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『ONE PIECE』ゾロが船長を立てる理由とは? “鬼の副長”の武士道精神

リアルサウンド

20/8/4(火) 8:00

  麦わらの一味の面々の中で誰よりも義理堅く、つねに仁義を通す男、ロロノア・ゾロ。彼は一味に加わった最初のメンバーだが、このゾロがいてこそ麦わらの一味はある種のまとまりを得ているのではないだろうか。彼がいなければ、いまの一味は間違いなく存在しないだろう。

参考:『ONE PIECE』サンジは“頭脳派の参謀”へ 騎士道精神あふれる男の真価に迫る

 先に述べたように、ゾロは麦わらの一味に加入した最初のメンバー。無計画なルフィひとりで、まだ“海賊団”とは言えなかった船長の彼と手を組んでからというもの、ゾロが反旗を翻すようなことは一度としてない。例外として、「ウイスキーピーク編」にてルフィと一戦交えているが、あれは“自分たちを歓待してくれた町の人々を、ゾロが斬った”ということにルフィが腹を立ててのことだった。しかし真相は、町の人々がクロコダイル率いるバロックワークス社の賞金稼ぎたちであり、彼らは麦わらの一味にだまし討ちを仕掛けようと企てていたのだ。ページを捲りながらヒヤヒヤしたものだが、ここは「さすがゾロ」といったところである。彼の持つ“武士道精神”に、「油断」なんてものは言語道断なのだろう。

 冒頭に記したように、ゾロがいなければ、いまの一味は間違いなく存在しない。この「ウイスキーピーク編」もそうだが、道化のバギーと初めて対面したときもそうだし、「スリラーバーク編」で登場したバーソロミュー・くまを前にルフィの身代わりになったときもそうである。船長がいなければ、“海賊団”は成立しない。つねにゾロはルフィを信じてきた。というよりもやはり彼は、自分の中にある武士道を信じているのだろう。その姿勢は、こんなセリフから読み取ることができる。「いいかお前ら、こんなバカでも肩書きは”船長”だ。いざって時にコイツを立てられねェ様な奴は一味にゃいねェ方がいい…!! 船長が威厳を失った一味は、必ず崩壊する!!!」ーーこれは、「エニエス・ロビー編」終結後、一味を抜けていたウソップをみなが再び迎え入れようとしたときにゾロが発した言葉だ。

 自分が命懸けでついていくと決めた者(ルフィ)を立て、彼の決断が揺らいだり、甘いものであったりするときは厳しく律する。それが単なる戦闘員ではない、いまのゾロのポジションなのである。航海士、料理人、船医らと比べれば、闘いしか活躍の場が無さそうに思えるが、個性的な集団をまとめる彼の統率力はメンバー随一だろう。ゾロの言動と態度には一貫性があるからこそ、誰もがこれに頷かずにはいられないわけだ。

 そんな厳格な性格のゾロは、麦わらの一味においてサンジと並び、船長・ルフィの右腕的なポジションにある。海賊団にとって主戦力といえる二人だが、軟派なサンジと硬派なゾロの対照的なキャラ立ちが本作の魅力でもあるだろう。とはいえ、わりと重要な局面で昼寝をしていたり、極度の方向音痴を発揮したりと、ゾロはゾロでどこか抜けている。だがこれが“三枚目キャラ”のサンジとの最良のバランスでもある。それに、先に記したゾロの言葉に対して、「コイツの言う事は正しい……!!」と真っ先に賛同したのはサンジだった。ときに相容れない間柄であるような関係性を見せはするものの、ゾロの持つ“武士道精神”とサンジの持つ“騎士道精神”は、こういったところで通じ合っている。これがふとしたときに、“信頼関係”として姿を見せるのだ。

 船長が威厳を失うということは、つまり“船長の不在”を意味する。例のゾロのセリフは現代社会においても言えることだ。トップが不在の組織は、必ず崩壊する。こういった考え方を貫くゾロを見ていると、新選組の“ナンバー2”であった土方歳三を彷彿させる。彼は組織のトップである近藤勇の顔を立て、組織を維持するためならば内部での粛清も辞さない男で、“鬼の副長”と呼ばれていたのはよく知られていることだ。ゾロの場合は……まあ、「ちょっとゆるい“鬼の副長”」といったところか。抜くところは抜いて、筋を通すところは必ず通す。彼の武士道こそ、いま私たちに必要な精神なのではないだろうか。(折田侑駿)

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