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安達奈緒子の3作品が高評価! “日常系”が増え始めた2019年を振り返るドラマ評論家座談会【前編】

リアルサウンド

19/12/30(月) 12:00

 2019年も、各局、各配信サービス等から多種多様なドラマが放送された。リアルサウンド映画部では、1年を振り返るために、レギュラー執筆陣より、ドラマ評論家の成馬零一氏、ライターの西森路代氏、田幸和歌子氏を迎えて、座談会を開催。前編では、今年『きのう何食べた?』『サギデカ』『G線上のあなたと私』という3本の作品を送り出した脚本家の安達奈緒子の作家性に注目。さらに、YouTubeからの影響を感じさせるテレビ東京の深夜ドラマや、『あなたの番です』のヒットとともに定着した「考察」というドラマの新たな楽しみ方から、2019年の日本のドラマシーンについて語り合った。

 なお、後日公開予定の後編では、ドラマにおける男女の描き方や、『わたし、定時で帰ります。』などのお仕事ドラマにおける価値観の衝突、そしてNHK朝ドラについて語っている。

■2019年は安達奈緒子の年

ーーまずみなさんの2019年のドラマベストから教えてください。

成馬零一(以下、成馬):僕は1位が『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)と『本気のしるし』(メ~テレ)です。3位以降が『全裸監督』(Netflix)、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)、『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』(NHK総合)。民放のドラマが1本もなくてNHK、メ~テレ、Netflix、テレ東深夜、NHK(深夜)という並びなのが自分でも驚きで。今年はテレビドラマ全体が多様になっているという印象ですね。中でも『いだてん』はドラマ史におけるひとつの到達点です。視聴率的には失敗作という扱いを受けるかもしれませんが、歴史には残る作品だと思います。

西森路代(以下、西森):私も『いだてん』を挙げたいです。そのほかの1クールの作品で、本当にぐっときた作品というと、『サギデカ』(NHK総合)ですね。今年は詐欺のことを1年考えていた感じで、5話という短い中でも一番セリフやシーンに泣かされました。10月期の『俺の話は長い』(日本テレビ系)や『G線上のあなたと私』(TBS系)もすごく見応えがありましたね。

田幸和歌子(以下、田幸):私は、今の時代にフィットした連ドラの作り方だと感じた『凪のお暇』(TBS系)です。今、なかなか1時間しっかりドラマに向き合う人がいなくなっていると思うんです。その中で『凪のお暇』は、途中でスマホをいじったり退屈させたりしないような密度とテンポ感・スピード感で進んでいった。すごいと思ったのは、第1話のラストの高橋一生さんの号泣シーン。それまで、慎二がすごいモラハラ男で視聴者がどんどん引いていったのに、ラストの号泣を見て継続視聴を決定した人はすごく多かったのではないでしょうか。今ってシリアスな展開や不快感を次回に持ち越せなくて、それが続くと視聴者が離れていってしまう。そのシリアスとコミカルの絶妙なバランスは、『まんぷく』(NHK総合)にも感じました。また、1年を通してはやっぱり安達奈緒子さんの年だなと。『きのう何食べた?』『サギデカ』『G線上のあなたと私』全部素晴らしくて、このクオリティのものを1年に3本ってすごいなと。

成馬:安達さんの作品は2011年の『大切なことはすべて君が教えてくれた』(フジテレビ系)の頃から優れた脚本家だと思っていたのですが、去年の『透明なゆりかご』(NHK総合)でやっと作家性が認知されるようになって、ご本人も書きやすくなったところがあるのではないかと思います。フジテレビの月9で『リッチマン、プアウーマン』や『失恋ショコラティエ』を書いていた時のほうが商業性と作家性がせめぎ合うスリリングな作品が多くて見応えがあったのですが、どうしても「お仕事モノ」と「恋愛ドラマ」という月9ドラマとしての側面にばかりに注目がいきがちで、安達さんの作家性はなかなか見てもらえなかった。安達さんは『コード・ブルー』も手がけたフジテレビの増本淳プロデューサーと一緒に作ることが多かったのですが(編集部注:現在はフジテレビを退職)、彼女の作風はすごく真面目で、「恋愛とは何か」「仕事とは何か」といったテーマを徹底的に考え抜いて作るため、月9で書くと異物感が強すぎたのかもしれません。

田幸:もともと原作のアレンジがお上手な方だとは思っていましたが、オリジナルの『サギデカ』もすごくよかったですね。取材もかなりされていて、膨大な資料から全5回という短い中ですっきりまとめていた。中でも加害者の心情を描いたところがリアルでした。

西森:同じく詐欺を題材にした『スカム』(MBS・TBS系)も楽しみに見ていて、こっちはシニカルな目線もあり、エンターテインメントとして完成しているところが良かったんですが、『サギデカ』は、詐欺被害者の顔が見えるところがよかったですね。そこは『詐欺の子』(NHK総合)にもつながるところがありました。

成馬:僕は『スカム』のほうが突き抜けていると思いました。『サギデカ』は取材もしていて全方位的に配慮されているのですが、NHKということもあってか、どこか忖度しているような印象を感じて。対して『スカム』は、今の40代から下の世代が持っている高齢者世代への憎悪みたいなものを身も蓋もなく描いていて、地上波で放送できるギリギリのラインを攻めていたと思います。だからある世代の憤りの象徴として機能していたんじゃないかと。

――『きのう何食べた?』は原作も人気で、ドラマ化が発表された時はかなりざわざわしていましたが、結果かなり高評価でしたね。

田幸:本当に職人芸ですよね。原作では別々のエピソードのつなげ方に驚きました。

成馬:『G線上のあなたと私』の漫画版は全4巻と短いため、ドラマ版オリジナルの要素も多いんですよね。桜井ユキが演じる眞於先生も、原作ではそんなにフィーチャーされてないんだけど、ドラマでは存在感があって、途中で也映子(波瑠)との対立が描かれていたのが面白かったです。安達さんの作家性は「対立」が描けるところにあると思っていて。人と人との価値観の衝突でドラマを作っていくという、最近では珍しいタイプの作家かもしれません。

田幸:対立もあるけど、収まるところに収まる感じもあって安心して見れるんですよね。幸恵さん(松下由樹)とお姑さんの関係も、一方的ではない描き方がよかったです。

成馬:逆の解釈になりますが、『きのう何食べた?』のゲイカップルとして登場するヨシくん(正名僕蔵)・テツさん(菅原大吉)。テツさんが「歯を食いしばって貯めた金を、田舎の両親にビタ一文渡したくない」というセリフはすごいなと思いましたね。

田幸:原作だともっとさらっと言うんですが、ドラマではウェットに描いている印象でした。

成馬:『きのう何食べた?』は15巻まであるので、原作からどこを抽出して今の物語に落としこんでいくかという取捨選択が成功の鍵だったと思うのですが、余計なことは一切しないで、ちゃんと原作の良さをドラマに落としこんでいました。何より、よしながふみさんと安達さんが作家として相性がよかったのだと思います。また、個人的には、世間から40代独身男性がどう見られてるかというのがすごくリアルに描かれていると感じましたね。西島秀俊演じるシロさんが、容姿端麗の独身弁護士という設定だから、「あの年であんなの気持ち悪い」と言われたり、部下の女の子に「彼氏いるの?」とうっかり聞いてセクハラ扱いされる。実家の両親との親子関係も含めて、40代独身男性のリアルを感じました。

■映画・ドラマで今年計6本の作品を手がけた岡田惠和

――他に今年注目した脚本家はいますか?

田幸:岡田惠和さんもドラマ・映画とたくさん脚本を書かれていましたね。中でも『少年寅次郎』(NHK総合)がとてもよかったです。原作(山田洋次『悪童 小説 寅次郎の告白』)にある父親に対する憎しみみたいなものは序盤ではだいぶ減っていると感じましたが、誰もが知っている寅さんの育った背景が見えるエピソードゼロ的な作品でした。ドラマは子役からスタートしていることもあって、最初は父親に対してあまり敵意をむき出しにしておらず、お母さんの愛に包まれてるからこそお父さんの罵詈雑言も受け流せるんですが、大人になって変わっていく。そのまま優しい世界でいくのかなと思ったら、産みのお母さんを登場させて、そのやるせない思いなどを知ったことで、父親に対して憎しみを剥き出しにするようになる。少年ではなく「男」の顔になっていく際の心情の変化の描き方が岡田さんらしいなと思いました。

成馬:岡田さんの作品は毎回面白いのですが、過去作の反復にみえてしまうのが複雑なところですね。『少年寅次郎』は『ひよっこ』(NHK総合)の延長上で作られている人情喜劇、『セミオトコ』は『南くんの恋人』(ともにテレビ朝日系)の頃からやってきたファンタジーテイストのキャラクタードラマ、『そして、生きる』(WOWOW)は『若者のすべて』(フジテレビ系)以降の山田太一の影響下にあるシリアスな群像劇で、どの作品も面白い。ただ、どうしても『ひよっこ』を思い出してしまう。それぞれの作品に『ひよっこ』関連の人が出ていて、「劇団ひよっこ」感があるのは、ファンとしては嬉しいんですけど……。

田幸:何を題材にしても“岡田ワールド”になりますよね。それがが好きな人は絶対どれも好きだと思うんですけど、入ってこれない人もいるのかもしれない。『セミオトコ』は視聴率の悪さばかりがニュースになっていて残念でしたが、岡田さんは、大きなことは起こらない日常を書くのがすごく魅力的なんですよね。そういう日常系のドラマは増えているし、テレビ局のプロデューサーや視聴者にも、そういうものを求めている人は一定数いると思います。

■“日常系”の定着と、YouTube的なドラマ

西森:「ずっと見てたい系」のドラマってありますよね。『架空OL日記』(読売テレビ・日本テレビ系)の時にこれが一生続けばいいのにと思ったんですが、『俺の話は長い』もまさにそうで。満(生田斗真)の髪にくせ毛が立っているのも、アニメの『おそ松さん』を思い出すんです。また、オジリナル脚本の会話劇で、1時間で2本というのも新しい挑戦だと思います。テレ東やNHKの深夜、もしくはよみうりテレビとNetflixがやっていたような作り方を、日テレが土曜10時の一時間枠にやるのは意外でした。

田幸:アニメでは「日常系」が一大ジャンルとして定着していますが、ドラマにも、そのアニメのテイストを感じるようになってきました。寝る前にゆるゆると見るのにちょうどいい空気感というか。『俺の話は長い』も一部ではアニオタでハマっている人もいるみたいで、若い世代がもっと見るといいのにと思いました。

西森:形としては昔のホームドラマを踏襲していますよね。ご飯を食べながら、大人数で会話を展開させていく。だからって、古き良き家族の形にこだわっているわけでもない。大家族がちゃぶ台を囲んでいたはずなのに、最終回では結局、母親とニートの息子の二人暮らし、いわば今どきの核家族に戻っていく。それが、放送中から見えているから、家族の団らんモノであっても、どこかそうではない感じがしていました。ただ、近所には住んでいるし、なにかあればまたあの形に戻ることもできるから、今後もスペシャル版などが放送されるだろうし、ずっと続いていくんでしょうね。

成馬:一方で、『あなたの番です』みたいなSNSで盛り上がったイベント的な作品もあって。今まで通りのドラマ作りが限界に近づく中で、日テレは試行錯誤していますよね。かなりバリエーションが多い。

西森:日常系というところでは、今年は『サ道』(テレビ東京系)みたいなドラマもありましたね。「サウナ=男らしい」とか、「何分サウナに入っていられるかのホモソーシャルな競争」みたいなイメージがありましたが、『サ道』はそれとも違って、マウンティングもなくて、ゆるやかに仲間と一緒にいながら、個人個人は自分の内面に入ったり、自分で自分を癒したり、自分を見つけていくということを軸にしたドラマだと感じました。

成馬:同じテレ東の『ひとりキャンプで食って寝る』もそうですよね。『孤独のグルメ』からある流れで、グルメドラマの手法を使えば、サウナもキャンプもできるというのが驚きで。あと、他人と競うのではなく、自己完結的に楽しんでいる姿を描いているのが現代的ですよね。ドラマともバラエティとも言えない世界観が不思議な形で成立している。もしかしたら、YouTubeの影響が大きいのかもしれませんね。芸人ヒロシがキャンプする姿を延々とみせる「ヒロシちゃんねる」や「inliving.」というもともと、りりかという名前で女優をされていた方が、無印良品みたいな生活を過ごす姿を延々とみせる動画が、今はすごく人気ですが、あの流れがドラマにもきてるんだと思います。

西森:だからこそ、阿佐ヶ谷姉妹のモーニングルーティンみたいな話がドラマになったら面白いですよね。テレ東が合いそうだけど、日テレも『俺の話は長い』みたいな雰囲気ならよさそう。

成馬:『きのう何食べた?』も、この素材と値段でこんな料理が作れるっていう料理モノとして純粋に楽しいですよね。野木亜紀子さんが1月からテレ東でやる『コタキ兄弟と四苦八苦』もそういう方向にいくのかもしれません。

西森 『フェイクニュース』(NHK総合)の光石研さんの時から、おじさんを主人公にしたいって野木さんも言われていましたね。おじさんが自分たちで楽しいことを見つけて暮らすというものは、どんどん作ってほしいですね。

■「批評」から「考察」へ ドラマの受け止め方の変化

田幸:『ゆるキャン△』もドラマ化されますし、やっぱりちょっとずつ漫画やアニメの流れがドラマにも来ていますよね。『あなたの番です』で発生した「考察班」というのも、漫画・アニメの世界で10年以上前からネットを中心に盛んに行われてきて、それが今年ドラマに入ってきた。

成馬:今は「考察」で「批評」とは言わないんですよね。僕らの世代では「批評」と言って、作品のテーマや作者の意図を探っていくと同時に、同時代性や自分自身がどういう影響を受けたのかを語っていくものだったけど、「考察」という言葉は、「作品の中にちりばめられた謎には、実はこういう意味があるんです」という意味づけを考えることですよね。

田幸:『20世紀少年』も連載中にネットで盛んに議論されていて、考察班がああじゃないかこうじゃないかって言っていたんだけど、いざ作品で描かれたオチにがっかりするということがありました。今のドラマには当時の盛り上がりと近いものを感じます。

成馬:作品の受け止められ方が変わったんでしょうね。昔は素人も含めて全員批評家みたいな状態だったけど、今は“批評を切り離す”行為をみんな無意識にやってる。それが「考察」という言葉に象徴されているように感じます。

西森:でも、作品によって逆なところもあって、『HiGH&LOW』は考察よりは批評を求めているように感じますけどね。アイドル周りだと「論考が深まる」って言い方をしますよね。いろんな要素が入ってきて、その対象を読み解く力が高まったっていう。

■「現実との答え合わせ」が、ドラマというジャンルを滅ぼす可能性も

成馬:そのあたりは、ジャンルによってだいぶ違うのかも。『HiGH&LOW』は今や大ヒット作品だけど、まともな作品として見てもらえなかった時期が長かったから、そういう批評もファンは嬉しいのかもしれない。一方で、『いだてん』のように実在の人物や歴史をもとにした作品だと、史実通りの物語か、その時代の衣装、小道具、喋り方として正しいか、という部分を視聴者が厳密にチェックするようになっている。それに対して作り手も、すごく細かく取材するようになって、忠実に再現するという、いたちごっこが繰り広げられている。作り手も受け手も「現実との答え合わせ」に躍起になっていて、それが面白いと思う一方で、これでいいのだろうか? とも思います。それは『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)にも感じていて。「定時で帰る」というタイトルにした時点で、「定時で帰れる会社なんかない」という人と「そんなの当たり前じゃん」という人が論争を始めた。もちろん、内容を見たらまた印象が変わるんですけど。

田幸:確かに、実際見てみたら放送が始まる前の印象と別物だったという声は多く見かけました。決して「定時で帰る」話ではなかったですからね。

成馬:作品の評価とは別に、ドラマ全体のリアリティの要求水準が上がりすぎたがゆえの「息苦しさ」を感じることが、今年は特に多かったんですよね。『だから私は推しました』(NHK総合)もかなり取材をして作っていて、アイドルの描写は完璧だったとは思うのですが、じゃあ、リアルであればいいのかというと、また別だと思うんですよね。現実に忠実かどうかだけを基準にすると、ドラマというジャンルが滅びてしまうと思うんですよね。ルール設定の息苦しさについていけない人が増えて、マニアがジャンルを殺すことになりかねない。

西森:ネットでもアーティストが批評について語ることがあると、炎上もすることもあるけど、逆にすごくその見方が面白いなと思うこともあって、私は、今一番興味があることは、批評なんですよね。

■民放ドラマ、恋愛要素の塩梅がポイントに

ーー民放のゴールデンタイム帯のドラマはどうでしたか?

成馬:そこが一番、壁にぶつかっているという印象でした。今は『いだてん』のように大規模でじっくりと作られたドラマか、『ひとりキャンプ~』みたいな、YouTubeとかTikTokのプライベート動画に近いようなものに二極化していて。これまで主流だったトレンディドラマの流れを汲んだ、仕事と恋愛を描くタイプのドラマが今は一番迷っているようにみえる。もしかしたら、あと何年かしたら成立しなくなるのかもしれない。

西森:民放のドラマは、要素が複雑になっていますよね。恋愛だけでも仕事だけでもなくて、『G線上のあなたと私』もOL、主婦、男子大学生という不思議な3人の関係性が進んでいきます。

成馬:エンドロールで必ず、也映子と理人(中川大志)がくっつくかどうかという恋愛要素を入れてきますよね。あそこだけは昔のドラマを引きずっている感じがある。

田幸:『G線上』は松下由樹さんがすごく重要なので、二人の恋話に舵を切らないでほしいと思ってるドラマファンは多かったと思うんですけど。

成馬:『G線上』の面白さってそこじゃないですよね。でも、宣伝の仕方を見ると、そこを押し出す形になっている。『凪のお暇』にしても、黒木華が高橋一生と中村倫也どっちとくっつくかは見どころではなかった。三角関係のドラマのようにみえるけど、見てる人はそれを求めていなくて。宣伝だけみると、よくあるラブコメに見えてしまったのがもったいないなと思います。

西森:TBSの恋愛モノは社会問題もいれながら恋愛も描いていて、決して恋愛だけでやろうとしていないんだなということを感じます。例えば『わたし、定時で帰ります。』もそうだし、『グッドワイフ』もそう。恋愛だけではないもので、ちょっと恋愛が出てくると、けっこうぐっとくる。『わたてい』の向井理も、『グッドワイフ』の小泉孝太郎も、その恋愛要素が少ない中での恋愛要素の塩梅がよくて、信頼のできる役柄になったことで、前よりちょっと好きになっている感じがありました。『G線上』も、恋愛要素を少ないと見るか、多いと見るかで、そこが変わってきそうですね。私は恋愛要素が少なくて、三人の友情が感じられる時にこそ、中川大志さんの良さが出ていた気がしましたね。

成馬:以前、TBSの磯山晶プロデューサーにインタビューしたのですが、火曜10時枠は、『ダメな私に恋してください』が当たった時に手応えを感じたらしくて、「もっとキュンキュンするドラマをOLさん早く帰っての体力を温存できる火曜日にやるべきだと決めた」と話していたのを覚えてます。ただ昔の月9にくらべるとTBSの火曜ドラマで放送されている作品は、もっと日常に根ざしたものになっているように見えますね。仕事も恋愛も趣味も生活の一部で一緒に楽しんでいる、みたいな感じで。

田幸:一定の層に向けてというよりは、スタンプラリー的にこっちの層もあっちの層もと、取りこぼしないように作っているのかもしれません。(取材・文=若田悠希)

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