国代表を厳しく非難したスウェーデンの環境活動家、16歳のグレタ・トゥンベリさんを思い浮かべた方は自分だけではないでしょう。地球温暖化や銃社会などの問題を挙げ、〈IF NOT NOW, THEN WHEN?(今じゃなければいつやるのか?)〉と問うMVは、そのタイミングも相俟って評判を呼びそうです。(Kei)

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