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平手友梨奈、ソロ曲「ダンスの理由」の衝撃 『FNS歌謡祭』で見せた飽くなき姿勢と意思表明

リアルサウンド

20/12/10(木) 14:00

 驚いた。そして、久しぶりに歌番組を見て興奮してしまった。12月9日夜『2020 FNS歌謡祭 第2夜』(フジテレビ系)にてサプライズ披露された平手友梨奈「ダンスの理由」は、我々の想像を遥かに超えてくるものだった。

 この日はちょうど櫻坂46のデビュー日でもあった。平手の脱退後、ほどなくして欅坂46から発表された改名という決断。過去を捨て去るようにして生まれ変わった櫻坂46の1stシングル『Nobody’s fault』もきっちり決まり、再スタートは順風満帆。いよいよこれから新しい活動がはじまる! ……そんな櫻坂46のメンバーたちが“真っ白”な衣装を身に纏っているものだから、きっと“黒い羊”を経てグループを去っていった彼女は、さぞかし肩身の狭い思いをしているのではないかと、そう思っていた。

 だから、そんな雰囲気の中で披露されるのは、あるとすれば在籍中のソロ曲「夜明けの孤独」や「角を曲がる」のような繊細な曲調、あるいは平井堅とのコラボで話題になった「ノンフィクション」のような切実なバラードで、“タンポポ”のように舞い踊るパフォーマンスなのではと予想していた(だって宣材写真がそんな感じじゃん!)。だが実際は、その予想を裏切る、いや、嬉しいくらいに裏切ってくれるものだった。

 制作に一から携わったという初のオリジナル曲「ダンスの理由」。作詞は秋元康で、作曲には彼女自身の名前もクレジット。しかも欅坂46が最後に配信限定でリリースした「誰がその鐘を鳴らすのか?」と同じ辻村有記と伊藤賢も関わっている。そういう“仕掛け”もうまい。

 サウンドは激しくリズムは重厚。タンポポどころか戦車のような、いかめしい戦闘の歌だ。ダンスは圧巻の迫力で、大所帯でも目を引くその存在感はまったく衰えておらず、グループ在籍時に絶対的センターと言われてきた所以を再認識させられる。サビ前の振り返る仕草、足で全力で蹴る振り、そこから元に戻る姿勢、ターン後のバランスの取り方、体重移動、体幹の強さ、眼力、すべてに見惚れてしまう。それどころか冒頭の奥から前方へ歩いてくる姿だけでもオーラが違った。

 歌詞には、彼女がなぜ踊り続けた/続けるのかを独白していくようなフレーズが綴られている。

「心擦り減らして、傷ついたって 絶対に救いたい」

「誰かが貧乏くじ引いて 一人きり泣いているのなら 夜が明けたって I don’t give up」

「眠らないで踊るよ 気が済むまで付き合おう」

「私が踊り続ければ 世界が許すと言うのならば いつまでだって Keep going yeah」

「誰かの悲しみを癒す その一瞬のために夢のようなターン決めよう」

 歌詞を踏まえるとこの歌は、これからも人前で踊っていく、表現していく意思の表明であり、自身の活動についての力強い宣言なのだろう。その芯には、センターの重圧に苛まれた自分と同じように、孤独で苦しむ人のために踊りたいという思いがある。加えて、過去の自分に起きたことをうまく歌詞に落とし込んでいる点も見逃せない。

「何度だって踊るよ 倒れても構わない」
(過呼吸で倒れたことを連想させる)

「いつかの自分 死なせない この腕で守る」
(在籍中は右腕のケガで苦しんでいた)

 こうしたドキュメンタリー要素はもちろん、グループとの関係やメディアの映り方、そういうものもすべて引っ括めて作品の一部としてしまう。その表現に対する飽くなき姿勢に、興奮させられるのだ。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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