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スクリレックスとYOSHIKIの『フジロック』共演は一体なんだったのか? 目撃者の柴 那典が振り返る

リアルサウンド

18/8/2(木) 18:00

「なんだったんだ、あれは……!」

 ステージが終わり、周囲の人たちは、衝撃をどう整理していいかわからない様子で、口々にそう呟いていた。

 7月28日、『フジロックフェスティバル ’18』でのスクリレックスのステージに、YOSHIKIがサプライズ出演を果たした。フェス来場者だけでなくSNSやメディアにも大きな話題を巻き起こしたこのコラボを、筆者は会場前方でまじまじと観ていた。

 終わったときの率直な感慨は「とにかくすごいものを観た」というもの。圧倒的なパフォーマンスではあったのだが、それ以前に「何がなんだかわからない」というすごさがあった。この日の様子はYouTubeでも生配信され、SNSやネットニュースではYOSHIKIがスクリレックスのステージに登場することは事前に告知されていた。なので画面越しに観た人は、いろいろわかった上でこのパフォーマンスを楽しんだことだろう。

 しかし現場では、そもそもその情報を知らないだろう人もいた。そして何よりスクリレックス自身のDJパフォーマンスがすさまじいものだった。自身の曲やプロデュースで関わった楽曲を軸に、EDMやヒップホップのヒット曲の数々、さらには彼のルーツであるメタルやハードコアのナンバーまでを数十秒単位で次々とつないでいく強烈なメガミックス。カルヴィン・ハリス、XXXテンタシオン、エイサップ・ロッキー、カニエ・ウェスト、リアーナ、Daft Punkなどの曲をどんどん繰り出し、DJブースの上に立ち上がって客を煽る。さらにはSystem of a DownやPanteraの楽曲をセットに組み込みテンションを上げる。息をつく暇もまったく与えないまま、予定時間を10分残し「Bangarang」を披露したスクリレックスはステージを去る。照明も暗転したので、そこでライブが終了したものと思って去っていくオーディエンスもちらほら居た。

 その後にクリスタルピアノとドラムが搬入され、「Endless Rain」のピアノの旋律が響く。YOSHIKIの演奏に合わせて、スクリレックスがギターでメロディを奏でる。ビジョンにはカラオケのスタイルで歌詞が表示され、降り出した雨の中、大合唱が巻き起こる。スクリレックスのギタープレイはお世辞にも上手いとは言えないものだったが、堂に入ったパフォーマンスだ。

 そしてYOSHIKIは上半身裸となってドラムセットへ。最後はスクリレックスの代表曲「Scary Monsters And Nice Sprites」にYOSHIKIが怒涛のドラミングで参加し、スクリレックスのギターと共に披露。こちらはとにかく圧巻の演奏だった。そして「サンキュー、ソニー!」「サンキュー、ヨシキサン!」と微笑ましいやり取りを見せた二人が熱い抱擁を交わし共に写真を撮ってライブは終了。大歓声が巻き起こっていた。

 Instagramに誕生日を祝うツーショット写真がアップされるなどかねてから親交がある両者。どうやらこのコラボは、数ヶ月前にスクリレックスがYOSHIKIのLAのスタジオを訪れ持ちかけたことから実現したようだ。

 このコラボは、この先にどんな可能性をもたらすのだろうか?

 少なくとも言えるのは、スクリレックスが久々となる自身の新曲を用意しているということだ。スクリレックスは自身のInstagramに『フジロック』の模様を投稿している。

 同じく彼が主宰する〈OWSLA〉のレーベルメイトであるジョッシュ・パンはインスタグラムのストーリーにスクリレックスのライブの模様を公開し、今年中に新曲が公開されるはずだと明かしている。

 また、LAを拠点に活動するアジア系アメリカ人のトラックメイカー・ユルトロンもスクリレックスと会い新曲を聴かせてもらったとツイートしている。

 その言葉によると新曲は「再びゲームを変える」ような内容だと言う。

 一つの可能性は、ダブステップ/ブロステップ~EDM~ダンスホールレゲエとジャンルを横断してきたスクリレックスが、さらにここ最近のエモトラップの潮流を経由した上で再びメタル/ハードコア回帰を見せるのではないか? ということだ。

 今回の『フジロック』の来日期間中にもスクリレックスはポスト・マローンとカラオケに行って90’sミクスチャーロックの伝説的バンドSublimeの「Santeria」を歌っている。

 また、かつてボーカリストをつとめていたポストハードコアバンド・From First to Lastにソニー・ムーア名義で復帰し、新曲「Surrender」を公開している。

FROM FIRST TO LAST – Surrender (Official Audio)

 これらの動きが彼の今後の音楽活動にどう影響してくるかは不明だが、今回の『フジロック』でのYOSHIKIとのコラボが何かの布石になったとしたら、とてもおもしろいのではないかと思っている。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば」Twitter

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