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田村淳が語る、海外ドラマと『ブラックリスト』の魅力 「僕のなかのヒーロー像が変わった」

リアルサウンド

20/5/30(土) 12:30

 全米での放送開始以来、高視聴率を獲得し続けているジェームズ・スペイダー主演のアクション・サスペンスドラマ『ブラックリスト』。海外ドラマ専門チャンネル「スーパー!ドラマTV」では本シリーズの7作目が現在、独占日本初放送されている。

 最重要指名手配を受ける犯罪者レイモンド・“レッド”・レディントン(ジェームズ・スペイダー)が突然、FBI本部に出頭し、厳重に拘束された。世界の犯罪者の間で“犯罪コンシェルジュ”と呼ばれるレッドは、FBIアカデミーで訓練を終えたばかりの新人女性捜査官エリザベス・キーン(メーガン・ブーン)としか話さないと言い、20年かけて集めた世界中の犯罪者の情報“ブラックリスト”を合衆国に提供すると申し出る。FBIやCIAが存在すら把握していない犯罪者のことまで知りつくし、超法規的に一定の自由を保障されるレッド。大事故を偽装して標的の命を奪う者、スパイ専門の殺し屋、遺体解体のプロ、大量殺人兵器を作る科学者など、斬新な犯罪者が次々に出現するなか、レッドは、“リスト”に載った犯罪者の逮捕に協力することもあれば、その背後で暗躍して敵を排除し、金や権力を手に入れることも。果たして、レッドの目的は人類の救世主になることなのか、それとも悪の頂点に立つためなのか。

 今回リアルサウンド映画部では、『ブラックリスト』を家族で楽しんでいるという田村淳にインタビュー。これまでハマってきた海外ドラマの話から、なかでも『ブラックリスト』の魅力について、たっぷりと語ってもらった。(編集部)

【写真】Zoomにて取材を受ける田村淳

■「パートナーと長く観続けることできるのが海外ドラマ」

――“STAY HOME”が推奨されている今、この機会に「海外ドラマに挑戦してみよう」、「でも、どれから観ていいのかわからない」といった声を多く耳にしますが、淳さんは以前から、かなり海外ドラマをご覧になっているとか? いつ頃から、海外ドラマを観るようになったのですか?

田村淳(以下、淳):僕、今はもう海外ドラマばっかり観ています。中学生の頃だったかな? レンタルビデオ屋さんに置いてあった『V(ビジター)』(※1983年から1984年に放送され、世界的に人気を博したアメリカのSFドラマ。2009年にはリメイク版新シリーズも制作された)を何気なく借りてきて観始めたら、すごく面白くて。宇宙人が出てくるやつ。それまでは海外ドラマにまったく興味がなかったんですけど、『V』を観始めたら面白くて。向こうのドラマって、長期シリーズでやるじゃないですか。

――『V』も翌年にシーズン2が制作されていますし、海外ドラマはその後シリーズ化されるものも多いですよね。

淳:僕は一度ハマったら、その作品を長く愛でたいほうなんです。当時、日本の『北の国から』(フジテレビ系)とかも大好きだったんですけど、あのドラマもその後長いこと続きましたし。そうやって、長いあいだずっと観続けることのできるドラマが自分は好きで。今の日本のドラマって、基本的に11話とか12話で終わっちゃいますよね。最近は“シーズン2”みたいな形で、続編が作られたりしていますけど、僕が中学生の頃は、そういうものはほぼ無くて。向こうのドラマは、人気が出てきたら、すぐに次のシリーズの脚本作りに取り掛かるみたいなことを聞いて……それはやっぱり規模が違うというか、面白いと思ったらとことん打ち込む姿勢が、すごいなと思ったんです。

――なるほど。「海外ドラマは長くて観るのが大変そう」という声も聞きますが、淳さんの場合は、むしろ長いからこそ良かったと。ちなみに、『V』のあとは、どんな海外ドラマをご覧になっていたんですか?

淳:いろいろ観てきたんですけど、今も続いているものだったら、『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』(※2005年にスタートした人気医療ドラマ。現在シーズン16まで制作されている)は、結構ハマりました。『グレイズ・アナトミー』は、今の奥さんと付き合い始めたときに観始めて、そのあと一回別れて、また付き合って、そのあと結婚して、子どもができて……っていうあいだも、全部一緒に観ているので、結構思い入れが強いんです(笑)。そうやってパートナーと同じドラマを長いこと観続けることできるのが、海外ドラマのいいところですね。それは『ブラックリスト』も同じで……『ブラックリスト』も結構長いじゃないですか。

――2013年にアメリカで放送が始まって、現在日本で放送しているのが“シーズン7”ですから、結構長いですよね。

淳:みんなが『セックス・アンド・ザ・シティ』(※1998年から2004年まで放送され、社会現象となった人気ドラマ。全6シーズン)にハマっているときに、僕はあんまりそっちには行かず、むしろ『デスパレートな妻たち』(※2004年から2012年まで放送された人気ドラマ。全8シーズン)のほうにハマっていたり、あとは『プリズン・ブレイク』(※2005年から2009年まで4シーズンが放送されたあと、2017年に復活した人気ドラマ)もハマったし、不思議な島に流れ着くやつ……そう、『LOST』(※2004年から2010年まで放送。全6シーズン)も面白かったし、『ゴシップガール』(※2007年から2012年まで放送。全6シーズン)や『glee/グリー』(※2009年から2015年まで放送。全6シーズン)もハマって観ていました。あと、『ダークエンジェル』(※2000年から2002年まで放送。全2シーズン)も好きでしたね。

――結構まんべんなくご覧になってますね(笑)。そうやって淳さんがハマる作品のポイントや共通点みたいなものって何かあるんですか?

淳:うーん……ジャンルや物語というよりも、まずはやっぱり、キャラクターですよね。アメリカのドラマは長いから、どのキャラクターも、みんな輝き出すみたいなところがあって。その輝いたキャラクターを主人公として、そこから派生したドラマが生まれたり……例えば、学校の先生が覚せい剤を作る話とかも、そうでしたよね。

――『ブレイキング・バッド』(※2008年から2013年まで放送。全5シーズン)ですか?

淳:そうそう。『ブレイキング・バッド』に登場したインチキ弁護士(※ボブ・オデンカークが演じる“ソウル・グッドマン”)の話が、そのあと『ベター・コール・ソウル』(※2015年に放送開始。現在シーズン5まで制作されている)として始まるのとか、すごい規模感だと思うし、そうやって登場人物をとことん味わい尽くす感じがいいんですよね。あとはやっぱり、脚本の面白さ。1話単体としても面白いんだけど、そこにちゃんと伏線が張り巡らされていて、それを徐々に回収していく感じが、すごいじゃないですか。そういう“脚本の力”をとても感じるというか、『ブラックリスト』も最初に観たときは、「すごく面白い設定だけど、この設定でどこまで持つんだろう?」と思っていたんですけど、シーズン7まで続いているし。それと、海外ドラマって、「このキャラクターは、いなくなってほしくないな」とみんなが思っているようなキャラクターが、途中でパーンといなくなったりするから。

――海外ドラマあるあるですね(笑)。

淳:でも、それがちゃんと、ドラマ全体の面白さに繋がっていて、その思い切りの良さみたいなものも、僕はとても好きなんですよね。

■「奥さんが持ってきた、『ブラックリスト』」

――ところで『ブラックリスト』は、いつ頃、どんなきっかけで観始めたんですか?

淳:どのシーズンだったかまでは覚えていないんですけど、『グレイズ・アナトミー』のあるシーズンを観終わって、「次、何観ようか?」と奥さんと話してたときに「これ、面白そうじゃない?」って持ってきたのが、『ブラックリスト』だったんです。観始めてすぐに、「これは面白いぞ」と思って。最初からいきなりのめり込めるドラマって、意外と少ないと思うんです。大体3話ぐらいまで観て、ようやくキャラクターとかが馴染んできて、「このドラマはこういう面白がり方なのね」とわかる作品が多いというか。そういう中で、『ブラックリスト』は、もう1話を観ただけで、すごいシンプルに序章が終わったなという感じがあって……。

――大まかなプロットというか、各話の構成とその面白さは、すぐに理解できますよね。

淳:そう。“犯罪コンシェルジュ”として有名なレッドが提供する情報をもとに、リズ(エリザベス・“リズ”・キーン。もうひとりの主人公でFBIのプロファイラー)をはじめとするFBIの特別チームが事件を捜査するっていう。そういう意味では1話完結っぽいんだけど、全体の伏線みたいなものは、ちゃんと走らせているんですよね。そこが観ていてハマっちゃうところだと思います。あと、個人的には、銃撃シーンとか激しいシーンの見せ方が、結構ポップなところが好きなんですよね。音楽の乗せ方とか映像の見せ方が結構ポップというか、すごい心地良くて観ていて全然疲れない。だから結構気軽に観ることができるし、あんまり観る人の性別とか年齢を気にしないところがあるんじゃないかな。

――確かに。テンポ感がすごい良いんですよね。割とサクサク話が進んでいくところがあって。

淳:もったいつけたところが全然ないというか、出し惜しみしないで、どんどん話が展開していくんですよね。そこは、すごく小気味いいなって思います。だから、どのシーズンのどのエピソードから観ても……もちろん、最初から通して観たほうが楽しめるけど、個性的な犯罪者が登場して、その事件をレッドとチームのみんながどういうふうに解決していくのかみたいな見方をすれば、どのエピソードから観ても、普通に楽しめると思うんですよね。

■「僕のなかのヒーロー像が変わった」

――ちなみに、お気に入りのキャラクターはいますか?

淳:まあ、全員ひっくるめてチームなので、ひとりに特化するみたいな見方はあんまりしてないですけど、チーム・リーダーのハロルド・クーパー(ハリー・J・レニックス演じるFBI特別チームのリーダー)は、いなくならないでほしいですよね。僕はハロルドのリーダーならではの葛藤みたいなものが好きなので。

――チームのリーダーではあるものの、ある意味、中間管理職的な立場でもあって……。

淳:なんか板挟みになっている人を見るのが、個人的に好きなのかな(笑)。そういう立場の人って、どっちつかずになると気持ち悪いですけど、ハロルドの姿勢はすごく好感が持てるというか、ちゃんと一本筋が通っているような気がするんです。そういう人が、上と下に挟まれて、どういう態度を示すのかっていうのは、すごく感情移入して観ているかもしれない(笑)。

――リズをはじめとするチームの面々は、シーズンを経るごとに、いろいろとブレブレになってきているところも……。

淳:そうですよね(笑)。ハロルドがいなくなったら、チームそのものが立ち行かないというか、彼がいなかったらドラマ自体が成立しないぐらい、実は重要な役どころだと思います。あと、正義と悪が混在する感じって『ブラックリスト』のテーマのひとつだと思うんですけど、ハロルドは、そこに自分なりの定義がちゃんとあると思うんですよね。白黒つかないところも、ちゃんとわかっているというか。でも、リズとかは、どうしても自分の感情とかで、突っ走ってしまうところがあって(笑)。やっぱり、ハロルドがいなきゃダメですよね。

――(笑)。ジェームズ・スペイダー演じるレッドについては、どうですか?

淳:レッドはもう、これまで僕が見たことのないタイプのヒーローというか、彼を見てから、僕のなかのヒーロー像が変わったぐらい、インパクトの強いキャラクターです。犯罪者は犯罪者なんだけど、どこか愛嬌があって……シーズン6ぐらいから、どんどん人間味みたいなものが出てくる。

――そうですね(笑)。

淳:「ちょっと人間味を出し過ぎなんじゃないかな?」と僕は思っていたんですけど、それはやっぱり、自らの死を覚悟したがゆえのことだったのかもしれないし……でもやっぱり怖いところは、すごい怖いんですよね。僕としては、彼の行動の全部を理解してあげたいんですけど、人の追い込み方とか、ちょっと常軌を逸したところがあったりして、やっぱり全部を理解するのは無理だなと思ったり。そうやって心が離れそうになっても、また好きになっていく感じとか、そういうところが観ていて飽きないところなのかもしれないです。

――徐々に明らかになってきたレッドの過去を鑑みるに、なかなかの修羅場を潜り抜けてきたようですし……。

淳:その修羅場というのも、ただの修羅場じゃなくて、人間性を問われるような修羅場、善悪の定義を超えた修羅場だったと思うんです。だから、観ているこっちも、だんだん善悪の定義がわからなくなってくるところがあって……犯罪者を逮捕したら、それで終わりなのかとか、正義って一体何なのかとか。

――レッド自身が、指名手配中の犯罪者ということもあるし、いわゆる“勧善懲悪”の話ではないんですよね。

淳:そう。短期的に見たら悪でも、長期的に見たらむしろ善だったとか……そういう修羅場をいくつも見てきたからこその人間性というか、そういう意味で、僕はレッドに新しいヒーロー像みたいなものを、すごく感じているんですよね。

■シーズン7は「毎回登場する“ブラックリスター”に期待」

――ちなみに、シーズン6では、そんなレッドをめぐる衝撃の事実が明らかになりましたが、現在放送中のシーズン7に、淳さんは、どんなことを期待していますか?

淳:うーん、どうなんでしょうね。僕は、まだ何かあるんじゃないかと思っているんですけどね(笑)。あの話を、そのまま信じていいものかと。まあ、シーズン7では、遂にカタリーナ・ロストヴァ(ライラ・ロビンス演じる元KGBのスパイでリズの母親。レッドとも深い因縁がある)がメインで登場してきたので、これまで張り巡らせてきた長い伏線が、どう回収されていくのかというのは、もちろん楽しみなんですけど、僕としては、毎回登場する“ブラックリスター”(レッドのブラックリストに載っている未知の犯罪者たち)にも、すごい期待しているんですよね。これまで、だいぶいろんな犯罪者が描かれてきましたけど、それを超える個性的な犯罪者がまだまだいるというか、僕には思いつかないような切り口の犯罪者が出てきたら面白いなって。

――これまで登場した“ブラックリスター”で、特に印象に残っているものってありますか?

淳:いっぱいいるんだけど、最近観たなかでいちばん印象に残っているのは、“レディ・ラック”(シーズン6のエピソード16に登場)ですね。あのパターンは、ちょっと新鮮だったし、オチも含めて何かの伏線になっているのかもしれないし……まあ、わからないですけど(笑)。以前登場した犯罪者が、ときどき再登場したりするところも、『ブラックリスト』の面白さのひとつですよね。

――では最後に、改めて『ブラックリスト』のおすすめポイントを。

淳:1シーズン20話以上あって、なおかつ今のところシーズン7まであるから、日本のドラマの感覚で言ったらすごい長いんですけど、最初に言ったように、僕からしたら、この楽しみがここまで長く続いていることが最高に嬉しいというか、この楽しみを今から観ることのできる喜び、まっさらの状態でこのドラマを観られることが正直うらやましいです。だから、あんまり気負うことなくトライしてもらって……まあ、「全部、観終われるかな?」っていう不安はきっとあると思うんですけど、さっきも言ったように『ブラックリスト』の場合は、つまみ食いみたいな感じで、気になったエピソードだけをちょこちょこ観ることもできると思うんですよね。基本的には、1話1話で完結した話なので。

――そうですね。シーズン7からいきなり観てみるのも。

淳:そうやって、この世界観にどっぷりハマってから、もっかい最初からゆっくり時間を掛けて観るのもいいと思うんです。特に今は、家にいる時間が長い人もきっと多いと思うので。なので、まずはどれでもいいから1話を観て、自分がハマるかどうか試してみてほしいですよね。まあ、きっとハマると思いますけど(笑)。

――(笑)。そう、先ほど、奥さんと一緒にご覧になっているという話がありましたけど、このドラマはわりと話しやすいタイプのドラマというか、観たあとにいろいろ話したくなるタイプのドラマではありますよね。

淳:それはありますよね。『ブラックリスト』という共通項をひとつ持つと、パートナーや友達といろいろ会話するのが楽しくなるというか。結構、ああだこうだ言える話じゃないですか。「実際、レッドとリズは、どんな関係なんだろう?」とか「このあと、こういう展開になっていくんじゃないか?」とか「あの発言には、実はこんな意味があったんじゃないか?」とか。そういうのがまた楽しいというか、人によっていろいろ感じるところも違うと思うので、それも含めてきっと楽しめると思います。

(取材・文=麦倉正樹)

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