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脚本・福田靖は福子と萬平の成長をどう描く? “ヒーロー”がいない『まんぷく』の温かさ

リアルサウンド

18/11/1(木) 6:00

 『まんぷく』(NHK総合)が今月始めにスタートして早くも1カ月が経とうとしている。ヒロイン・福子(安藤サクラ)のキャラクター、笑顔、生き方、振る舞い、あるいは価値観。その王道とも言うべき朝ドラヒロインの姿は、観る者に1日の元気を与えてくれる。そんな『まんぷく』の脚本を手がけているのは福田靖。『救命病棟24時』『HERO』『海猿』『ガリレオ』『CHANGE』(いずれも、フジテレビ系)、『龍馬伝』(NHK総合)、『DOCTORS~最強の名医~』『グッドパートナー 無敵の弁護士』(いずれも、テレビ朝日系)など、福田の手がけたテレビドラマの多くはヒット作として成功を収めてきた。

参考:『まんぷく』第28話では、福子(安藤サクラ)たちが暮らす家に泥棒が忍び込んで……

 福田氏の作品が全てそうというわけではないが、彼の多くのヒットドラマで描かれるのは、何かの難題や敵に立ち向かう“ヒーロー”や“ヒロイン”たちの爽快な姿である。それこそ子供が観ても、その世界観に釘付けになれる“カッコよさ”があり、福田作品の持ち味でもある。『救命病棟24時』の進藤先生も、『HERO』の久利生公平も、『CHANGE』の朝倉総理も、『龍馬伝』の坂本龍馬も、それぞれの世界で、それぞれのやり方で奮闘してきた。

 では、今回の『まんぷく』はどうだろうか。もちろん朝ドラである以上、『救命病棟24時』や『HERO』のような作品になるわけはない。むしろ『まんぷく』の中で注力して描かれているのは、ヒロインの普段の仕事の様子、市井の人々の日常、当時のつつましい食事風景、姉の咲(内田有紀)との別れ、福子と萬平(長谷川博己)の微笑ましいやり取り、あるいは福子の家族とのコミュニケーションである。確かに母親の鈴(松坂慶子)に結婚を認めてもらおうとしたり、憲兵に捕まった萬平のために奔走したりする福子の姿が描かれたものの、先に挙げたような福田作品とは明らかにカラーが異なる。萬平と出会ってから、少しずつ彼にドキドキを感じていく様子。あまりにも早すぎる咲との別れを心の底から悲しむ様子。憲兵に捕らえられた萬平に焦りを感じ、解放されてからはその喜びを2人で噛みしめる様子。作中でのひとつひとつの出来事に対する福子の純粋な感じ方が丁寧に描かれる。

 とにかくひたむきで温かみが溢れる。それは福子に限らず、萬平もまたしかりである。加地谷(片岡愛之助)に“人が良すぎる”と言われていたが、萬平は裏切った加地谷のことすら恨んでいないとか。福子によれば、加地谷がいたからこそ、もの作りに集中することができたから、むしろ感謝しているという。温和な性格なのは、第1週から伝わってきたものの、あれほどの拷問を受ける羽目になったにも関わらず加地谷のことを許すとは……。たとえ相手が誰であっても少しでもお世話になったと感じれば素直に感謝する。こういう生き方はそう簡単にできるものではない。でも、当たり前のようにそれをこなしてしまう姿に対して、観ているものはほっこりとした気持ちになってしまうのかもしれない。

 北川悦吏子、岡田惠和、中園ミホ、宮藤官九郎、遊川和彦など、民放のドラマでヒット作を生んできた脚本家が、そのテクニックを朝ドラでも存分に活かしてきた。北川悦吏子なら恋愛要素を比較的多く見せ、宮藤官九郎ならどこかコミカルに感じるシーンを多く描いた。『まんぷく』はインスタントラーメンの開発に至るまでの作品である。福田は今後、どのようなノウハウを朝ドラで発揮して成功物語を描くのだろうか?(國重駿平)

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