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逢坂良太&洲崎綾 6年ぶりの『シドニアの騎士』最後の物語「ようやくみなさんにお届けできる」

ぴあ

洲崎綾、逢坂良太 撮影:友野雄

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2021年、『シドニアの騎士』が帰ってくるーー。

2009年から2015年まで「月刊アフタヌーン」(講談社)にて連載された漫画家・弐瓶勉の代表作『シドニアの騎士』。2014年には日本を代表する3DCG制作会社のポリゴン・ピクチュアズ設立30周年記念作品としてTVアニメが制作され、大きな話題を呼んだ。2015年のTVアニメ2期放送時、原作が連載中だったことから物語中盤でTVアニメ版の幕が下りた。

そして今年、TVアニメのスタッフが再集結、総監修に原作者・弐瓶勉を迎え、シドニア最後の戦いが劇場アニメ『シドニアの騎士 あいつむぐほし』で描かれる。

本稿ではメインキャストの逢坂良太(演:谷風長道)さんと洲崎綾(演:白羽衣つむぎ)さんのインタビューをお届け。約6年間演じてきたアニメ『シドニアの騎士』最後の物語である劇場版への思いに触れる。

待ち望んだ『シドニア』の続き 物語の最後を迎えられる喜び

―― まず劇場アニメ『シドニアの騎士 あいつむぐほし』の製作決定が決まった当時の率直なお気持ちからお聞かせください。

逢坂 最初に聞いたのっていつだっけ……瀬下(寛之、総監督)さんとご飯に行ったとき?

洲崎 あー、そうかもしれない!

―― プライベートな場でお話があったんですね(笑)。

逢坂 そうなんですよ(笑)。TVアニメが終わってからもちょこちょこ瀬下さんと食事に行かせていただく機会があって、そこで進捗情報やらいろいろお話を聞いていたんですよ。それでサラっと「劇場アニメ化が決まりました」と言われた記憶があります。めちゃくちゃサラっと言うから驚くものも驚けず(笑)。

洲崎 あはは(笑)。

逢坂 後になってから実感が湧いてきましたけど、やっぱり嬉しかったですよね。「もう少しで終わりまで描けるのに…」というところでTVアニメの2期が終わったので、ようやく完結できるワクワクと久しぶりに演じるちょっとしたドキドキもありつつでした。

洲崎 TVアニメの2期が終わってすぐに原作が完結したので、私もいつ続きをやるんだろうと長い間思っていました。それがTVアニメ終了から6年経ってついに完結すると決まったことと、単純にスクリーンでまたシドニアのみんなに会えることがすごく嬉しかったです。

―― 嬉しいとのことですが、物語が完結してしまうことへの寂しさはなかったのでしょうか。

逢坂 寂しさより嬉しさの方が強かったですね。物語の最後までやれる!みなさんにお届けできる!って。

洲崎 うんうん、たしかにそうかも。公開前だからなのもありますけど、寂しいとかロスとかはまだ全然思っていなくて。それよりも観客のみなさんはどんな反応なんだろうとドキドキした気持ちがずっと続いている感じです。まだ手を離れた感じが全然しないです。

逢坂 みなさんが見るまでは終わりじゃないと思っているので、まだ終わった実感はないですね。

「10年後の設定だからこそ演じやすい部分も」(逢坂)

―― 『シドニアの騎士 あいつむぐほし』の台本を初めてご覧になられたときの感想はいかがでしたか?

洲崎 今日(自分の台本を)持ってきました!

逢坂 さすがですね!

洲崎 逢坂くん、最初に台本を見たときどうでしたか?

逢坂 いやぁ……分厚いなと(笑)。

洲崎 そうだよね!(笑)『シドニア』の現場はプレスコ(絵のない状態での収録)だからといって台本が早くいただけるわけではなくて。アフレコなら絵を見ながらセリフを追えば何となく分かるけど、ト書きを含めて小説を読み込むような形で台本を読まないと場面が分からないんですよ。

逢坂 『シドニア』はほかのアニメの台本よりもト書きが多く書き込まれているよね。セリフのところにも「ここで息を吸って」「必死に」「決意のブレス」とか心境や息遣いなどが細かく書かれているので、気持ちや芝居をつくりやすい台本にはなっていると思います。

―― そこまで細かく書かれているんですね。洲崎さんはいかがですか?

洲崎 私が台本を読んでの初めての感想は「分かりやすい!」でした。原作もTVアニメも『シドニア』の世界観ならではの独特な単語がいっぱい出てくるから、かなり読み込んでいるコアなファンでないと「どういう意味!?」と思うことが結構あります。だけど、劇場版で『シドニア』に初めて触れるお客さんもたくさんいることを想定されていたのか、初見でも取っかかりやすい凝縮された台本だと思いました。

逢坂 我々にとっても今までのプレスコの経験が生かされた台本のつくりになっているのだろうと感じます。TVアニメ1期の頃とかは録り直しがすごく多かったんですよ。追加の収録も多くて。だけど、今回の録り直しは数か所だけでほとんど録り直しがなかった。

洲崎 たしかにあんまりなかったかも。

あと台本を読んで「10年後の世界なんだ!」とビックリしました。山野栄子(CV:森なな子)の弟の山野稲汰郎(CV:内田雄馬)にも驚いたな。私、はじめはななちゃん(森なな子)が稲汰郎を演じると思っていたんだよね。そしたら雄馬くんでした。

逢坂 あー! たしかにね。

洲崎 それとつむぎはほとんど変わっていないけど、長道は凛々しくなってた!

『シドニアの騎士 あいつむぐほし』(c)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

逢坂 そう、すごく変わってた! つむぎもだけど長道以外の人間はほとんど変わっていないのに(笑)。きっと10年の月日を感じてもらうために、あそこまで変えたのだと思いますけどね。

予告PVが配信されたとき、コメントで「長道、すごく変わっている……」と戸惑っている人たちが多かったです(笑)。

―― たしかにPVで長道を見たとき、最初は別人かと思いました(笑)。

逢坂 我々も実際に歳を取っているので、演じやすい部分もありました。人生経験を少しずつ積んできて、その経験値を10年後の長道に使える。逆に昔できていたのに今はできなくなっていることもたくさんあるので、そういう意味では10年経っていて感謝の気持ちもあります。

洲崎 私は逆に10年経ったことをそんなに意識していなくて。今回、つむぎ自身ちょっとお姉さんぶるシーンもあるんですけど、結局はかわいいままじゃん!と思ってもらえることを目指して演技しました。

『シドニアの騎士 あいつむぐほし』(c)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

「長道とつむぎは心で会話している」(洲崎)

―― おふたりは完成した映像はすでにご覧になられましたか?

洲崎 私は初号試写で見ました! 逢坂くんは試写会行けた?

逢坂 僕は試写会に行けなくて、つい先日完成したデータをもらって見せてもらいました。まだ映画館の音響で見られていないので、映画館で見るのを楽しみにしています。

洲崎 私が行ったときツトム(原作者、弐瓶勉)も来ていて、上映終了後に「泣いた?」って聞いたら絶対に泣いた目をしながら「泣いてないっすよ。花粉症で……」とか言っていた(笑)。

逢坂 あはははは(笑)。

―― 『シドニアの騎士』はSFアクションやラブコメなど色々な要素が満載ですが、おふたりは『あいつむぐほし』をご覧になられてどのシーンがお気に入りでしたか?

逢坂 僕は「戦闘シーン」ですね。『シドニア』は戦闘シーンを含めて、今どういう展開になっているんだろうと感じるほどスピード感のある作品だと思っています。それは台本を読むだけでは分からないので、完成した映像を見たときは毎回「すごい!」と思わされますし、同時に演じられて良かったとも感じます。

一方で、あそこまでクオリティ高く完成されているのを見ると自分の芝居に対して「ここもうちょっとできたかも……」と思う部分もあって。

―― なるほど。プレスコだと声のお芝居で絵が決まる部分もあるからということですね。

逢坂 とはいえ、そう思うとキリがないので心に仕舞っていますけれど。逆に僕らの芝居でスタッフのみなさんに少しでも気合いが入って、あそこまでクオリティ高いシーンが完成したと思うようにしています(笑)。

そんな中で僕が今回特に気に入っているのが、最後の戦いでの岐神(海苔夫、CV:櫻井孝宏)と長道のシーン。これまで複雑だった岐神と長道の関係性を考えたら、すごく来るものがありました。

洲崎 あのシーンは海苔夫、主人公じゃん!と思いました(笑)。

逢坂 そうだね。劇場版は長道だけじゃなくて岐神と稲汰郎の3人が主人公だと思っています。

洲崎 うん。本当にどのキャラクターもすごく活躍していて見せ場がありましたからね。

―― そんな洲崎さんのお気に入りのシーンはいかがでしょう?

洲崎 私はやっぱり「長道とつむぎのシーン」がすごく好きです。居住塔の上空を長道に連れられて一緒に飛んでいるシーンがあるんですけど、普段は戦闘で宇宙を飛び回っているつむぎが等身大の女の子に戻って「怖い!」となっていて。それがすごくかわいいなと思いました。

―― 本作のキャッチコピー「身長差15メートルの恋」と書かれているように、種族の異なる者同士の恋に葛藤するつむぎの姿が印象的でした。

逢坂 長道は全く気にしていなくて、なんでそんなに気にしているの?と思っていますけどね(笑)。そもそもシドニアの中には色んな人たちが住んでいるので、大きかろうが小さかろうが種族が異なろうが関係なくて、「たまたま好きになった相手が融合個体だっただけ」と。

洲崎 お互い普通とは少し違うからこそ共感できる部分もふたりはあって。葛藤はしているけど、ちゃんと心で会話している感じはすごくしました。

逢坂 長道が成長したというのも大きいかもしれません。前の長道ならつむぎが落ち込んでいたり悩んでいたりしても「なんて声をかければいいんだろう…」という感じでしたけど、10年経って自分の気持ちをしっかり伝えられる人間に成長しているから、つむぎを常に心配して寄り添っている。そういった部分でも大人になったと感じます。

『シドニアの騎士 あいつむぐほし』(c)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

「声は同じでも異なるキャラクターに聞こえる」 互いの芝居に尊敬し合う

―― 逢坂さん、洲崎さんは2014年のTVアニメから約7年間『シドニアの騎士』で共演されていますが、この月日の中でお互いのお芝居にどのような印象をお持ちですか?

洲崎 逢坂くんのすごいところはどんな役にもすっと馴染むところだと思います。正直、逢坂くんが出演しているアニメが流れていても、逢坂くんの声だと気づけないことが多いんですよ(笑)。逢坂くんだ!とならずに、キャラクターとしてすっと声が入ってくる。それくらいお芝居がすごくナチュラルですごく自由で、稀有な人だと思っていて。キャラクターによって声が全く違うとかではないのに、違うように聞こえるって本当にすごいことだなと。とても尊敬しています。

―― 軸を持ちながらも幅の広さがあるということですね。

洲崎 一度逢坂くん本人にそれを伝えたことがあって、その時は「逆に自分の声だとすぐに分かってもらえる方が羨ましい」とか「女の子の方が声が色々変えられていいな」とか言っていましたけど。いやいやでも!って私は思っています(笑)。

―― 長道を演じられているときも、そういった側面は感じられますか?

洲崎 感じます。全く擦れていない純朴な素直な長道に逢坂くんの声がぴったりハマっていて、すごくいいなぁと思っています。

―― 逢坂さんは洲崎さんのお芝居についていかがでしょうか?

逢坂 変わらない良さがあると思っています。歳を重ねて成長していくと声の雰囲気が変わったなと感じることって結構あるのに、それをいい意味であまり感じさせない良さがあって。もちろん本人の中では変化している部分は確実にあるでしょうけど、その中で10年経ってもあまり変化のないつむぎを演じることはとても大変だと思うんです。でも、その大変さを感じさせないくらいスパっと迷わずに以前と同じように声を出してくれるので、僕としても一緒にお芝居がしやすいと感じます。

―― 洲崎さんはTVアニメ1期では星白閑、2期以降ではつむぎ、同じ要素と異なる性格を持ち合わせたキャラクターを演じられています。この二人のキャラクターのお芝居についてはどのような印象をお持ちでしょうか?

逢坂 星白とつむぎの違いって精神年齢だと思っていて。星白は精神年齢が高めで穏やかでたまに女の子らしさが出てくるようなキャラクター。一方、つむぎの精神年齢は極端に言うと小学生くらい(笑)。戦闘に関しての知識が備わっているのでそれを駆使できる強さはありますけど、そういった点を除けばまだまだ幼い天真爛漫な女の子なので。声は同じだけど精神年齢の異なる人物だと感じさせてくれるのはすごいなと思います。

『シドニアの騎士』の存在が声優としての成長へ繋がった

―― おふたりは2015年の声優アワードで新人賞を受賞されていますが、少なからず『シドニアの騎士』の出演も影響があったのかなと思います。

洲崎 たしか新人賞をもらったとき、(瀬下)監督からシャンパンもらったよね? 監督が一番喜んでいました(笑)。

逢坂 喜んでたね!(笑)

洲崎 自分が嬉しいのはもちろんですけど、受賞したことによって作品に関わっていたみなさんが喜んでくれることがすごく嬉しかったのを覚えています。

―― そんな『シドニアの騎士』はご自身のキャリアの中でどういう存在だと感じますか?

逢坂 新しい挑戦をさせてくれた作品だと思います。『シドニア』は収録の手法が少しずつ変化していたんです。最初は尺は関係ないけどコンテ絵を参考にしたプレスコの方法で進行していて、TVアニメ1期最終話近くから、お試しみたいな感じで完全プレスコに変わりました。そして、おそらくメリットがあったのか、TVアニメ2期では最初から完全なプレスコになって。

洲崎 そうだったね。

逢坂 プレスコは絵に引っ張られないお芝居ができます。演じるキャラクターが今どんな状況で何を思いセリフを言っているのか、考えて深くお芝居ができるのではないかと判断してプレスコに切り替えたのかなと個人的には思っていて。もちろんその場の勢いでの芝居もありますけどね。こうやって収録が変化していくことが僕の中ではかなり新鮮で、より考えて演じることを教えてくれた作品でした。

洲崎 私にとってはデビューして間もない頃に決まった作品だったので、思い入れがとても強いです。自分の限界とかまだ分からない時期でもあったから、TVアニメ2期の紅天蛾(ベニスズメ、CV:洲崎綾)とつむぎが戦うシーンで喉を潰したんですよ。たしか台本にも声に表せないくらいの濁点がついている叫び声が書かれていて、どう出せばいいのか分からないけど分からないなりに一生懸命やろう!と演じたら3週間くらい喉が治らなかった(笑)。

―― えぇ……!

逢坂 そんなこともあったね! 次の収録で会ったら声がガサガサになっていたの覚えてる(笑)。

洲崎 「喉大丈夫!?」と言われるくらいの声で(笑)。役者として色々学ばせてもらった、すごく成長させてもらった作品だと感じます。

プレスコは絵がないからこそ通常のアフレコ以上に尋常じゃないくらいスタッフのみなさんに「ここはこうですか?」と聞きに行って、監督とも色々対話しながら作り上げていったのをずっと覚えています。キャストのみんなともお互いの思い描いている情景が違う場合があるから、テストや本番でお互いの距離感を調整しながら演じている感覚はありました。

そうやって私たちが出したお芝居にどんな絵をつけていただけるんだろうってすごく楽しみじゃなかった?

逢坂 楽しみだった! でも逆に「これで良いのかな?」と思うことも多かったかな。

洲崎 たしかに! とはいえ、微調整するために追加で収録もしていたから、すごくすごく丁寧につくられている作品だと感じます。

―― 最後に物語の完結となる『シドニアの騎士 あいつむぐほし』への思い・意気込みをお願いいたします。

逢坂 ようやくみなさんにお届けできるのがすごく嬉しいです。そして、『シドニア』の一ファンとしても完成された映像を映画館で見られることがすごく嬉しいです。公開が終了して円盤が発売されてようやく寂しさが募るのだろうなと思いますが(笑)、今はお届けできる喜びとともに楽しみに公開を待っています。

みなさんの心の中に何かしら残る作品になっているはず。本作をご覧になられたみなさんが何を感じてくれるのか、どこを重点的に見てくれるのか、僕らが抱いた感動を少しでも感じていただきたいなと思います。

洲崎 プレスコのときから同窓会のような気持ちで私はいたのですが、数年ぶりにみんなが集結して作品を完結できたことが何よりも嬉しくて。大事に大事にスタッフ・キャストでつくり上げた劇場版を、みなさんに見ていただけるのを私もドキドキしながら迎えたいです。特に初めから応援してくださっている『シドニア』ファンの方に「見てよかった」と思ってもらえる映像に仕上がっているはず! みなさんにお会いできるのを楽しみにしています。

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撮影/友野雄、取材・文/阿部裕華