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“答え”よりも“謎”のある作品をーー銀杏BOYZ峯田と豊田道倫が見据える「2040年の音楽」

リアルサウンド

14/3/9(日) 16:18

20140309-taidan-01-thumb.jpg豊田ならではの独特のレコーディング方法に、強い関心を示す峯田。

 銀杏BOYZのフロントマン峯田和伸と、孤高のミュージシャン豊田道倫の対談後編。前編【「街は静かだけど、心のノイズは増えている」】では、互いの作風に対する思いや、銀杏BOYZの新作がノイジーな仕上がりとなった背景について会話が展開した。後編では、豊田特有のレコーディング術から、90年代のロックシーン、さらには東日本大震災後の音楽観まで語り合った。

豊田「ミュージシャンは曲を把握していないほうが、意外と力を発揮する」

峯田:ところで豊田さんの新しいアルバム(豊田道倫 & mtvBAND『FUCKIN’ GREAT VIEW』)。あれ、マスタリングはAbbey Road(編注:イギリスのアビーロードスタジオ)ですか?

豊田:Abbey Road。1曲、1万4000円くらいでできる。ただ音源送るだけっていう。でもあんまり変わんないかな、ちょっといい感じっていう。仕上がり早いし、プリセットって噂もあるよ(笑)。あと今回のレコーディングは一発録りしたから、修正も利かないし、どうしようもない状態ではあった。で、どうしようかと思って、Abbey Roadに。だから困ったんじゃない? 「これは商品にはならない、けど商品にしなきゃならない」っていうプレッシャーで(笑)。

峯田:今の話は聞かなかったことにします。Abbey Roadでやったっていう、そこだけでいいです。1曲1万とか聞きたくない(笑)。でも一発ってことは、演奏しているじゃないですか、みなさん。あわせて歌も一緒にですか?

豊田:もちろん。もう、ブースもなんもないからね、音も全部回っちゃうから、まぁええわっていう感じ。年のせいか、もう、なるべく早く終わりたい。歌い直しもしない。そんな力ないから、みんなもう。今回、僕のメンバーも曲いっさい把握していなくて、来たときに曲を渡して、1回2回やって、もう録音。で、みんなが曲を把握する頃に「はい、もう次いきます」みたいな。あんまり把握されちゃうと、僕が負けちゃうから(笑)。

峯田:そういうレコーディングの仕方は毎回やられているんですか?

豊田:いや、今回初めて。一回それやってみたかったんだ。ボブ・ディランもどうやらやっていたらしいんだよね。全員集まって、一回バーっとやって、みんな何も把握してなくて、「この曲はなんなんだ?」って感じで弾いているのが、もうたまんなくて。

峯田:なるほどな~! やってみよう、今度。

豊田:意外とミュージシャンはそのほうが力発揮するんだよ。瞬発力っていうか。みんな間違っても良いって思ってやってるから。

峯田:曲の終わり方が一個一個かっこいいんですよ。偶然の、しょうがねぇや、ここでしか終われねぇっていう、その男気が感じられるんです。ちゃんと終わり方決めてなくて、「誰々が終わったからここで終わるんだろうな」っていう。素晴らしいと思いました。なるほど、今の話聞いて合点がいきました。そのへんはあえてこういう風にしようっていうより強いですよね。偶然性があって。もしかしたら豊田さんが曲を作ったときに思っていたグルーヴは出ないかもしれないけど、たとえば5戦して、2勝3敗しかできないかもしれないけど、その2勝はすごいです。

豊田:まぁ野球もね、べつに3割打ったらいいから。10曲中3割。隙もあるんだよ。峯田くんの銀杏BOYZのCDは、ライブミックスは置いといて、あのスタジオ盤はバンド使ってないの?

峯田:半分くらいは使ってないですね。最初カオシレーターでデモ作るんですよ。で、それをPCの技術でやろうかって、ある程度作ってもらって、俺も最終的に入って、ここもう少しこうしようっていうぐらいで。半分そんな感じですね。んで、俺の頭の中では、パソコンで作った曲とかもありつつ、次の銀杏の曲はもっと本当に肉々しいというか、バンドサウンドで一発録りで。今回で枠は作れたんで、次はあえて真ん中にブシュっとやるようなヤツを出したいと思っているんですけどね。

峯田「自分がぐっとくる曲は意外とダサかったりする。でも、しょうがねぇやって」

20140309-taidan-02-thumb.jpg90年代の地方の音楽シーンを、リアルに語る峯田。

峯田:豊田さんは、けっこう若いアーティストとか聴かれるんですか。

豊田:なんとなく偶然出会ったりはするかな、対バンとかで。聴いても週に3枚とかに抑えている。あんまりいっぱい聴いても流れちゃうからね。

峯田:僕はスマホで、お客さんが教えてくれますね。メールにYouTubeリンク貼ってくれて。今、パソコン持ってないですけど、パソコン持っているときはそれでけっこうYouTubeとか観てました。でも、関連動画がバッと出るじゃないですか。あれがある時期から「気持ちわりーな」って思っちゃって。「お前はこれ聴け」って聴かされているような感じがして。サッカーの動画とかは観ますけどね。音楽はあんまり、お客さんのメールに貼られてあるヤツ観るくらいですね。あとは試聴します、はい。レコード屋行って、試聴機で……2ヶ月に1回試聴する日があるんですよ。それでこれ買ってみようかなって思ったヤツは買います。でも、たまに音楽、聴けない日とかありませんか?

豊田:いつもあるよ。そんな聴かないよ。今、なんでも聴けるからね。逆にちゃんと聴くっていうのが難しくなったかもしれないね。買うんだけど、買わなくても意外とYouTubeに全部あるから。1枚分の音源アップされていたりとかね。東京にいるとまだ街にCD屋があるから買うけど、田舎にいくとないもんね、CD屋が。聴かない時はなんも聴かない。ラジオとかテレビ、あとは読書とか。スマホもすぐ電源なくなるから移動中も聴かない。

峯田:こないだ女の子が運転する車でドライブしたんすけど、平気でかけるわけですよ、iPodで。昔の人から今の人まで。今のバンドだとクロマニヨンズとか、あとサンボマスターとか、毛皮のマリーズとか、SAKEROCKとか、いろんなのが流れてたんです。ふたりでいる時くらい、忘れたいじゃないですか。聴きたくないじゃないですか。コード進行とか「うっわ、いいなぁ~」とか思っちゃって、「腹立つな〜」とか思って(笑)。んで、一言いったんですよ。ふたりでいるときくらい、こういうの消して、こっちの立場も考えてください、って。じゃあラジオ聴こうかって言って、ラジオ流したら流したで、変な合唱団みたいなの歌っているし、NHK聴いたら、わけわかんないおじいちゃんがボソボソ変なこと言ってるし。彼女も俺と音楽いっしょに聴きたいっていう気持ちで、悪気がないじゃないですか。セレクションもたぶんいろいろ考えて、楽しんでくれると思って流している。でも、きっついんですよね(笑)。……そう考えたら普段あんまり音楽聴いてないかもしれないな。聴こうと思わないと聴かない。ただ聴き方を工夫して聴くくらいで、集中して。たぶん一般のひとより聴いてないかもしれないですね。

ーー音楽を始めた90年代の頃は、どんな風に音楽と向き合っていましたか。

峯田:音楽始めたときは本当になにも考えてなかったですね。初めて彼女できたのがちょうどバンド始めたときだったんで、彼女と会っても言えないようなこと、ラブレターじゃないけど、そういうのを歌詞にしようって思っていたんですよ。今はまた違う感じがしますね。他のアーティストとか、アイドルとかバンドとかも含めて、こういう空気感なんだろうなぁっていうのを、ある程度頭でわかったうえで、じゃあこういう曲を書こうっていうのはありますね。でも結局、何曲か書いてみるんですけど、自分にとってしっくりくるのは、あんまし周りのこととか考えないで、自分がぐっとくる曲なんですよね、結局。それって意外とダサかったりするんです。しみったれてるっていうか。でも、しょうがねぇやって思うんですよ。自分にとってグッとくるのはこれなんだなって。だから時代性とかっていうのは最初考えますけど、残っちゃうのは生活とか、好きなひとへの本当の言葉になっちゃうんですよ、ダサいんですけど。

豊田:90年代、僕は20代で、毎週レコード屋に新譜を買いに行って、毎月いろんなバンドが大阪に来ていて、自分にとっては一番良い時代だった。上京したのは95年だね。

峯田:僕はその頃、高校生で山形にいて、あんまり情報がなかったんですけど、楽しくバンドやっていました。ロッキング・オンとかクロスビートとかはたまに買ったりしてましたけど、ハードコアっていうんですかね、うるさいロック。友達がやっていたんです。雑誌とかに載っていないロック。それがなんか、うわー怖いなとか、でもなんかソワソワするなって思って。んで、友達のバンドを観に行くようになったんですけど、お客さんも同級生とかじゃなくて、大人の人も結構いて。そこでThe マニラ帰りっていうバンドを知ったんです。ZK RecordsっていうところからCD出していて、ボアダムスと共演したっていう噂もあったりして「あー山形にもこんなバンドいるんだ」って思って。そのバンドのガンジーさんっていう人がインディーズのCD屋さんやってたんです。そこにも行くようになった。ビジュアル系のインディーズの人とかノイズの人とか、いろんなアーティスト扱ってて、そこでガンジーさんとしゃべるのが面白かったですね。

豊田:当時はショップが一番だったの。二番目が音楽ファン。三、四がなくって五が雑誌とかメディア。まずレコード屋さんに足を運んで、そこで店員の人と話したりするのが一番の情報だった。でも今、あんまりレコード屋さん行かないね。逆に今はメディアが一番かもしれないし。

峯田「計画停電のときの東京は、2040年の東京を見ている気がした」

20140309-taidan-03-thumb.jpg対談は終始、旧交を温めるような和やかな雰囲気で行われた。

峯田:俺、大阪にツアーとかで行くと、必ずレコード屋さん行くんですけど、店の隅っこでコソコソ探すの好きで。山形にもあんなレコード屋があったら良かったですねぇ。当時、仙台がそういう意味では一番近くて、週末は友達とふたりで電車で40分くらいかけて行って、そこでライブ観たりとか、DISK NOTEっていうレコード屋さんに行ってました。あとHMVがすごく大っきくて、スウェディッシュポップのコーナーとかあって……すごい思い出すなぁ。高校二年の時にはインディーズのコーナーとかもできて、ハイスタとか、フラメンコ・ア・ゴーゴーとか、あの辺がバーっとあって。ああ、日本にもすげぇのがいるなーって、一個一個試聴して買ってたなぁ……。

ーー最近はなにかインパクトのある出来事、作品はありましたか。

峯田:本格的にアルバムのレコーディングの追い込み作業だったのが、2011年の震災の頃で。計画停電で東京がある一定期間真っ暗になって、コンビニとかも光量が落ちて、「え~、すごいなこの東京」とか思って。あの光景がずっと残っているんですよね。ひっそりとしていて一見異様なんだけど、なんか歩いている人が生き生きしていて。すごい不思議なポップ感だったんです。あれは俺が高校の時に感じた渋谷のポップ感とも違う種類なんですけど、なんかあれ見たときに「ぽあだむ」っていう曲を作ってて、すごいその街の雰囲気があてになりました。奥の方に薄いノイズとか貼ってあるんだけど、なんかキラキラっとしている曲も書きたくなったんです。あれをアルバムの最後の方に入れようと思っていて。その次のアルバムとか、銀杏の新作につながるような終わり方にしたくて。

 計画停電のときの東京は、震災っていう悲劇があって不謹慎だけど、でもなんか変に高揚したんですよね。あれはなんか、2040年とか2050年くらいの東京を見ているような気がして、すごい残っています。現実でそういうのを体験できると、あてになるんです。この曲のイメージ、あのイメージをもっといっぱい曲にしたいなとか。それが俺以外の人間にも、あの夜を特別なものだと思えているひとがいて。あの高揚した感じっていうのが、音楽によってフラッシュバックできるのかなーとか。

豊田:今回の銀杏のレコード聴くひとたちはまぁ、コアファンもいれば、若い連中もいっぱいいて。連中があのサウンドを聴いてどう変わっていくのかは気になるよね。あれ? ちゃんとした歌を歌っているひとがなぜこんな音なんだろうっていう。そこに謎っていうか、ヒントみたいなものがあって。今、そういう作品ってあんまりなくてね、答えがここでしょっていうのが多い。そういう作品は買う方も安心だけど、最終的には残らないかもしれない。

峯田:9年前に出したアルバムは、高校生とか大学生が学園祭でコピーできるような演奏だったんです。でも今回はなかなかできないと思う。でも、いろいろとつまみとか弄って、全然違った解釈でいいので「やろうと思って出来なかった感じ」でやってほしいんですよね。今、音楽好きな高校生とか、周りのクラスメイトがアニソンばっか聴いてるのに、それでもバンドやろうと思っている連中に、そういうものを残したかった。「まったく違うものになっちゃった、だけど銀杏やってんですよ!」っていうコピーバンド。そういうバンドが出てくるのがすごい楽しみですね。

(取材=神谷弘一/構成=松田広宣/写真=金子山)

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