Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

TEAM NACS 音尾琢真、前年を上回る2019年の大活躍! 『なつぞら』『ひとよ』で見せたひたむきな生き様

リアルサウンド

19/11/29(金) 6:00

 2018年、筆者は「TEAM NACS 音尾琢真、存在感急上昇! 日曜劇場や白石和彌・原田眞人作品に求められる理由」という記事を書いたが、今年の音尾琢真はそこからまた少しずつ変化を遂げていると感じる。

参考:TEAM NACS 音尾琢真、存在感急上昇! 日曜劇場や白石和彌・原田眞人作品に求められる理由

 もちろん、今年も前年に続いてTBS日曜劇場にも白石和彌監督作品にも出演。2月には日曜劇場のスタッフが制作した映画『七つの会議』で、100年続いたねじ工場を父親から継いだものの、経営難に陥った三沢逸郎を演じ、主人公の八角民夫(野村萬斎)と対峙して、日曜劇場の常連組としての存在感を放った。

 テレビドラマでは、TEAM NACS勢ぞろいでHTBが制作した『チャンネルはそのまま!』に出演したほか、『フルーツ宅配便』(テレビ東京系)には、白石作品でのキャラを彷彿させるコワモテの刑事役で最終話に登場。少ない出演ながらも、確実なインパクトを残した。

 また、NHKスーパープレミアム『八つ墓村』にも出演。村の名家・田治見家の双子、田治見要蔵/田治見久弥を一人二役で演じた。田治見家の跡取りとなる辰弥(村上虹郎)と対面する場面では、「家」への執着をまざまざと見せつけながら、死んでいく様が壮絶であった。

 しかし、後に要蔵として登場するシーンは、それをはるかに上回っていた。要蔵は、『八つ墓村』で32人を殺したことで物語の発端となる人物である。音尾もこの要蔵を演じるにあたり、赤くどこか不気味な柄の着物を羽織り、胸には弾薬の入ったベルトをたすき掛けにし、頭には包帯のようなもので左右に懐中電灯をくくりつけ(数々の『八つ墓村』で見たお馴染みのスタイルである)、刀で次々と人々を容赦なく斬りつけ、それでもまだ足りないのか鉄砲で撃つ。壮絶さの極まったシーンであった。

 夜まで続いたという殺戮の最後のシーンで、右手に刀、左手に銃を持って背中に沈む夕日(と思われる)を受けて、一心不乱に走り抜けるショットは、恐怖を通り越して神々しいほどでもあった。

 このほか、白石監督作品には今年だけで3作品にも出演。『麻雀放浪記2020』では、主人公である坊や哲(斎藤工)が出演するテレビ番組のいかがわしげなプロデューサーを、『凪待ち』では、香取慎吾演じる主人公のパートナー、亜弓(西田尚美)の元夫の中学教師を演じている。

 振り返ると、今年もほかの俳優にはできないような、凄みのある役を演じてきたというイメージもあるのだが、変化を感じさせるのは、白石監督の最新作『ひとよ』や、朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)があったからではないか。

 『ひとよ』では、いつもの白石作品のように短髪、コワモテには見えるのだが、主人公の家族の刑務所に入った母親(田中裕子)の甥で、タクシー会社の社長を演じた。今年の作品でいうならば、『七つの会議』のねじ工場の社長とも近い。決して人生が順風満帆に行っているとは言えなくとも、懸命に生きる市井の人という意味でつながる役割なのかもしれない。

 『なつぞら』で演じた戸村菊介も、そんなひたむきに生きる役のひとつだ。菊介もまた、父親・悠吉(小林隆)がやってきた酪農の仕事を継ぎ、ヒロイン・なつ(広瀬すず)、柴田家とともに暮らす役であった。

 そんな菊介が、スピンオフの『なつぞらSP 秋の大収穫祭』の「十勝男子、愛を叫ぶ!」では、結婚し、ひとり娘がいるという変化をもって作品の世界に帰ってきた。

 妻に対するちょっとした不満がある十勝の男たちが、隠れ家的な場所に集うのだが、そこは菊介が作った「家に居場所なき男の隠れ家」であった。この秘密基地に、なつの幼なじみの雪次郎(山田裕貴)を「いいところに連れてったやるから、元気出せ」と連れ出す役回りをしているのが、柴田家の長男・照男(清原翔)なのも、『HiGH&LOW』シリーズを観てきた者として、そして山田、清原が所属している鬼邪高校ファンとして面白い。元農協組合長の田辺(宇梶剛士)や、元番長の門倉(板橋駿谷)もいた。

 菊介は、そこで集まった男たちとともに、妻たちに反旗をひるがえすべく、「十勝男自慢コンテスト」を開催しようとするのだが、結局は「十勝女房自慢コンテスト」に変わり、菊介はギターで妻と娘に向けて歌を歌う。その曲がドラマのクライマックスのひとつにもなっていた。

 本作は、タイトルの通り、『なつぞら』ファンに向けての感謝の意味もあったのだろう。柴田牧場を影で支えた菊介を中心として、影でドラマを支えたキャラクターたちが、そのキャラを生かしつつ、つながりやワチャワチャを見せたという意味でも、感謝祭=大収穫祭として楽しい作品であった。

 2019年の音尾は、『八つ墓村』のような鬼気迫る役をやりながらも、ひたむきに生きる人を演じた一年だったのではないだろうか。(西森路代)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む